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2009/01/03

『花咲ける青少年』 樹なつみ(作)

Hanasakeru 樹なつみ作品といえば、舞台化されている『Oz』が最もポピュラーと思うが、私には『マルチェロ物語』や『朱鷺色三角形』、『パッションパレード』といった割と初期の作品ばかり。昨年12月、そんな樹作品の中から『花咲ける青少年』のアニメ化が決定したと聞き(NHKBS2にて4月から。監督は今千秋さん)、無性に読み直したくなった年末だった。
「月刊LaLa」での連載を、最初の方だけリアルタイムに読んでいた私。しかし、最終回を見届けることなく「LaLa」から卒業してしまい結末の記憶がまったくない。(ちなみに『Oz』も読んだことがない)。折角のアニメ化、読見直さず純粋にアニメを楽しもうかとも思ったが、今監督の『のだめカンタービレ 巴里編』を見る限り、完全に原作を踏襲してくれるとは思えず、やっぱり一足先に原作のおさらいをすることにした。(以下、若干内容に触れているのでご注意を)

舞台は日本、アメリカ、シンガポールそして架空の国ラギネイを中心にワールドワイドに展開。主人公は花鹿(かじか)・バーンズワーズ、14歳。国籍はアメリカだが、母親が日本人のためアジア系の顔立ちをした美少女で、泣く子も黙る大財閥の御令嬢。父親の独特な教育方針により、ひとり”島”に隔離されて育てられたことから、野性味溢れる少し変わった娘に育ったが、人を魅了してやまない天性の才能と鋭いカンを持つ少女である。
物語は、花鹿の父:ハリーの出生に纏わる話で始まり、その出生の秘密が基となって、花鹿の将来を大きく左右する事態へと発展する。14歳の花鹿は最終的には16歳にまで成長。それまでの過程と経過、結末が壮大なスケールで描かれるが、花鹿の”夫探しゲーム”という軽いノリで始まったワリには、途中から世界を揺るがす政治・経済界での駆け引きや、主従の光と影といったキナ臭いシリアス世界が絡み合う骨太な作品となる。それでも根本的にはラブストーリーだろうか。テンネン花鹿の周囲を賑わす恋模様を(じれったく)見守る作品で、花鹿と3人の夫候補+αが織成す”じゃれあい”を楽しむ作品だと思う。(だから今監督なのかな?・・^^;)
それはともかく、今回読み直した感想は「こんなに簡単だったっけ?」。思いの外親切設計な作品だった事を正直意外に思った。当時はシリアスパートも恋愛パートも結構スリリングに思って読んでいたし、もっと複雑な物語だったように記憶していたのだが、なんだか「アレレ?」とやや拍子抜け。通しで読んだのは初だったが、花鹿を取り巻く”五角関係”(四角じゃないところがミソ♪)の行く末でさえ、最初から「これはやっぱ最後はあの人しかいないでしょ」と思えるエピを見過ごすことなく、読み進むに連れて増えるそうしたエピソードや何気ない一言に”あの人”だと確信を深めることなった。また、この作品にはムカツクほどに狡猾な極悪人が登場しない為、ピンチでも大抵が主人公側の都合の良い方向へと上手く事が運ぶ傾向にある。パターンが読めてくると危機感や緊迫感や感じられなくなるのが難だが、嫌悪感や絶望感で一杯になるよりは精神的に楽なので私は好きだ。(ま、安心感は物足りなさにも繋がるから加減が大事だけど)

そもそも読者というものは、期待が裏切られることを嫌い、思い通りでハッピーな結末を望んでいるもの。御贔屓さんに有利な展開を希望しつつも、甲乙つけがたい面々が揃ったこの作品では、誰であっても許せるという「妥協点」を持っているものだ。とにかく最終回間近ともなると波乱万丈の末の着地点を想像し、それが何時どんな形で訪れるのかを心待ちにしながら、(分りきった結論を)どれだけドラマチック魅せてくれるのかを楽しみにするワケで、予想どおりなハッピーエンドでナンボのモノということになる。だから逆にファンの声や気持ちを無視した結末(悲劇や納得のいかない理由)になると、悲鳴が上がり、散々叩かれてしまうことになるのだ。

『花咲ける青少年』は、そうした意味ではファンの気持ちを裏切らない、正にエンタメ的少女マンガの王道で、「安心」の太鼓判を押せる作品だと思う(^^)

約20年も前の作品を、何故今更アニメ化に?・・と思ったが、そういえば「お金持ち」と「イイオトコ(美青年)」ばかりが登場する、やや浮世離れした世界観を持った作品であり、確かに古今東西それらを好む層(現在の「BL」や「やおい系」)にウケそうな作品だと思えば妙に納得が行く。NHKだけに1クールでは無いだろうし、全12巻分をたっぷり魅せて欲しいものだと、今監督に期待したいと思う。

アニメ化に先立って、原作の【愛蔵版】が連続発刊されるとのこと(2-3月)。文庫版にも収録されていない番外編が収録される完全版で、原稿の修復再現作業によってかなりオリジナルに近いクオリティになっているらしい。(番外編では何やら結婚式の絵があるとかないとか)
懐かしく思う方、初めての方、いずれにしても【愛蔵版】が一番オトクなんじゃないかな?

※関連:アニメ『花咲ける青少年』のキャスト♪

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コメント

新年早々、さっそくこの記事に反応してしまいました(笑)
樹先生は、わたしがまさに漫画家を目指している時
人気急上昇された方ですね。
当時、成田美名子先生やひかわきょうこ先生が大好きだったんですけど
わたしも「マルチェロ物語」よく覚えてます。
もちろん朱鷺色三角形やパッションパレードも読みましたし
花咲ける青少年も、八雲立つも好きです。
「OZ」は単行本になってから買ったんですが
わたしのスライクゾーンに思いっきり入りました(笑)
“ムトー”が装甲騎兵ボトムズのキリコに雰囲気が
似てるな~ってのが興味を持った理由だったんですけど
何だか懐かしいなぁ。
(OZはラストが感動的)

しかし確かに何故「花咲ける青少年」?
花鹿がムスターファというヒョウを溺愛していたのを
よく覚えてるけど、壮大なお婿さん探し物語でしたね。
結局、灯台下暗し・・・的な結末だったけど(笑)

すみません
新年早々、長文コメントでした^^;

投稿: せるふぉん | 2009/01/04 13:15

■せるふぉんさん、こんにちは
早速の訪問、うれしいっす(^^)

せるふぉんさんは漫画家を目指されていたのですか!わぁ~すごいなぁ~。

>成田美名子先生やひかわきょうこ先生が大好き
実は私もですよ!!成田1番、ひかわ2番です
成田作品では「エイリアン通り」が大好き!映画好きは、若干この作品からの影響があるかもしれません。
ひかわ作品は「千津美&藤臣くん」シリーズがツボ。「ミリアム&ダグラス」も好きだし、「彼方から」は近年文庫本で揃えました♪

それに比べると樹作品は4-5番手。「OZ」も「八雲・・」も未読のままです。実は清水玲子先生とごっちゃになっていたことも。。。(^^;
でも、「OZ」は以前から勧められていて、今度こそ読んでみようと思ってます。

>“ムトー”が装甲騎兵ボトムズのキリコ
うは。そうなんですか(笑)クールで無口な武闘派イイオトコは大好きです。理想は藤臣君だし(爆)

懐かしい話が出来て楽しかったです。脱線OK、またお話できると嬉しいです!!

投稿: たいむ(管理人) | 2009/01/04 15:54

NHKBS・・・・
総合じゃない?
観れるところでは観れますけど。
声は?絵は?原作連載終了してますから、全部はしょらず
放送してくれるってことですよね。ヽ(´▽`)/

投稿: カモミール | 2009/01/06 16:45

■カモミールさん、こんにちは
マ王第3シーズン、もしくはタイタニアの後番組ですからBSです。

>全部はしょらず放送
それはどうかなぁー。そうであって欲しいとは思うけれど。。。

投稿: たいむ(管理人) | 2009/01/06 18:30

こんばんは!実は私樹作品大好きなんですよ~。
OZは是非!!ここには重くはないけどロボットの
悲哀が描かれてると思います。
「花咲ける・・」はいい男勢ぞろいですから
今風といえるんでしょうね~(笑)
私はルマティがすきでした♪
「夏目」も「のだめ」もたいむさんと楽しめないのが残念でした。
この作品はお話できることを祈ってます~。
TBさせていただきますね。
それではおじゃましましたぁ

投稿: くろねこ | 2009/01/09 00:14

■くろねこさん、こんにちは
くろねこさんは樹ファンなのですね~。
私は↑のコメント返しで書いたとおり、同時期には別の漫画家さんに傾倒していたのでソレっきりとなりました。
「今ならば」と思うけれど、今の思考(嗜好)、ここ10年くらいで固まった感じなので(遅っ)、「今だから」が沢山有るんですよ(^^;。
『OZ』は、私のブログ内容から、これまで何人ものブログ仲間さんがオススメで上げてくださったタイトルの一つ、近いうちにも是非読んでみようと思ってます。

で、「ルマティ派」ですか(笑)
私はやっぱリーレンかなぁ。昔ならきっとルマティな気がするけどw 
オモチャな虎ちゃんも可愛いっす♪

NHKなので時差なしですね(^^)
感想記事は・・・どうかなぁ。その時に考えます(^^;

投稿: たいむ(管理人) | 2009/01/09 22:18

こんにちは。TBしたのですけど、残念ながら反映されなかったみたいです。
いろんな要素多すぎて、わかりづらい本編の方の説明を、ちゃんとしっかり
わかりやすくまとめておられるのはさすがですね。d(^_^)

> この作品には憎らしいほどの狡猾な極悪人が登場しない‥

そうですね。ただクインザはあの歪んだ忠義っぷりとあの個性で強烈に
印象的でした。ちなみに彼の星座と血液型は、うちの母親と同じ‥で
あのキワドサが微妙にわかる人間としては、マジ震えがきちゃいましたね。

一方で好対照だったのがノエイ少尉ですね。彼が花鹿の素性を知り、
律義に頭を下げるシーンがたまらなく好きです。(笑)

> 「OZ」も「八雲・・」も未読のままです。

うわ~もったいない。特に「八雲‥」は京極派なたいむさんにはお勧めですよ。
私は、第2話のクライマックスでの闇己クンがカッコ良すぎて・・見とれましたvv
そういえば、Wikで調べたところ、OAV&CDドラマでのキャストは
闇己=関智さん、蒿=石田さんで、眞前氏が井上和彦さんだそうです♪
ファンには美味しすぎますvv こっちも全部アニメ化してほしいですね。

投稿: 星咲沙夜 | 2009/01/30 04:00

■星咲沙夜さん、こんにちは
これからアニメ化という作品。大きくネタバレさせるワケにも行かないのでザックリ無難に纏めてみましたが、大体の雰囲気がつかめる説明は出来たかなーと思っていたので、褒め殺しなコトバには照れちゃいますが、ありがたく頂戴いたします!

>クインザ
逆サイドでの裏ボス的キャラで、あの歪みっぷりには狂気を感じますが、最初から「ルマティ命」って判るつくりでしたから、『花咲ける・・』全体としては、絶対に裏切らない安心こそあれ、驚異的なキャラではなかったなーと。
そういう意味ではリーレンの側近が、敵に回すと一番コワイキャラかな?それにしたって・・・ですしねー(^^)

>ノエイ
敵方としての登場するところからして上手かったですよね。
本質はクインザに近いものの、見事に対照的。私も花鹿に頭を下げるシーンは大好きです。あそこは大笑いしちゃいました。幼い頃から培われた気質はそうそう抜けないですしね。その後の花鹿に対するノエイの接し方がイチイチ面白かったです。

>「OZ」と「八雲・・」
勿体無いですかぁ~。
でも、「OZ」は読みました♪(実は昨日、一日でw)。でもよりオススメは「八雲・・」ってことは、こっちも手を出さなくちゃかなー。
「OZ」の感想も書こうと思ってますが、一気に読みすぎて細かいところに疑問や違和感がたくさん残っているので、考え倒した後にゆっくり・・かな?

>関智さん、石田さん、井上和彦さん
物凄く魅力的なメンツですけど、どんなキャラかわからないしなぁ。
なんであれ、イイコトコばかりが登場するのは変わらないってことですねw

最近思うのだけど、アスランが石田さんだったので奇跡みたいなものかなーって。石田さんがアスランをあのようにしたというか、石田さんでなければアスランはあのようには成長をしなかったような・・・というか。
このドラマCDの配役からも、例えば関智さんがアスランで、石田さんがイザークでもおかしくない感じ。
石田さんがアスランだったから、不安定さが増幅した気がするし、関智さんがイザークだったから、死亡フラグをへしおって(脇にしておくには勿体無い)愛されるキャラが出来上がり、最終的に良い関係を築く結果に至ったのではないかと思うところ。

それはともかく、そのうち「八雲・・」も・・と心が騒ぎ始めました。
有言実行、フットワークの軽さは自負できるもので(逆に言うと、好奇心と欲求の押さえが利かないともいう?)、「そのうち」とは明日かもしれませんがw

>アニメ化
NHKって成功すると2匹目のドジョウを狙う事がよくあるので、「花咲ける・・」が安定した数字を出せば可能性はあるかもしれませんね。


追伸:花鹿とカガリ。
私もそう思ってましたよ!
記事には後でお伺いしますねw

投稿: たいむ(管理人) | 2009/01/30 20:05

動いている絵も見慣れたせいでしょうか違和感なしです。
声もOK。
さすがぴえろさん絵が綺麗です。

投稿: カモミール | 2009/09/04 21:46

■カモミールさん、こんにちは
漫画に比べると年相応に思えるというか、美青年たちもガキっぽさを感じるけれど、概ね文句のないアニメに仕上がってますよねw

投稿: たいむ(管理人) | 2009/09/05 09:41

(≧ヘ≦)アニメの絵が近頃雑に・・・
デッサンもひどい!

長き夜の夜明けは、ユージィンの出生と彼の苦しみ
が。
アニメで、涙が出たのって初めてです。

投稿: カモミール | 2009/10/26 11:58

サブタイトルちゃんと確認すべきでした。
「長き夜の明ける日」でした。

投稿: カモミール | 2009/10/26 12:02

■カモミールさん、こんにちは
昨日放送の作画はギャグに走りってましたし、いろいろな意味でも崩れてるかもしれません。
ま、私はこの作品にほとんど思い入れがないので気にしませんが、花鹿が頭でっかちでバランスが悪く、服が似合っていないのは気になるかなぁ。

>「長き夜の明ける日」
何話でしたっけ?
内容は通じてますし、そのくらいの間違いにつっ込んだりしませんよ(^^)それ以前にサブタイまで覚えてないしw

投稿: たいむ(管理人) | 2009/10/26 20:04

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