「余命」みた。
妻は38歳の外科医。10年前に乳ガンを患い片方の胸を摘出。夫は医大時代の仲間で、術後、喪失感に打ちひしがれている中、プロポーズされて結婚。しかし、夫は医者にはならず、カメラマンとして活動中。収入が少ないことから家計は妻が支え、夫は主夫をしながら時折撮影旅行に出掛ける生活をしているが、概ね円満な家庭に見える。結婚10年目にして漸く赤ちゃんを授かり、至福の時を迎える夫婦。ところが、暫くして乳ガンの再発を自覚して愕然とする妻。自らの命を取るか、赤ちゃんの命を取るか、二者択一の究極の選択が迫られた。
夫はちゃらんぽらんなワケではなく、ましてや暴力的でもない。心から妻を愛する善良な男だ。妻が何かに悩んでいることを察しながらも、生活上で負い目を感じているだけに強く問い詰めることができないではいる。そうした”自身のなさ”はハシバシに感じられるものの、苦悩と言うには、「夢」に走った理由が強く伝わってこない事から、夫に感情移入しがたいのが残念なところ。(ひたすら焦点を妻に合わせる為にあえてなのかもしれないが)。対して、妻も夫を心から愛し、ちゃんと甘えるところは甘えている。夫婦の関係は悪くないから、お互い感情のままにヒステリックに声を荒げることがないのが楽だ。
この作品では、誰もが苦悩を葛藤を抱えながら、基本的には誰もがそうしているように、あくまで平静を装って堪えている。苦しさに耐えかねて涙も流すけれど自然な涙のみ。怒鳴り散らしたところで、泣きわめいたところで解決しないと知っている大人なやりとりが、暗くて重いテーマをさらに苦痛や嫌悪で歪ませることなく、視点がぶれない分だけ冷静なまま見させてくれるところが良かった。
子供を産むこと、産めない(産まない)こと、病気のこと、命の選択。私は、映画だとしてもこれらについては部外者がどうこう言う話ではないと思っているので、意見を述べる気などサラサラないが、客観的に一つのケースとして見るだけでも感じるモノのあったとは思っている。
総評:★★★★☆ 好き度:★★★☆☆++ オススメ度:★★★☆☆++
松雪さんの熱演が素晴らしく、椎名桔平さんの夫役も良かったが、『警察の血』でのふてぶてしい早瀬役を見てからだと、なんだか胡散臭くて引いちゃうのよね。妊婦相手の暴力シーンがなくてホッとした(^^;
それにしても、(キーワードとはいえ)夫婦のキスシーンの多い作品だったなぁ(^^)
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コメント
何時もお世話になっております。
子供・病気・動物作品がちょっと苦手って事は旭山動物園物語は圏外という感じですかね・・・
確かに難しいテーマだし、人生観によって結論と感じ方が違う作品ですね。
命の尊さを尊重する私としては産む決断に対してそうした方が良いという結論を出しましたけれど、この結論は望まれて産まれて来てほしいという思いが強い場合ですからね。
夫がどうしてカメラマンになろうとしたのかというエピソードがあまりなかったのは理由を知らずじまいになってしまい消化不良になってしまったという点は否定できないと思います。
投稿: PGM21 | 2009/02/12 18:53
■PGM21さん、こんにちは
「旭山動物園物語」は完全に圏外です、
命を尊重することと、他人の決断に意見することは別ものと思います。
やっぱりこの映画で、そこを語り合う気にはなりません。
カメラマンになったのは「逃げたかったから・・」とひと言でもあれば良かったですね。
投稿: たいむ(管理人) | 2009/02/12 19:13
自分が医師だったからこそ出来た決断なのかもしれないですよね。
滴に感情移入できない部分もまりましたが、見て良かったです。松雪泰子さんがとても良かったと思います。
夫婦のキスシーン多かったですね!
どうも夫婦っぽく感じなかったんですけど・・
投稿: hito | 2009/02/13 14:27
■hitoさん、こんにちは
松雪さんが良かったですねー。
ハチャメチャからシリアスまで、上手い女優さんだなーと贔屓にしています(^^)
>どうも夫婦っぽく感じなかったんですけど・・
日本人の夫婦ではまず見かけませんよねー、あんなの(^^;
そこも世間離れして見える要因かな?
投稿: たいむ(管理人) | 2009/02/15 09:31