ダ・ヴィンチ9月号(小説版:東のエデン)
連載第5回目となる小説版『東のエデン』は、4回目の対となるアニメの5.6話から”黒羽”と”ジョニー狩り”(+大杉行方不明)の部分が纏められていた。
前回”東のエデンサイト”についてが説明されている分、”エデンの画像検索”が当たり前のように利用されているが、細かく場面転換できない小説の不利な部分が4回目5回目なのかもしれないね。
内容はほとんどアニメのとおり。滝沢の謎めいた部分が気になり始めた咲の心情でさえ、アニメでの間や表情から伺えるモノ以上の描写はないから、アニメをじっくり見たほうが情報は多いかもしれない。
小説ならでは、という部分ではやはり”黒羽”の過去が明かされたことだろうか。なぜ”ジョニー狩り”を始めたのか。事の発端は?ジョニーに愛されない理由は?
黒羽は西洋系の父と日本人の母との間に生まれたハーフとのことだ。中学の頃に父親が失踪し、母親は生活のためにろくでなしと再婚。小心者だが酒が入ると豹変して母親にDVを繰り返す養父。実父の血から早熟でグラマラスな黒羽を無理やり手篭めにすることこそなかったが(そこが小心者のゆえん)、舐めまわすような視線がずっと黒羽を苦しめ続けた。
好まざろうが強烈なセックスアピールを放つ黒羽は、養父に限らず下心に満ちた男たちの視線の的となった。しかし、高校生でモデルにスカウトされたことから自分の容姿に商品価値があることを自覚した黒羽は、逆手をとってモデル稼業に没頭する。だが、黒羽が高収入を得るようになって家庭はさらに泥沼へと沈み始めた。仕事をしない養父。金を無心する母親。
そして事は起こる。エスカレートする一方の母親への養父の暴力が引き金となり、黒羽の欲望のリミッターを外す。我を忘れて養父を包丁でメッタ刺しにし、快感で満たされる黒羽。恍惚の表情を浮かべながら死体を切り刻み、バラバラ死体はすべて鳥の餌となった。証拠が何一つ残らない鳥葬。【エレガントに死体を処理:¥200.000】とは鳥葬とのことだった。
以来、黒羽は養父に似た”生産性のない男”を間引き始める。モデル業は20代半ばで引退。代わりにモデル事務所を設立し、昼と夜とで顔を使い分ける生活が始まる。その頃ノブレス携帯が黒羽のもとに届いたのだった。
そんな黒羽を滝沢は「救う」と言った。殺し続けてきた男たちとはまるで異なる滝沢の真摯で紳士な眼差しに、別の感情を芽生えさせる黒羽。(アニメでも思ったが、黒羽の半身は「愛されたがっている」のだと思うのだけど、もし滝沢が怪我をしてなかったらどうなっていたのだろう?そこに本当に愛はないけれど)
滝沢を気に入った黒羽という図は最終回での黒羽のセリフでもしっかり感じられるし、劇場版での滝沢と黒羽の再会を期待したい。
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ところで、「ダ・ヴィンチ9月号」の特集は『銀河鉄道999』(というか、メーテル?)。『ヤマト』のように新作が公開されるワケではないが、”2009/9/9”の”999”にあやかって劇場版3作品のブルーレイ化など、密かに盛り上がっているらしい。私自身、「999」を観てメーテルに憧れた世代であることから懐かしくも嬉しい特集だった。
小説版:『東のエデン』の為だけに買っているような「ダ・ヴィンチ」なので、ほかに森博嗣氏が小説化したことからクローズアップされている萩尾望都さんの『トーマの心臓』記事だったり、”BL”ならぬ”GL”特集だったりと、何気に目に止まってしまう話題が満載で、定番情報以外にも読むページが沢山あった9月号で良かった。
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