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2009/03/03

『夢見る黄金地球儀』 (著)海堂 尊

Tikyuugi 海堂尊:”桜宮サーガ”の一つではあるけれど、スピンオフではなく医療や関係機関ともまったく無関係な物語。海堂作品は出版サイクルが異様に早いので、出費を押さえる為にも「文庫待ち」と決めていたが、思わぬ共同出資者を得た(というかそそのかした?)ことでシェアが可能となり、文庫化前でも読めることとなった。(よって既刊分を網羅する日もそう遠くないかも?)
先に読んだ共同出資者によると、ぶっちゃけ「アテハズレ」だったようで、「イマイチ」とバッサリ斬っていた。けれど私はそれなりには楽しめたかな?(以下、ネタバレしているのでご注意を)

大体のあらすじは以下の通り。
昔懐かし「ふるさと創生基金」として支給された1億円で、市のシンボルモニュメントとして”黄金の地球儀”を製作した桜宮市。”黄金の地球儀”といっても、1億円相当ではタカが知れている。サイズこそ直径80センチ大ではあるが、実際に「金」が使用されているのは”日本だけ”という中途半端なシロモノで、今となっては市民すらその存在を忘れているような状態だ。それでも時価1億円、現在価値では約1億5千万円相当の「金」が使用されていることには違いなく、保存やら警備やらで常に経費は計上され続け、財政が逼迫している桜宮市官財課のお荷物になっていた。
主人公:平沼平介は、父親が地球儀の”重量”警備システムの開発に携わった際にサインした、警備保障の(インチキ)契約書の一文を突き付けられ、突然「24時間ほぼ無償での警備と万が一の際の弁償」という、とんでもない仕事を市の担当者から押し付けられてしまう。引き受けざる得ない平介は、さらに実態を目の当たりにして唖然。世間的に「完璧で隙なし」と公言されていた地球儀の警備システムは、実はダミーとハッタリでしかない事を知る。市の詐欺まがいな仕打ちに憤慨した平介は、ザルシステムを逆手にとり、表面上は分らないよう、黄金部分を内部から削り取ってそっくり盗んでしまおう、という計画を立てる。警備の契約期間は半年間。それまで守り(隠し)通してしまえば、その後に盗難が発覚しても知らぬ存ぜぬで通せるという算段だ。綿密に計画を練り、安全に遂行できるように保険としてある筋にも協力(援護)を要請して準備は万端。ところがいざ決行して見れば、さらなる驚くべき事実が発覚することになる。
・・・と、これ以上のネタバレはやめておく。(ま、ここまで書けば想像がつくか?)

善良な市民だった平介が犯罪に手を染めようなどと思う経緯の内には、実は、契約書を突きつけられる直前に「一緒に地球儀を盗もう♪」と唆していた、古くからの厄介な悪友がいたことが重要なポイント。当然因果関係がないわけがない。コイツの正体は果たして白か黒か?とにかく「クセモノ」なのは間違いなし。また、”ある筋”とは「ブラックドア」絡み。なんと、あの小夜と瑞人が登場する。桜宮病院の炎上からは3.4年後のお話で、直前の事件での小夜は正当防衛だろうし、瑞人は未成年だったしで、まぁそれもありだろう。とにかく畑違いな仕事に「へぇ~今そんなことやってんだぁー」という微妙な印象は否めないけれど。

アホらしい物語だったが二転三転するトリック(?)は健在で、国や行政・法律や制度等など、時代にそぐわなくなりつつあると知りながら、極端な進化や変革を恐れ、「慎重に対処」を建前にして都合よく見て見ぬふりを決め込み、もしくは、好んで古来からのしがらみに雁字搦めになっている事なかれ主義、黙っていれば分らない的安易な発想と露見すれば開き直る、そうしたモノ(体質)に真っ向からケンカを売るような作風が変わらず見受けられる作品には違いない。確かに本家”田口&白鳥”シリーズには遠く及ばず、内容は薄いし面白みにも欠けるが、シリーズに登場したあの人この人が関わっていたり、誰かを彷彿させる一文があるだけで楽しくなるというものだ。”桜宮サーガ”を多角的な視点で見るといった意味では有効と思い、読んでおいても無駄ではない、という感じかな。(読まなくても十分だけど)←おぃおぃ。

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