DVD「東のエデン」Vol.2★
本編の感想は割愛するとして、2巻での「アナザースト―リー短編小説」は、1巻での”レポート”とは打って変わって普通の小説。咲がなぜ義理兄に想いを寄せることになったのか、咲の映画『THE COLD BLUE』に対する思いなどが描かれている。(これは姉夫婦が登場し、咲の憂鬱の原因がほのめかされている回であることから、補完の意味からもリンクさせたものと思う)。
”非の打ちどころがなく良くできて、憧れで大好きなお姉ちゃんが連れてきた彼もまたとても素敵な男性だった”。そんな彼に惹かれていくのに時間はかからない・・というありがちなパターンの恋。デートはいつも3人で・・・なんて安易な姉たちの行動が咲の想いを増幅させていったとも言えそう。結婚を期に少し距離をあけられたかと思いきや、咲たちの両親が事故死したことで面倒見の良い姉夫婦と同居とくれば、そりゃ咲ちゃんひとりどんどん苦しくるなるわな~という感じ。また、”大人な良介さん”を見つめていては、そりゃ大杉なんぞ目に入りようもないよな~でもある。
とにかく「(良介さん、良介さん、良介さん・・)」な咲ちゃんで、この先どう「滝沢」と本気になっていくのか興味津津というところ・・・かな?
さて映像特典の目玉は(恒例の)「押井監督×神山監督対談」。30分近い時間をかけて『東のエデン』をじっくり語ってくれている満足仕様。これは必見!
まず押井監督の『東のエデン(第1話)』評は、「最初は小ぶりになるかと思ったが、よくできてるんじゃない?」というもので、及第点に神山監督も満足顔。緻密な背景については押井監督も言うことがないらしく、ストーリーについても滝沢の行方であり、ミサイルの仕掛け人という2つの謎が気になっていて、興味があると言われていた。(昨今のアニメは結末の想像がつくけれど、これはまったく想像が付かないところが面白いという感じ)。
緻密な背景について神山監督は、第1話は脚本の初稿が出来上がってからロケハンに出かけられたことから有効で精度の高い仕事に繋がったのでは、と言われていた。
テーマについて、神山監督は「空気」とボードに書かれていた。数々のインタでも「この時代の空気」云々と言いつ続けていて説明も変わっていないのだけど、私が思うに「空気」とはつまりは「とらえどころのないもの」で、押井監督も「空気とは、共有していないと伝わらないもの」と難しさを指摘されていた。「結局”わかりません”という、(オレなら)詐欺まがいな結末もあり」というくらい”ムチャ”なテーマと押井監督も言われるわけで、神山監督自身も”ムチャ”を自覚されているようだけど、「神山なら必ず決着をつけてくれるだろう」とさりげない信頼とプレッシャーを口にされているところがニクイ押井監督だ。また、ストーリー(結末)の想像がつかないのが良いと言われてた。それには神山監督も、自分自身でも分からない部分があるとのことで、どうなるのか誰にもわからない不確定さが(今は)良い方向へむいているのかもしれないと言われていた。
”滝沢”というキャラクターについて、最近にはないタイプのキャラクターで、素っ裸で登場しながら野蛮人でもなく、知的で優しい男だったりもする珍しいキャラと言わる押井監督。滝沢は何もないところから積み上げられていったキャラクター。神山監督は今回オリジナルキャラクターを創り上げることの大変さを痛感されたようだ。監督が自由にできそうなオリジナルキャラだけど、イメージは監督の中にしかないだけに制作スタッフでさえ誰も確固たるカタチをイメージ出来ないことから、出るところに出て、実際にきちんと形付くまでは(監督でさえ)信用できないものだったらしい。
オリジナル作品について、神山監督は(結果的に)”模倣からひとり歩きするための第一歩”のようなモノになったと言われていた。ずっと押井監督の後を追ってきた神山監督で、ここ数年ようやく違った路線へも動き出した神山監督。自発的にそうしたわけでもないけれど、結果的にソレもアリという心境に変わってきたという感じだろう。ちなみに、押井監督は「オリジナルをやることは、、オリジナルをやる必要がないと知るためにはとても意味があること」とバッサリ切り捨てていた。(オリジナルをやって初めて分かる事があり、それが大切って意味であり、オリジナル作品を否定しているわけではない)。
今後の『東のエデン』に期待するものを押井監督は、「色」とボードに書かれていた。「色」とは、「色彩」であり「光」と「影」のバランス。また「色恋」な
ども含まれているとのこと。恋模様については、「やけくそ」とか「破壊的」なものを期待しているようだ。押井監督に言わせると、「滝沢」は神山監督の分身だそうで、素直さが取り柄の咲のような女の子に本気で恋愛感情が持てるのか?という部分で興味があるらしい。
とにかく、「ゼロから創り上げる」といった産みの苦しみを体験した神山監督だろう。押井監督でさえどうしても上手く動かせないやばいキャラは、「転校させるか、抹殺するしかない」と言うわけで、早々なんでも都合良く行きっこないのが一般的なのだろう。
『東のエデン』では、滝沢の”軽さ”が良いと言われる押井監督で、内容的にも作品的にも頼れるキャラとほとんど太鼓判。最近のキャラは最初から最後までイメージどおりで面白くないという押井監督。「あんなのは”設定”ではなく”決定”だ」という名言には、神山監督も「なるほど!」と膝を打っていた。
「11日間でどれだけ変われるのか?」というとそれぞれ未知数でしかないけれど、『東のエデン』とはそこが見所でもある作品。神山監督も登場するすべてのキャラクターの11日間(の変化)を見て欲しいと言われ、対談は終了。
押井×神山対談(3/4を押井監督がしゃべっていた気もするけど)なだけに深い!いいものを聞かせてもらった♪
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