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2009/04/22

「ダウト~あるカトリック学校で~」みた。

Doubt 「ダウト」というと、トランプゲームの「ダウト」を思い浮かべる。他のプレイヤーの切ったカードが”アヤシイ”もしくは”ありえない”と思ったら「ダウト」と指摘してカードをオープンさせ、正しいカードならば相手の勝ち、偽りのカードならば自分の勝ち。手持ちのカードをいち早く無くしたプレイヤーが勝利するゲーム。
子供の時分、意味も知らずの「ダウト」と言ってワイワイと遊んでいたが、「ダウト」=「疑惑」。今更ながらに納得した。

時代は、教会のあり方にも変革が求められ始めた頃。とあるカトリック学校は革新派の神父と古き体質そのままのような厳格な校長(シスター)とが危うい均衡を保ちながらもなんとか共存をしていた。しかし、神父と男子生徒の間にあるまじき行為が見え隠れしていることを知った校長は、何一つ証拠がないまま神父を追い詰めはじめる。
確証はなし。目撃者も、自白もなし。ただ神父と少年の挙動ひとつひとつから”疑惑”を募らせ、根拠なき確信へ発展させていく校長だった。
”疑惑”は”真実”として神父から”事実”を引き出そうとする校長と、証拠不十分から頑として”無実”を訴え続ける神父と校長の対決はとてつもなく激しいものとなった。これがスゴイのなんの。どちらも一歩も引かないバトルには、息を飲みつつただただ見つめるのみだ。
最初に神父に疑惑を持ったシスター・ジェイムズを、懐柔しようとしているかの神父の言動は胡散臭いことこの上ないし、母親から男子生徒の性癖(?)を聞かされてしまうと、どうしたって校長に肩入れした視点で見てしまうのだけど、校長の執念にも狂気に似た異常さを感じはじめると、シスター・ジェイムズ同様一歩さがって接したい気分になってくる。それもそのハズで最後に”種明かし”を聞かされると、やはり”妄執”にとらわれていた校長だったと納得することになる。
それにしても「本当の本当はどうなんだろ~」ってまま終わってしまうところがなんとも言えない。だからこそ全てが終わり、ふと我に返った校長の動揺は解る気がした。私もずっと”疑惑”というフィルターを通して観ていた事に気が付いたから(^^;

少し前に『マンマ・ミーア』でハチャメチャに弾けた恋多き女を見たばかりというのに、まったく同一人物とは感じさせない、ガチガチな鉄の女を見事に演じきっているメリル・ストリープにひれ伏したくなった。対するフィリップ・シーモア・ホフマンもガチンコ勝負では負けていないし、2人の間で板挟みとなったエイ ミー・アダムズの翻弄加減も絶妙だった。
話は「白か黒か」という単純なモノなのだが、名優達によってとてつもなく凄味のある、ミステリーサスペンスにも近いスリル感に満ちた作品になっていたと思う。

総評:★★★★☆++   好き度:★★★★☆   オススメ度:★★★★☆+

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コメント

フィリップ・シーモア・ホフマンとメリル・ストリープの演技バトルは凄まじかったですね。

しかし本当にフィリップ・シーモア・ホフマンって芸達者ですよね。胡散臭くて、でも優しさがあってという感じがこの神父役にぴったりだったと思いましたよ。

投稿: にゃむばなな | 2009/04/22 20:40

こんばんは。

あの校長の最後の狼狽が
この映画を締めたというか、
余韻のあるものにしたと思います。

結局、ほんとうのところは分からない。
「疑惑」そのものがテーマだったという意味でも、
とてもユニークで見ごたえありました。

投稿: えい | 2009/04/23 00:13

激しいバトル、緊迫感あって見応えたっぷりでしたね!

どっちどっち?真相は??とドキドキして見ていたので、ラストは消化不良でした~そこが残念。

投稿: hito | 2009/04/23 11:22

■にゃむばななさん、こんにちは
私はすっかりシスター目線でして、冤罪かも?とはあまり考えずに見てしまっていました。
そう、胡散臭くて優しい神父様を見事に演じたフィリップにやられた!って感じでしょうか?

それにしても2人のバトルは見ごたえありましたね。
スゴイ、作品でした!


■えいさん、こんにちは
「疑惑」そのものがテーマで、囚われてしまったことに気が付き愕然とするシスターで〆たラスト、素晴らしかったです!
それにしても、名優ぞろいだったことが最大の魅力かもしれません(^^)


■hitoさん、こんにちは
白黒つかないず、最初から最後まで「疑惑」で染めるのが狙いだったのではないかしら?
私としては、やっぱり真っ黒神父さんで、シスターには「そんなに悩まないで!」って言いたい気分でしたが(笑)

投稿: たいむ(管理人) | 2009/04/23 19:00

そうなんですよね~。
最後の最後に校長が気付いた疑惑というものの
闇の深さ、見ているこちらまで
うっ!でしたよね~。

投稿: miyu | 2009/04/23 19:05

たいむさん、こんばんは^^
私のところへのコメント読んで、あれっ?
たいむさんはダメだったのかなあなんて
思ったのですが、★が多くてホッとしました(笑)

ダウト、疑惑のタイトル通り、私たちも
ずっとダウト状態でした(いえ、今でもですが)よね(^_^;)
すっきりしたラストではなかったのですが、
私は結構好きな作品でした♪

メリルには私も、ひれ伏したくなりました(笑)
メリルとホフマンのバトルは下手なスリラーものより
怖かったです(T^T)私はエイミーアダムス状態でした(笑)

白か黒かという単純なものをグレイにみせる?
感じさせる?ところが面白い作品でした^^

投稿: ひろちゃん | 2009/04/23 21:57

■miyuさん、こんにちは
>うっ!でしたよね~。
そーなんですよ(^^;
「あちゃ~」ってなりましたよ、私は。
真偽の判断は難しいものですねー。


■ひろちゃん、こんにちは
作品に対しては素晴らしいなーと思うのだけどそれとは切り離した感想として、すっかり入り込んでみていた私は完全に「疑惑に取り込まれたヒト」でした、って感じです。

>メリルとホフマンのバトルは下手なスリラーものより怖かったです
そうそう!容赦ない戦いって見ている方が恐くなりますよね。言葉の一つ一つに棘があって、見えない刃物が行き交っている感じでしたよー。
さすがに見応えありました!

投稿: たいむ(管理人) | 2009/04/24 23:27

やはりトシのせいなのか、この頃は
予告を観ただけであれこれと幾つかのストーリーを作ってしまって、
実際に観る段階での新鮮さが無くなってしまって、を繰り返してます
なので、もう二人の演技だけを見に行った感じでした(笑)
メリルも真相を知らないまま演じたようで、
監督の狙い通り、なんでしょうね。

投稿: kira | 2009/04/25 00:24

■kiraさん、こんにちは
私は、最近は予告編をポワンと見ることにしていますよー。
でも、この映画はめったに行かない劇場なので、一度も予告編を見たことがなくて、凄く新鮮でした。
それにしても2人の白熱戦は凄かった。

>メリルも真相を知らないまま演じたようで、
おお、そうだったんですか!それがあの泣き崩れにつながるのかもしれませんね。

投稿: たいむ(管理人) | 2009/04/25 20:31

こんにちは♪
こちらでは観たい新作が上映されなくて悲しー(泣)
メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンのバトルは迫力がありました。
すっきりした終わり方じゃなかったですけど見応えのある作品でしたね。

投稿: yukarin | 2009/10/01 13:00

■yukarinさん、こんにちは
私のトコも9月後半はイマイチぱっとしていなくってね。他にやることもあったりで足が劇場からとおのいてます。

威厳というか、迫力というか、さすがって映画でしたよね。タイトルからして後味は期待してませんでしたが、見ごたえがありました!
10月は結構なラインナップ。中旬から忙しくなりそうです!

投稿: たいむ(管理人) | 2009/10/02 12:23

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