« BSアニメ夜話で『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』 | トップページ | 機動戦士ガンダム00 2nd.(#21) »

2009/02/28

『PLUTO-鉄腕アトム「地上最大のロボット」より 』 7巻

Photo やはり豪華版から数日遅れな通常版の発売。やっと読むことができた。作者は浦沢直樹氏。今となれば”『20世紀少年』の”と添えれば誰もが「ああー」っと言ってくれるけど、そうしたくないくらい私はこの作品が好きだ。
6巻では、遂にプルートゥの正体が明かされ、この作品での主人公であったはずのゲジヒトが退場。いよいよクライマックスへの入口まで到達していた。7巻はほぼエプシロンのお話。大感涙した”ノース2号”の最期を思い出す、ふたたび涙なしでは読めない7巻だった。(以下、ネタに触れているのでご注意ください)。

アブラー博士は、以前天馬博士との交流のなかで、究極のロボット作りの極意を授かっていた。人間により近いロボット(完全)にする為に必要な部分とは、「憎悪」であり「悲しみ」のロジック。それを組み込めばロボットは、より人間らしい完全なロボットとして完成する。アトムがどれほど有能で、愛に溢れた人間の理想の男の子として”完璧”であったとしても、負の感情がない限り、”人間の子供としては不完全”でしかなく、死んだ息子の身代わりとはなりえないと、だから「アトムは失敗作」と、以前お茶の水博士に漏らしていた天馬博士の言葉の真意がここにあった。
一般的には「死んだ」と発表されているアトムは、実は密かに身体は再生され、後は覚醒を待つばかりのところまで来ていた。しかし覚醒する為に必要なデータが欠如しており、円周率を永遠に計算しているような状態で眠り続けているアトムだった。天馬博士は、ゲジヒトの妻からあるものを譲り受けていた。それをアトムに使用する天馬博士。それこそが極意のデータ。果たしてアトム再生なのか、トビオの再生なのか、「悪魔」になる決意をする天馬博士だった。
一方、エプシロンは最後の生き残りとして、セーフハウスで匿われることになった。かねてから戦い拒続けていた心優しきエプシロンだが、実はその破壊力は誰よりも上回るモノを持っており貴重な存在。共に暮らしていた孤児たちとはひと時の別れとなったが、別れの会でずっと心を開くことのなかった少年ワシリーが描いた絵と初めて唄った歌の歌詞から閃くものを感じるエプシロン。ひたすら「ボラー」を恐れるかのワシリーだった。
セーフハウスに現れるプルートゥ。遂にエプシロンが戦うことになる。結果はエプシロンの圧勝でプルートゥの残骸が散らばった。事後処理に追われるエプシロンの不在時に急遽決まるワシリーの縁組。エプシロンが戻った時にはワシリーは連れ出された後、作為的なモノを感じるエプシロン。実際、ワシリーを待っていたのアブラー博士だった。彼を見るなり恐怖で顔を歪ませ「ボラー、ボラー」と叫ぶワシリー。そしてその場にはもう一人、プルートゥが居た。察知したエプシロンはワシリーの救出に向かうが・・・・。

人間を人間たらしめている最もシンプル且つ重要なモノが”負の感情”かぁーと思う少し哀しい気分になるが、”完璧な人間”は存在しないが、”完璧なロボット”ならばありえると思い、人間とは不完全なものでしかないと思えば、確か完璧なロボットは決して人間にはなりえないとの答えが自ずと導き出されるというもの。最初の理想は完璧だったはずなのに、完璧であるがゆえに不完全だと気が付き、その為に”完全なロボット”を作り出そうという人間とは一体どれだけ愚かなのだろうか。
ゲジヒトの悲しみを取り入れ、エプシロンやプルートゥのそれを感じることで遂に覚醒 したアトム。「ボラー」とは何か?プルートゥとの対決は?いよいよ次巻で完結する『PLUOT』。8巻は6月頃の発売予定!原作「地上最大のロボット」と同様、ウランも重要な役割を担っている。浦沢作品が同様の結末を迎えるのか、どのようなアレンジが施されるのか、浦沢演出が非常に楽しみだ!!

|

« BSアニメ夜話で『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』 | トップページ | 機動戦士ガンダム00 2nd.(#21) »

コメント

手塚原作を知らないので結末は勿論、次の展開も予想もつかない“お得な”私です。
人を人たらしめるのは負の要素、というのはインナースペースを取り扱うSFではよく出てきますね。『宇宙大作戦』の“二人のカーク”というエピでは転送装置の故障で善と悪二人に分離したカーク。悪のカークは残忍で凶暴でしたが、結局ふたつの要素が一緒でないとカークたりえないという結論。

人造人間キカイダー(原作)の最後もそうですね。もっとも石森先生はアトムを知っていた上でピノキオの話も引用して描いているので、ある意味『プルート』エピソードのオマージュだったのかも知れませんが。

ところで…“ワシリー”くんですよ…(-。-) ボソッ

投稿: よろづ屋TOM | 2009/03/01 15:11

■よろづ屋TOMさん、こんにちはsun
アヒャヒャ(^^;「リ」でしたねぇ。なんか違和感あったんですけど、記憶だけで本も確かめずに書き上げたものですから、アブラーだのボラーだので混濁したみたいです。恥ずかしいので何事もなかったように修正させていただきました(^^;;;

『宇宙大作戦』とは、流石にTOMさんらしい引用ですね。善悪が2つの人格に分離するエピは良くあるし、ひとつでも人間の心の葛藤を演出するのに分身みたいな「天使」と「悪魔」は良く使われますよね。性善説も性悪説も、両方を持ち得なければ成立しない説ですしね。
でも、どちらがより人間らしいかって言うと「負」に感じてしまうところが「人間」なのかなってちょっと思いません??

今回ウランちゃんが、ピノキオとゼベットじいさんを比喩として使ってますし、浦沢氏のセンスを感じる7巻でした。

投稿: たいむ(管理人) | 2009/03/01 16:03

こんばんは!うんうん。
エプシロンの死はノース2号同様泣けました~。
「完璧=人間」 この構図がまちがってるんですよね。
「人間=不完全」なんですから・・(涙)
それでも伝馬博士はアトムがトビオになることを夢見てしまったということなんでしょうかね(涙)
ゲジヒトの魂を組みこんだアトムはいったいどんなロボットに?なるんでしょうか??
アトムとウランの役割とは?ボラーとは?
次巻が待ち遠しいです!!!

投稿: くろねこ | 2009/03/09 19:38

■くろねこさん、こんにちはsun
浦沢ロボットたちは誰もかれもが人間臭い死に方で、特にノース2号が印象的だったのだけど、エプシロンも負けず劣らずな自己犠牲で泣けましたね。
「アトムのテーマ」とわかっていても、やっぱり浦沢氏の描く表情って抜群で、泣かされますね。

負の感情が混ざったアトムがどんな風に甦るのか楽しみだけど、少し恐いです。
多重人格だったりして・・・冗談ですがw

投稿: たいむ(管理人) | 2009/03/10 17:50

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« BSアニメ夜話で『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』 | トップページ | 機動戦士ガンダム00 2nd.(#21) »