« 「イエスマン ”YES”は人生のパスワード」みた。 | トップページ | 「ウォッチメン」みた。 »

2009/03/26

『八雲立つ』 樹なつみ(作)

Yakumo 『花咲ける青少年』、『OZ』に続き、”いまさら樹作品"の第3弾!『八雲立つ』。またしても長編シリーズだが、世界を股にかけたロードムービー、そして架空の独自設定を駆使したSFファンタジーの次は、日本の古代歴史と文化・風土風習を色濃く反映させた壮大な物語だった。
3作品の中では一番気に入ったかな?たぶん”古代日本”を扱った作品は、私がほとんど熱中することがなかった分野で、良く知らないからだと思う。一応、大好きだった氷室冴子作品の影響から「古事記」はひとおおり読んだけれど、辛うじて流れを知っている程度で、神様の名前すらあやしい。また「日本書紀」に至っては読んですらいない。なにせ古き日本が題材となった漫画で好きだったのは、山岸涼子先生の『日出処の天子』や大和和紀先生の『あさきゆめみし』くらいなものだからなー(^^;
とにかく樹作品を読む上で、「似た作品を知らないに越したことがない。」が、これまでの教訓となってしまっていることから、やっと当たりかなーという感じ。

***千年以上の長き歳月に膨れ上がり、抑え切れなくなった禍々しい”念”の集合体を一旦解放し、神聖なる”気”と”神剣”で斬って昇華させ、人知れず世界を守るために力を尽くす青少年たち***
戦時中のゴタゴタに盗まれて散り散りになった7つの”神剣”を探し集める、といった大筋はどこか『ドラゴンボール』で、古代出雲族の末裔(正の巫覡)という”ジェダイ”や”気”という”フォース”、”念”の”場”という”ダークサイド”や”負の巫覡”という”シス”的な存在、そして”ベイダー卿”(実父)のことで主人公の少年が苦悩するところ等かなり『スターウォーズ』ちっくなのだが、それらを良くあるストーリーとして(あるか?)大目に見れば、”神剣”其々に纏わるオリジナルエピソードや関わる人間模様が実に良く出来ていると思い、中途半端な歴史の知識しか持たない私だから、史述を上手くアレンジして膨らませたストーリー展開には「なるほど」と感心し、「似て非なるもの」と位置づけることは出来た。・・ただし、16歳で小生意気で頭脳明晰・容姿端麗な闇己と、21歳で心優しく正義感に溢れて素朴ないい人タイプでしかもメガネっ子な七地のコンビは、『エイリアン通り』のシャール&ジェラールにそっくりで、無免許運転のエピソードだったり、いつも不遜な態度なのに時折本来の年の差を感じさせる”七地>闇己”な場面には、(私自身斜めに見ているなーと思うけれど)「またパクリ?」と感じてしまうのはどうしようもないようだ。それでも、巻が進めばちゃんと闇己&七地のオリジナル性が見られるようになるので、最終的には全く「パクリ感」は消えうせ、カナリ好感度がアップしている事は言っておかなければならない。

話を無駄に長くしてしまう”モテモテ闇己君”や”惚れっぽい七地”も玉の瑕。寧子やしをりはともかく、夕香や安柘、その他大勢のクラスメイトなどは煩いばかりで、それがなければどんなにキレの良い作品になったものかと思うが、少女漫画の性質上全く抜きには出来ないモノで、「少年誌だったらなぁー」と悔やまれる。また、眞前が登場してからは同じことの繰り返しになるのがもどかしく、話も妙な方向へとずれるばかり。それはそれで次が気になるドキドキな展開なので、どんどんと読み進めてしまうのだけど、ふと「神剣さがしはどうなった?」と思うくらい足踏みが続いていることを思い出す。でもそれ自体が佳境に差し掛かっていたからでーとなれば、納得もできるというものだが。
ただし、終盤はバタバタ感が強く、盛り上げるだけ盛り上げておきながら、意外なまでに結末はあっさりとしたものになり、蒿はじめ、闇己の脇を固める筈の巫覡たちは、登場時こそ派手だったのに以降はほとんど何も活躍もさせてもらえず、最後まで雑魚扱いで時間稼ぎにもならないのが可哀想過ぎ。しかも闇己のパワーアップで、結局は居ても居なくても・・な言われようはあんまりだ。その上、あのオチ!(^^; この漫画は「闇己君の、闇己君による、闇己君と七地の為の物語」だったようで、それだけに闇己君は(最初から最後まで)めっちゃカッコイイのだけど、「蒿君、不憫だなー」って思っちゃう。極め付けがあのラストのオチで、予想どおりな復活は嬉しく思うけど、アレでは「これからの親子関係はどうなるの?」って複雑な気分になっちゃうのは私だけじゃないよね?coldsweats01
・・ということで、最後の最後までもう少し丁寧に、伏線もスッキリ回収してくれたら良かったのになぁーと思うところはあるけれど、怒涛の勢いで読んでしまうほどに面白く、引き付けてくれる『八雲立つ』。本編と密接な関連がある別の物語な『古代編』も含めて、文庫本では全10巻。読み応えもたっぷりだった。

さて、いよいよ4月5日(23:01~)からアニメ『花咲ける青少年』がスタートする。予告編を見た限りでは、イメージが損なわれることなく、なかなか良い仕上りだと思う。日曜夜とは微妙な時間帯だが、夜ならば逆に在宅の確率も高い。楽しみだ!

|

« 「イエスマン ”YES”は人生のパスワード」みた。 | トップページ | 「ウォッチメン」みた。 »

コメント

確かに活躍したのが闇己君だけ。
他の人は何なのよという感じですね~
生まれ変わらせるんだったら、前世の記憶は消して
やれよと言うのが正直な意見です。
あれじゃあ親子関係なんて・・・
互いに不幸すぎだ。
天才で通じると言う意見もありますが、中学卒業
まではね(苦笑)。

投稿: カモミール | 2009/03/28 15:31

■カモミールさん、こんにちはsun
転生するのはともかく、あの仕方はイヤ過ぎですよね(^^;
そこまでするのならば、強引でも闇己の中にずっと潜んでいたマナシを覚醒させるとかこじつけて、全てを引き受けさせて昇華させ、闇己は奇跡的に無事だった・・・なほうがマシだと思いませんか?

投稿: たいむ(管理人) | 2009/03/28 20:51

はじめまして
こんにちはhappy02

思いついて、八雲立つでぐぐって流れ着きました。
私は中学生の頃、5巻ぐらいからかな?ずっと単行本を読んでいた口なのですが、あのラストにはがっかりさせられました。結局神剣もシャーマンも集まらなくてよかったんだ・・・ ユウカちゃんたちはいったい何を修行していたんだろう・・・等等
最終巻を読み終えてから、数日ぐらいがっかりしていた記憶があります。
本当に、伏線をいっぱい張るのはいいのですが、責任を持って張ってほしいわ
とはいえ、少女マンガの中では異彩を放つ樹なつみさんの作品は全般的に好きですよ!(誰に対してフォローしてるんだろう)
好きだけど、転生だけは許せんかも

投稿: りんりん | 2009/04/29 00:23

■りんりんさん、こんにちはsun
はじめまして。コメントありがとうございます。

連載中にワクワクしながら結末を待ち望んでいた、という感じですね(^^)
私はもう少し前の世代なので、「八雲・・」の連載中は漫画から遠ざかっていた時期で、「花咲ける・・」のアニメ化を切っ掛けにこの度初めて読みました。

「花咲ける・・」も「OZ」も、この「八雲・・」も、壮大なスケールと世界観はとても面白く、良く出来ていると思うし、何より絵の美しさを評価しますが、ストーリー的にどこかツメが甘いのが残念なところです。
私もこの作品では、「結局神剣もシャーマンもいらないジャン!」という着地点や、あのどうしようもないオチには脱力しましたよ。貼りめぐらせた伏線を回収するどころか放棄に近い印象を持ってしまいましたから。
「転生」はしても良いけど、いくらなんでもアレはヒドイ。戻ってくるのなら闇己本人がそのままの姿で戻ってこないとねぇ(^^;・・(「OZ」でやっちゃってるから止めたのかもしれないけど)
だけど、せめて子どもは転生させるためのキー的な役割で留めて欲しかった、というのが個人的な感想です。

私としては、やはり樹作品とは相性が良くない、かな?と思ってます。感情的なものなので”マンガ”としての総合評価というよりは、単なる好みの問題と思うのでフォローはなしです(笑)

アニメ「花咲ける青少年」はオリジナル設定を加えつつ、順調な滑り出しのようですね。次回はルマティが登場するようで楽しみにしています(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2009/04/29 10:50

こんにちは

先日、動画サイトをさまよっていたら八雲のOVAを見つけて、内容は1巻をまとめた感じなのですが、完成度が高く、改めて関心しました。
もともと、何かでこのOVAをみて興味を持ち、単行本を読んだのです。
あの最初の頃の完成度を最後までキープしてくださったらどんなに・・・と思ってしまいます。

樹作品は、相性が良くないと思われる気持ち、なんかわかっちゃいます。樹好きなわりにw
私は比較的、絵とかファンタジーって言うだけで読んでいますから。最近は、漫画コーナーの平積みの絵を見ただけで赤面をしてしまう物が多いのですが、樹さんのはあまり出てきませんからね。そこも好きな理由かも。
つまりは中身ではないところに惹かれている私=中身は案外(とくにオチに関しては)相性悪い?

最近は、なかなか読み物をする時間がないのですが、また面白い作品があったら紹介してください。

投稿: りんりん | 2009/05/12 21:40

■りんりんさん、こんにちはsun
再訪ありがとうございます。
OVAは時間的な制限がTVシリーズアニメとは異なって、だいぶ余裕がありますしね。そもそも作品の力で買って貰わないとダメだから、良くて当たり前かもしれません。もしそれでクオリティが保てないとしたら大ハズレもイイトコですし(^^;

>相性が良くないと思われる気持ち、なんかわかっちゃいます
分ってくださいます??(笑)
実は誰もがツメの甘さを感じていながら、樹画とキャラクターの魅力に免じて許してしまうところがあるようで、なんだか皆さん私の発言を理解してくれるので嬉しくなります(^^)

樹作品はストイックさが魅力の一つですよね(^^)そして丁寧な作画はやはり素晴らしいと私も思います。
最近は崩した絵を描く人が多く、下手なのかワザとなのか判断に悩む漫画家さんも多いように思いますし。

>また面白い作品があったら
基本的にマンガ雑誌は読まないので、それこそアニメの原作とかで読み始めるパターンが多いのですが、さすがアニメ化されるだけの事はある、というものが多いのも事実です。
時々マンガの話題もアップしますので、琴線に触れることがあったらいつでもツッコミを入れて行ってくださいませ(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2009/05/12 23:28

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106009/44183883

この記事へのトラックバック一覧です: 『八雲立つ』 樹なつみ(作):

« 「イエスマン ”YES”は人生のパスワード」みた。 | トップページ | 「ウォッチメン」みた。 »