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2009/02/09

『OZ(オズ)』 樹なつみ(作)

Oz_2 『花咲ける青少年』に続き、勢いのまま人気の高い『OZ』も読了!完全収録版のため、サイドストーリまで一気に読めたのが良かった。とはいえ、逆に一気読みが災いした点として全体的に唐突感にあふれている印象がある。しかし、その理由は「プロットノート」解説によると(3巻に付随)、泣く泣くカットせざる追えなかったエピソードが多々あることや、路線変更を余儀なくされた事、「増刊」号での読みきり仕様なゲリラ連載によるものと知れば、理解はできるところ。
この作品も、安心安全な少女マンガの王道。キャラクターの誰もがとても魅力的で、カッコ良い・美しい・面白いと3拍子そろった作品だった。

***冷戦のさなか、一発の誤爆から始まった第3次世界大戦は全面核戦争となり勃発から終結までは僅か40分だったという。何故ならば、核を保有する国々の殆どが相打ちから瞬時に壊滅し、完全に政府機能が失われてしまった為。地上は汚染され、舞い上がった粉塵で太陽光は遮断。長期に及んだ「核の冬(擬似氷河期)」によって全人類の過半数が死に至ったという。事実上瓦解した世界だったが、生き残った人々で組織化がはじまり、やがて国家へと発展、新しい国が各地で生まれ始める。しかし、僅かな資源の奪い合いから国境付近では常に小競り合いが絶えない状態。各国は軍を組織し、またどの国にも属しない私設傭兵組織までもが誕生。一度は壊滅に至ってなお、戦いを日常化としている人類だった。***

まず最初に前提を頭に叩き込まないと話に付いていけないハードルの高さだが、第3次世界大戦から31年後の世界という、完全なるパラレルワールドが「OZ」の舞台である。
「OZ」(オズ)と言えば、まず『オズの魔法使い』を彷彿するのが一般的と思う。そして願いを叶えてくれる「オズ」を由来に”組織名”として使用されることがしばしばあるが、この作品もまさにそんな感じで、「OZ」は”最先端技術の粋を極めた科学都市”と人々に噂される“幻(伝説)”の存在といった設定である。
この物語のヒロインは、若干15歳にして”博士”の称号を持つ天才少女のフィリシア・エプスタイン。現在最大勢力を持つ「サンレイト連邦共和国」の”影のドン”と言われる首相補佐官の娘でもある。彼女は、大戦直後に生き別れとなった実の兄で天才科学者のリオンは「OZ」に居ると信じていた。図らずもフィリシアの前に現れたのが「OZ」からの使者“1019(テンナインティーン)”。それにより、本格的に「OZ」を目指して旅立つ事になる。
成り行きで旅に同行したのがムトー・ヨウ。傭兵組織「ヤンセン」の将軍の秘蔵っ子で、22歳にして中尉という将官(派遣先では軍曹)である。フィリシアの護衛を担当していたがトラブルに巻き込まれ、その後、自らの意思から任務放棄に至った。きっかけはやはり「OZ」。「OZ」からの使者“1019”は精巧にプログラミングされた機械人間(サイバノイド)。途方もない科学力見せ付けられ、俄かに現実味を帯びた”伝説の「OZ」”をその目で確かめたいと思うムトー。何より、世間知らずなお嬢様のフィリシアを放って置くことが出来ず、しかも、道先案内人である“1019”は、強靭で武装強化された肉体を持つがAI(人口知能)は生まれたての赤ん坊同然。驚くべき速さで人間界を学習しているものの順応には程遠く、更に自我らしきものすら芽生え始めさせている始末で、危なっかしい事この上ない。
かくして「OZ」を目指した3人旅が始まるのだが・・・、あっという間に追っ手に追いつかれ、あっというまに離散してしまう3人。先に2人を逃がして捕まるムトー。・・とはいえ、追っ手の指揮官はムトーの元部下:ネイト少尉であり、メンバーも元仲間がほとんど。(あるいはフィリシアの身内)。一触即発の不安定な世界状勢である今、領地を離れれば追っ手でさえ身の安全の保障はなく、有事には一戦力どころか、逆に最も頼りにされるのがムトーだ。ムトーは優秀なだけでなく、人一倍人望が厚くて誰からも一目置かれる存在。任務放棄でさえ(理由はわからなくても)誰もが好意的に捉えており、結果的に敵地での不可抗力を装った形で逃がしてしまう元部下たちだった。
3人は(状況により)集まったりバラバラになったりを繰り返しながら、苦難をひとつ乗り越えるたびに”人として”成長していった。そして漸く「OZ」の真実にたどり着くことになる。確かに「OZ」は存在し、リオンはそこに居た。予想通りマッドサイエンティストに成り果てていたリオン。第3次世界大戦のきっかけとなった「誤爆」にも 「OZ」が関与しているなど驚愕の事実も明らかになる。そして、再び世界は「OZ」(リオン)の手によって破滅させられようとしていたのだが・・・、これから読もうと思っている人の為にも、これ以上のネタバレは止めておく。

一読しての感想は、最初に書いたとおり「唐突感」が否めず、折角の伏線が伏線として機能せずに消滅してしまう所などからも「ヤラレタ感」に乏しく、随所で「肩透かし」を感じてしまうところを勿体なく思う。そして「既知感」が何より残念なところ。20年近くの前の作品だから当然な部分もあるが、私が思い浮かべた作品は『ルパン三世 ルパンVS複製人間』(1978年)であり、士郎正宗:『アップルシード』(1985年)であり、やはり微妙だ。そういえば『OZ』は『オズの魔法使い』をそのまま見立てた設定もある。フィリシアがドロシー、ムトーが弱虫ライオン、”1019”が心のないブリキの木こり、となる。なるほどとは思うけど、ネイトは脳ミソのないカカシではないのでコレもどこか不完全。(ムトーが弱虫ライオンというのも、私には説得力に欠けるように思うし)。「ヤラレタ感」の薄さについてを強いて言うならば、樹作品はしばし余計なワンセリフ・ワンカットあるからだと思っている。つまりは親切なのだけどヒントの出し過ぎってこと。いつも勿体無いなーと思ってしまう。『花咲ける青少年』では、1巻でのハリーのリーレン評が逆効果になったと思うし、『OZ』では、地下で”19”がムトーを移動させるカットから後日談を確信させてしまう。どちらもソレが無ければ最後までハラハラしたんじゃないかな?

思わず辛口になってしまったが、これは一個人としての重箱の角を突付くような感想。ナンダカンダ言いつつも一気読みしてしまった作品には違いなく、絵的にも内容的にも一般的な評価の高さには頷いている私であることは強調したい。
要するに好みの問題。『マルチェロ物語』の雑誌連載当時で、私の樹作品に対する評価が一旦確定しているからもある。子供の時分は一つ気に入らないだけで、平気で全否定できちゃったりするもの。困るのは、大人になってもその確執が簡単に払拭できないということ事。今回も、どこかで斜め目線によるアラ探しをし、何かとの比較を繰り返し、感情移入出来ずにいたように思う。相性が良くないのだね、きっと。童顔ムトーには惚れ惚れしちゃうし、ネイトの大人な雰囲気も捨てがたい。発展途上の”19”はギュっとしたくなるほど可愛く思っているのにね。ヘンなものだね(^^;
何度も言うけれど、どの樹作品も、面白くて先が気になって一気読みしてしまっているワケで、個人的感情とは別の次元のお話。懲りずに『八雲立つ』にもチャレンジする予定。今度こそ過去のトラウマを打破できると良いのだけどな。

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コメント

OVAでは、前後編の70分のストーリー。
端折っているいるシーンも多く不満でした。
八雲立つとともに、新たにリメイクされてアニメ
放送されたらと思っています。

投稿: カモミール | 2009/02/10 13:46

■カモミールさん、こんにちはsun
OVAもあるのですか。キャストは誰だろう?
70分ではさすがに描ききれない壮大なドラマ。物足りないのは分る気がします。
『花咲ける』を成功させて、アニメ化されたら面白いですね。

投稿: たいむ(管理人) | 2009/02/10 19:55

再演も含めて、Studio Lifeの舞台『OZ』を何度も観たので、今ではステージのほうの印象が強いです。ムトーと19のラストシーンなど、原作以上に熱く込み上げてくるものがありました。
その後、『ガンダムW』にオズが出てきた時は、ニフティでもしきりにこの『OZ』のことが話題に上ってましたっけw。

投稿: ayuto | 2009/02/11 19:35

■ayutoさん、こんにちはsun
さすがはayutoさん、しっかり舞台をご覧になっているのですね!
ラストシーンがあるってどれだけスキップした台本なのか不安ですけど、評価の高い舞台作品ですよね?

>『ガンダムW』にオズ
そっか、アニメ放送当時でも「OZ」は過去作品ですもんねぇ。
今、深夜アニメの「Mission-E」でも「オズ」って組織が登場してますが、やっぱり「オズ」って言葉は希望願望の代名詞っぽいからかしらね?

「花咲ける」では郷田さんがパパ役になりましたね♪ ふとayutoさんのお顔が思い出されました(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2009/02/11 19:45

こんにちはー。
私は19がムトーを移動させるシーンも、後日談に上手くつながるいいシーンだと思うんですけど、たいむさんは辛口ですねー。
私にとっては、常に自分の好き好きランキングの上位に挙げる作品です。OVAにはがっかりでしたけどsweat02

投稿: アビ | 2009/02/14 19:02

こんばんは!
リオンの最終目的がちょっと予想外でしたけど。
1019には泣かされちゃいました~!
私も大好きな作品です!!

OVAもみましたよ~!
ネイト(山寺)がかっこよくて!しびれちゃいました(笑)


投稿: くろねこ | 2009/02/14 23:10

■アビさん、こんにちはsun
アビさんにオススメされていた作品でしたよね~「OZ」は。辛口でごめんなさいね(^^;

成田美名子作品やひかわきょうこ作品が好きで、贔屓している私なので、セリフやキャラが被るところが昔からちょっと好きじゃないの。そういえば~と、「OZ」を読まなかった理由が「フィリシア」だったことを思い出しました。何故にお嬢で世間知らずの天才キャラに、「エイリアン通り」で既に登場している似た設定のキャラと同じ名前を付けるのかが、どうしても理解できなかったものですから。
でも、お話は好きですよ、良く出来てますし♪
惚れ惚れしちゃう美しい絵にもハッとしちゃいますし(^^)

>19がムトーを移動させるシーン
私は最後までどっちかわからないのが好きなのよね。推理モノ好きだからかな?あのカットは嬉しくもあり残念でもあるのでした(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2009/02/15 09:53

■くろねこさん、こんにちはsun
1019の人間らしさには泣かされましたよね。自己犠牲だし(TT)彼も助けてあげたかったなぁ。。。。あ、ダメか。OZの残り火だし(><)

>OVA
評価が割れているようですが、山ちゃんですか!
期待せずにちょっと見てみたい感じかな?(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2009/02/15 09:59

たいむさん、こんばんは。

遅れ馳せながら、たいむさんの感想見ましたです。
ふむふむ、たいむさんの言ってる事よくわかります(笑)
樹作品って、特有の不安定さがあるんですよね。
わたしも成田・ひかわ両先生の大ファンで公認サークルにも参加してましたから両先生のスキのない完成度に比べると・・・って目でわたしも見てましたし。

「マルチェロ」の頃はデッサンの狂いが嫌いで、ストーリー的には評価できたものの、自分にとってはご贔屓な漫画家じゃありませんでした。
「OZ」は自分的にかなり好きな作品なんですが、ムトーの傭兵という設定と風貌ががボトムズのキリコに似ていたり、おっしゃるようにフィリシアの件もそうですよね~。
ラストのナインティーンのセリフもターミネーターとかぶるし(笑)

色んなパクリ要素があった感は否めません。
とはいえ、ドラマティックなストーリー展開が得意な方でわかっちゃいるけど、感動しちゃう・・・みたいなパターンが多いです。
「花咲ける青少年」も「八雲立つ」も最初の頃はかなりイイのに、ラスト近くの展開が惜しいところ。
売れっ子さんは「引き」とか、好評なら連載期間の延長とか色々ありますから、ちょっとお気の毒な気もしますけどね。
長々と失礼しましたです。

たいむさんの真剣な感想を読んで嬉しかったデス。

投稿: せるふぉん | 2009/02/23 02:21

■せるふぉんさん、こんにちはsun
わ~ん。私だけじゃなかったということと、突っ込み内容が解ってもらえていることが凄く嬉しいです。全般的に高評価な中、やや批判めいた本心を書くのはちょっと勇気が要ることで、勧めてくださった方にも失礼かなーっ恐縮していましたので。やはり成田・ひかわ作品も併せて網羅している人じゃないと、この感覚はわからないだろうなーって思っていましたし。

そうなんですよね。設定でもセリフでも、ぶっちゃけ樹作品はいつも「パクリ」感が付きまとうんです。私が「マルチェロ」を好きに成りきれなかったのは、シャールと被ること所が多々見られたからです。「これって少し前にシャールが言っていたことじゃん」みたいな、月刊誌で同時期に連載されていた両作品でしたから、明らかなる「マルチェロ」の後追いが感じられたんですよね。雑誌はひとおおり読んでいたので、「朱鷺色・・」も「パッション・・」も読んだけど、「フィリシア」が嫌悪の決定打になったことを思い出しました。以来、樹作品にはまったく執着することなく今に至るワケです。
確かに、今となれば色々制約があったものと理解は出来きなくはないのだけど、「フィリシア」に関しては、同じ雑誌なのに同じ名前って配慮なさすぎって未だに思ってます。
もし、成田・ひかわ作品や、ほかの似た要素の作品を知らなければ、絶賛しつつ大好きになったかもしれないとは思うのですけどねー。ドラマチックで希望通りのハッピーエンドになる作品は大好きですし。(そこはひかわ作品が完璧ですよねhappy01
やはりこういうものは早い者勝ちでしょうし、先に触れて好きになったほうに肩入れするのは仕方がないことですよね?・・・と自己弁護。

それにしても、公認ファンクラブとは素晴らしい!!(^^)
私はイイトコ付録やグッズを集めるくらい。
「エイリアン通り」では、3年分のカレンダーこそ泣く泣く廃棄したけれど、ポストカードやバインダー仕様のレターセットなどは未だに持ってます♪
ひかわ作品は、今「お伽草もよう綾にしき」の完結巻を待っているところ。「彼方から」と若干の類似性を感じるけれど、セルフカバーみたいなものなら許せますよねw

・・・ということで、好きな方へ話が行くと止まらないので、この辺で。
わたしこそ、とても嬉しいコメントでした。ありがとうございます!!

投稿: たいむ(管理人) | 2009/02/23 19:08

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