アニメギガ(25)~俳優&声優&音響監督:千葉 繁
第25回目のゲストは俳優で声優で音響監督の千葉繁さん。17歳のとき『ドカベン』でデヴューして以来アドリブを多用した役作りで人気を博し、脇役を中心にこれまでの出演作は270本以上という大ベテランだ。例えば”千葉繁の声”と言われてピンと来なくても、『うる星やつら』の”メガネの声”と言えば誰もが「ああ」と思うのではないだろうか。
事実上、千葉さんの出世作でもある『うる星』の”メガネ”。原作では”生徒A”でしかなかった役を押井守さんと共にあそこまでキャラ立ちさせた張本人が千葉さんだ。それは”メガネ”が単なる”生徒A”だったからこそ出来たことだったと語る千葉さん。(つまりやりたい放題しても咎められ憎いキャラ)。”メガネ”と言えは、難解な長ゼリフを饒舌にしゃべり倒すキャラというイメージだが、千葉さん曰く「メガネは押井さんの代弁者」とのこと。押井さんも”メガネ”を創っていたし、どんな”メガネ”でも演じ切っていた千葉さんということで、次第にエスカレートしていったようだ。
「アドリブ」はキャラと同化して勢いからスルリと出てくるものと、千葉繁として考えたモノとの2通りがあるらしい。そして「アドリブ」とは独断で入れるものではあるけれど、入れるために入れているワケではなく、また無節操でも計算づくしでもウマくなかったりするもので、千葉さんとしてもまず「テスト」の段階で試してジャッジを仰いでいるのだという。(それでも本番で変えちゃうときもあるとかないとか)。やはり「アドリブ」はセンスであり反射なんだよね。作品の流れや方向性を変えずに面白おかしく場を盛り上げるって、理解力もなくちゃ出来ない技。多用してしかもウケる千葉さんってどんだけ頭の回転が速く、芸達者なのだろうって思う。(アドリブの多用に共演者たちは笑いをこらえるのが大変だったと、ラムちゃん役の平野文さんが証言されていた)。
”メガネ”に限ったことではないが、やたらハイテンションなキャラを演じることが多い千葉さん。平野さんの談話の中に「壁にもたれる千葉さん」が出てきたが、実際に毎回「酸欠」でクラクラしており、壁は必需品だったのだという。同じように『北斗の拳』のぶっ飛んだナレーションも人気で、でも血管がブチブチ切れるような演技は心底しんどくて、ほとんど命懸けのような仕事だったらしい。
270本もの作品に出演しながら主役は「ハイスクール!奇面組」の一堂零など極僅かしかない千葉さんだが、決してオファーがないワケではなく、実は主役は”遊べない”ところが嫌いで断っているのだそうだ。結局、シンドイと言いつつも遊べるキャラでは存分に愉しんで演技しているってことで、好きで血管をブチブチ切っていようようなものなんじゃんね。ま、好きじゃなくちゃあそこまでは出来ない仕事か
音響監督の仕事は、押井監督の『御先祖様万々歳!』が初仕事。”アニメで舞台を演出”することがコンセプトのような作品で、かなり独創的な効果音が多用されているのが特徴。「演技も演出も根底は同じ」と言われる千葉さんだけに、これまでのお話を踏まえた上で、千葉さん演出の”音”を聞くと、確かに同じでセンスが”音”にもしっかり反映されているのが分かる気がした。(雪を踏みしめる音が”細かな鈴の音”って独特に思うけど、聞けば納得できるところとかね)。
”音響監督:千葉繁”は、同時に声優(俳優)であるからこその部分がポイントなようだ。声優だから指導方法が的確であったり、分かりあえるという部分は当然あるだろうし、でも声優だから出来る幅を測られてしまうコワさもあるぞ、という感じ。(勝生真沙子さん、勝 杏里さんがインタ映像で登場。以上のような音響監督:千葉繁を語ってくれた)。
最後の質問の「演じるとは?」に対して「演じるとは生きることに等しい」と言われる千葉さん。人間は誰しも当たり前のように立場や環境によって多種多様の顔を使い分けているワケで、それが演じていることと等しいと思えば逆もまたしかり、ということらしい。演じるとは自然だということなんだろうな。
やはりベテランのお話は深く、見応え聞き応えのある番組だった。
※再放送は、2009/8/28 土曜日(金曜深夜) 午前1:20∼1:59[BShi]
次回は作曲家の大島ミチルさん。多種多様なジャンルの音楽を作曲されている大島さん。一般的になじみ深いところでは「鋼の錬金術師」であり、今年の大河ドラマ「天地人」でも音楽を担当されている(アニメじゃないけど)。露出度はそんなに高くないと思われ、私ははじめてお話を聞けるので楽しみだ。
放送日は、2009/9/20:月曜日(日曜深夜)午前0:20∼0:59[BS2](予定)
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