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2009/07/01

『PLUTO-鉄腕アトム「地上最大のロボット」より 』 8巻(完結)

Pluto8_2 いよいよアトムの復活、そして最終決戦。涙なしでは読めない最終巻。どれだけアレンジされていようと「地上最大のロボット」の結末から、決着だけは分っている物語・・・と思っていたけれど、コレまでの浦沢×長崎での独自のアレンジから、本線の白黒以外の部分では、微妙に謎が残る(あとは読者の想像にお任せのような)終わり方となっているのがやはり浦沢作品だ。
『PLUTO』という作品は、「地上最大のロボット」の物語だけれど、「決してアトムは地上”最強”のロボットではない。むしろ・・・」という、長崎氏のあとがきにそのままの作品だったと思う。(以下、ネタバレを含んでいるのでご注意を)

ゲジヒトの記憶を挿入されることで目覚めたアトム。しかし、目覚めた瞬間からアトムは「悪魔の数式」をとなえはじめ、とうとう数式を完成させてしまう。それは地球を丸ごと破壊に至らしめるだけの威力を持つ「反陽子爆弾」の作り方。
天馬博士は、どれだけ計算を繰り返しても「割り切れない」状態のために永遠に目覚めないロボットのアトムに、ゲジヒトの最期の記憶という”憎しみ”の要素を 注入することでアトムを目覚めさせた。アトムは、”憎しみ”の要素から人間のような”破壊願望”というロボットにあるまじき”折り合い”をはじき出すこととなり、「割り切れた」ことから覚醒に至ったものと思われる。「反陽子爆弾」の数式は憎悪が具現化された副産物なのだろうね。
施設を脱走するアトム。憎悪によって暴走したかに見えたアトムだったが、本来のアトムとおそらくゲジヒトの別の一面によって、憎しみの支配から自分を取り戻すアトムだ。更に一歩人間に近づいたともいえ、それは「成長」いう類のモノ のように思えた。(本来ロボットに学習はあれど成長はあり得ない事だろうし、人間に近づくことが一概に良いとは言えないモノなだけに難しい部分なのだが)。
生き返ってからのアトムはゲジヒト意志を継ぐかのように、プルートゥと戦った仲間たちのお墓をめぐり、縁のロボットたちに会いに行く。ゲジヒトの捜査記録(記憶)からすっかり事件の全容を知ってしまったアトム。地球の終わりが近いことを悟ったアトムは、プルートゥのこと、ボラー計画のこと、アブラーのこと、ゴジのこと、これから起こる事をお茶の水博士らに全て告白し、自らはプルートゥとの決着をつけに行く。
憎しみの塊であるプルー トゥには勝てなかった以前のアトム。しかし、今は”憎しみ”を得たことで互角以上のパワーを引き出せるようになった(所謂ダークサイドの力ってやつ)。プルートゥに倒された6人のロボット達の無念をも上乗せしたアトムのパワーはプルートゥを圧倒。あと一撃のところまでプルートゥを追い詰める。・・ けれど、「憎しみからは何も生まれない」というゲジヒトの想いが本来のアトムと融合して、アトムはすんでのところでプルートゥの破壊を思い留まる。
プルートゥの原型であるサハドは心から花を愛する優しい男だった。アトムとの戦いの中で眠っていたサハドの心を蘇らせたプルートゥは、留めを刺さなかったアトムの心に触れ、共に泣き崩れることになる。(戦争を繰り返しながら何故か完全に滅びることのない人間の妙、それはその時々での「思いやり」と「憎しみ」のバランスによるところなのかもしれない)。
プルートゥとの決着はついたものの、アトムにはまだやることが残っていた。ゴジ博士の作った「ボラー」の爆発を食い止めなければ地球は滅亡する。ボラーを操るモノはボラーに内臓された反陽子爆弾を爆発させることで地下マグマの大噴火を誘発させ、地上の生命体を排除しようと画策していた。
ボラーの反陽子爆弾を解体する為には生還を諦めなくてはならないアトム。(オリジナルにはない、でも戻れないと知りつつ太陽に向かったアニメの最終回を彷彿させるエピだ)。そこにプルートゥが現れてアトムを救うことになるのだが、結果的に世界中を震撼させていたプルートゥが地球を救うという、どこか物悲しい結末を迎えることになる。(このままでは分り難いが、表紙のアトムが触れているモノが何なのかが分かると、最終巻にこれほど相応しい表紙はないと思うところである)。

基本的に(アトムではなく)、ゲジヒトが主人公である『PLUTO』。これまで伏せられてきた決定的瞬間だったり、消されていた記憶がやっと明らかにされることとなった。特に感情を芽生えさせ喜びに溢れた記憶は涙なしではいられない。そのほかアブラーの正体など、これまでの謎が一気に解明されて読み応えのある最終巻となっている。
読む人が読めばメッセージが豊富で難解と言われる手塚作品を、分り易い絵と描写とストーリーでより深く掘り下げ、感情移入しやすい形に変換してくれた浦沢氏に感謝したい。そして現在、浦沢×長崎コンビは新作の『BILLY BAT』を連載中とのこと。先ごろ第1巻が発売され、オハコのミステリ系作品と聞いているが、私はまだ未読。時が来たら取り掛かりたいと思っている。

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コメント

えっっっ。出たんですか!?
ここんとこずっと超激ジョブが続いていて、常識的な時間帯に街へ出てないのでまったく知りませんでした。
おっと、今はたいむさんの記事を読まないようにしてまずは買いに…

(-_-;)…い…行けるのだろうか…
ネットで買って置いた方がまだ確実なのかしら…ううううう

投稿: よろづ屋TOM | 2009/07/02 10:42

■よろづ屋TOMさん、こんにちはsun
ええ、6月末に出てますよ~。コチラではコンビニでも置いてあったりするんですけど(^^)

買って読んで、時間が空いた時にでもいらしてくださいな。読む気があるならば、何時だって買えるハズです!

投稿: たいむ(管理人) | 2009/07/02 20:05

ネット検索でここにきました。
この解説をみて疑問点が払拭されました。
有難うございました。

投稿: 山川正人 | 2009/07/03 17:56

■山川正人さん、こんにちはsun
どのあたりに疑問を持たれていたのか気になるところですが、お役に立てたのでしたら良かったです。

投稿: たいむ(管理人) | 2009/07/03 20:14

こんばんは!!
謎が全て明らかになってスッキリ?したラストは
浦沢作品には無い読後感でした(笑)
とはいえ勧善懲悪ではないこの戦いはやはり
切なく、関わった人とロボットたちの心情を思うと
様々な思いにさせられてしまいます。
でもそんなところがやっぱとても好きです(笑)
PLUTOの隣にあったので「BILLY BAT」思わず購入しちゃいました(笑)
もう何が始まったのかさっぱり??
やっぱまたこの謎を追いかけそうで~す♪

投稿: くろねこ | 2009/07/03 21:42

■くろねこさん、こんにちはsun
浦沢作品と言っても、原作つきだからスッキリした終わり方になったのかもしれませんね。
とはいえ、もともとの作品が勧善懲悪ではないことから、浦沢テイストとすごくマッチしてオリジナル以上の作品になったんじゃないかなーって私は思います。

>「BILLY BAT」
おお、購入されましたか!
私は躊躇して保留。どこまで続くか分からないシロモロはちょっとコワイし(笑)
2-3巻発売されてひと山越えてからでもいいかなーって。
でも面白そうなんですよね。

投稿: たいむ(管理人) | 2009/07/04 19:57

いいラストでしたね~
でも・・これ発売までに間があいちゃって、どんどんストーリーや名前の記憶が失われていくようで(汗)
ちゃんとそれまでの巻読み直してからにすればよかったと後悔。
イマイチ感動が味わえず残念でした。

「BILLY BAT」買いました~なかなか面白そうですよ♪今のところミステリアスな雰囲気好みです!(どこまで持つか解りませんが・・)

投稿: hito | 2009/07/07 15:08

■hitoさん、こんにちはsun
素敵なラストは良いですよね(^^)
一応全てに決着をみるような、すっきりとしたラストでしたね。
そうそう、結構間隔が開いてしまっているので、な何冊かは読み直さないと、感動半減だったかもですね。

>「BILLY BAT」
買いましたか!
雑誌で「浦沢×長崎」特集を見て、なんかわけわからなくて凄いコトやっちゃうみたいな事が書かれていてすごく興味持ってます。
やっぱ買っちゃおうかな~。

投稿: たいむ(管理人) | 2009/07/08 08:03

たいむさん、ようやく読みました。``r(^^;)ポリポリ
圧倒的な強さになったアトム。
あまりにも一方的な戦いになってしまいましたね。

納得のいくラストにしてもらったのは救いですね。

またまた、記事を参考にさせていただきました~。
読むのを迷ってたもので・・・。

投稿: Brian | 2009/08/13 08:28

■Brianさん、こんにちはsun
圧倒的な結末は原作からしてそうですしね、それでも抒情的にとても上手く浦沢風にアレンジしたものだと拍手を送るばかりです。

またまた参考に?
嗜好の傾向が似通っているならば、多少なりと参考になりますか?ハズレって言われなくて良かったです(^^)

「犬夜叉」も完結編としてアニメがスタートしますし、確かに共通話題は少ないですよね?

投稿: たいむ(管理人) | 2009/08/13 13:59

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