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2009/03/16

「プリンセス・トヨトミ」 万城目 学(著)

Princesstoyotomi 『鴨川ホルモー』&『ホルモー六景』の京都、『鹿男あをによし』の奈良に続き、遂に”マキメ・関西シリーズ”に大阪が登場!
毎度まいど「まさか!」と俄かには信じ難い”真実”がリアル社会と平行して存在しているファンタジーが繰り広げられるマキメワールド。今回はタイトルを見れば一目瞭然で「トヨトミ=豊臣」。そこに”プリンセス”の冠がつけば、それが何を意味するのか想像がつくというもの。登場人物の名前という名前には、最初から意味を察知してニンマリするところだが、思わぬ伏線が最後に効いてくるところはやはりマキメワールド。尻上がりに面白くなる小説だった。

【五月末日の木曜日、午後四時のことである。大阪が全停止した。(中略) 長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった。…】
・・で始まるこの小説。これには一体何事が起ったのか興味がそそられる人も多いと思う。しかし、話は直ぐに事の発端となる10日前にさかのぼり、全停止に至るまでの”経緯”がこの小説の大半を占めることになる。

この小説の全容を「あらすじ」として書くのは難しい。”経緯”にあたる10日間にしてもほとんど他愛のない日常の出来事しか描かれておらず、正直言ってつまらない。くどくどとした状況説明ばかりで核心に近づくとブツ切りにされ、別パートに切り替わってまた振り出しに戻るの繰り返し。一風変わった内容とはいえ、どうでも良さそうな日常的な話は「だからなんなの?」と、好奇心がかられる冒頭文とのつながりや話の意図がまったく汲み取れないから惰性で読むしかなく、かったるさすら感じた。しかしながらこの経緯のすべてが伏線のようなもので、こうした前置きなしに「全停止」を説明することができないということが真相を知って初めてわかる構造になっているから、すっ飛ばすことはできないしすっ飛ばしてはいけない。
ここまではなんだか辛めの感想になっているけれど、後半に入って、いざ事態が動き出したらノンストップに面白くなるのでご心配なく。でもそれを書いたら完全にネタばれになってしまうので「豊臣家の末裔を延々守り続けてきた大阪の男たちの真相と真実が暴かれる物語」とだけ言っておくことにする。

受け継がれてきたものを信じ、大の大人が大真面目に”アンダーワールド”と後継者の存続のために立ち回り、リアル社会を揺るがしかねない深刻な事態への発展を回避すべく、真剣に戦う物語。奇想天外で荒唐無稽とも思われる話でも、信じる者にはどこまでも真実だという男のロマンと、それを見事に放任している女の懐の大きさをしみじみと感じる壮大なプロジェクトが受け継がれてきた大阪という町。親子の絆、家族の絆、父と息子・母と娘、それぞれに心温まるラストが待っており、確かに「前代未聞、驚天動地のエンターテインメント」と言われるだけのことはある、と評価できる作品と思う。

登場人物は、今回もなかなか個性的でクセモノ揃い。特別お気に入りのキャラクターは居ないが、会計監査院3人組のリーダー松平が、「役人が税金の無駄使いに如何に無自覚であるかを説明するにあたって、それは身銭を切っていない分痛みをともなったことがないからだ」と指摘する文言のところには大きく頷き、松平には拍手を送った。(それでもお気に入りにならないのは理由があるのだけど)

とにかく我慢の前半を乗り切れば、後半は胸をアツクさせられること間違いなし。個人的には「ホルモー」や「鹿男」が好きだか、これはこれで面白いと感想を述べたいと思う。

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コメント

こんにちは。

わたしは、青森のトニーと申します。

流れ流れてやってまいりました。

先日、NHKBSの「週刊ブックレビュー」に
万城目氏が出演されているのを見ましてぇ、

お♪ そぉいえば、この作家、読んでみたいと思っていたんだ♪

…と思い付き、

昨日、万城目さんの本を探しまわりました。

図書館にはなく、

本屋さんで、文庫をさがしたのですが、見つからず、

上記の本は、あったのですが、

値段を見て、買いきれず、帰ってまいりました。

レビューを読ませていただき…

…いまだ、買おうか、迷っておりまする~☆

突然、失礼いたしました。

投稿: トニー | 2009/03/24 18:12

■トニーさん、こんにちはsun
はじめまして。お立ち寄りありがとうございます。

ああ「週刊ブックレビュー」に万城目氏が出演されていましたか?残念!見損ねてしましました。

マキメ作品、図書館にありませんでしたか?人気ですから、全て貸出なのかもしれませんね。
とはいえ、本屋にも無し?文庫なら「鴨川ホルモー」が2月に発売されたばかりなのですが・・・。これも人気で売れ切れなのかしら?

なにやら、購入を迷われているとのことですが、私の中途半端な感想で先入観念を持ってしまったとしたらごめんなさいね。
今更ではありますが、マキメ作品は文句なしにお勧めできる作品ばかりです。ただし、こうしたものは嗜好の問題ですので、私の場合は、「鹿男=ホルモー>プリンセス」という好みだったというだけのことと思っていただけたら何よりです。

とはいえ、単行本は確かにいいお値段なので、もしお試しであれば文庫の「鴨川ホルモー」がやはり手頃かもしれません。映画化され、公開間近ですから、探せば必ずどこかの本屋には並んでいるとおもいますよ。(ちなみに角川文庫です)

投稿: たいむ(管理人) | 2009/03/24 22:01

ありがとうございます!!

早速、「鴨川ホルモー」、探して、読んでみたいと思いまする。

万城目さん、以前、ドラマで「鹿男」を見て、

おもしろい世界をつくる人だなぁ…

…と思ったのが、興味をひかれたきっかけでした。

「鹿男」もさがしてみたいと思いますっ!!

まずは、図書館で。。。

教えてくれてぇ、ありがとうなのだ☆

投稿: トニー | 2009/03/25 19:24

■トニーさん、こんにちはsun
手近なところで見つかると良いですね(^^)

>ドラマで「鹿男」
御覧になっていましたか!私も好きでした(^^)
でもですね、原作のほうがもっと面白かったんですよ。(これも好みの問題かもしれませんが)
大筋は同じですが、藤原先生は男性ですからラストも少し違ってます。こちらは違いを楽しまれるのも良いかもしれませんね。
剣道のシーンなどは、TVでのイメージが浮かんで臨場感を持ちながら読めそうな気がしますし。

ご健闘をお祈りします!

投稿: たいむ(管理人) | 2009/03/25 21:06

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» プリンセス・トヨトミ【万城目学】 [本・月のうさぎ堂]
京都を舞台にした”鴨川ホルモー”では、「鬼」、奈良を舞台にした”鹿男あをによし”では「鹿」そして大阪を舞台にした”プリンセス・トヨトミ”では、やっぱりこれでしょう。 [続きを読む]

受信: 2009/04/01 00:39

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