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2008/12/08

『3月のライオン(2)』 羽海野 チカ (作)

Lionofmarch_2 【様々な人間が、何かを取り戻していく優しい物語です】と裏表紙にあるとおり、出会いと気付きからゆっくりと癒され成長して行くような、『3月のライオン』は優しくて温かい物語だ。
第1巻は、必要あって15歳でプロの棋士となった現在17歳の”桐山零”と”川本家3姉妹”との出会い~交流、そして零の重苦しい過去が段階的に明かされ、徐々に心を開き始めていた零が描かれていた。第2巻でもコレと言って急激な変化は見られないが、零自身が現在の自分を見つめなおす機会が多くなり、自己分析からは「何故」に留まらず、診断結果を前向きに捉え始めた零に変化していっているように思われた。(以下、若干ネタに触れているのでご注意を)

零がふと呟いた「何処かに行きたい。」という言葉。自分でそう言いながら具体的には「何処」も上げられない零で、「結局自分は何処かに行きたい。のではなく、何処かへ行ってしまいたい。と思っているだけなのだ。」ということを、姉妹の「行きたい願望」を聞きながら思い至る零だった。心の中で逃避するだけだった過去に”気付き”はじめた零なのだろうと思う。今はまだそこまでだけど、”気付き”は前進の第一歩。いずれは零から「○○へ行きたい!」という言葉が出てくるに違いないと思える第1話だった。また、他人とのコミュニケーションが不得意な零だったが、それすら零の思い込みとも言えそうな、そんな明るさも見え始めた2巻に思う。養子ゆえに、それ以前でも多忙な両親に迷惑掛けまいとして喜怒哀楽を極力自制していた零。コミュニケーション下手は押さえ過ぎた感情からの副作用と思われる。正反対にまっすぐ感情をぶつけて来る二階堂くんを鬱陶しく感じ、苦手に思うのは隠れた嫉妬心からかもしれない。二階堂くんは零に無いものを沢山持っているからね。でも、何事にも一生懸命で且つ打たれ強い上にマイペースな彼の思いやりのある人柄に触れ、段々と居心地良さを感じ始めている零に思う。
零も自己分析しているが、零は決してお人好しではない。ただ我を通して周囲と面倒を起こすのが嫌なだけで、だからこそ将棋のような”勝負の世界”に身をおく事を躊躇わなかったし後悔もしていないのだろう。実力が全てでどんな手であれ勝っても負けても後腐れがない。日常では出来ない行動ができる場所で、つまりは悪戯心を起こそうが、いい加減であろうが、誰にも文句は言われないし、迷惑を掛けることもないということだ。跳ね返るとしたら自分にだけだからね。零にとっては様々な”手段の場”が将棋なのだ。なのに「”勝つ理由が無い”とかいいながら、負けると苦しいのは何故だ。」と思う自分に矛盾を感じている零。逆を言えば”手段”と自覚したことで自分を見失い、「理由が無いのに・・」を中途半端(=惰性)と思い込んでしまっていることに気が付かないのかもしれない。”手段”であれなんであれ、誰だって”負けるのは嫌だ”という単純な人間の心理すら見失うってかなり重傷なんだよね。そこを感じとっているのが二階堂くんだ。「”潔い”のと”投げやり”なのは似ているけれど違うんだ!もっと自分を大切にしろ!」とムチャな将棋を指す零に(聞こえないのに)懸命に訴える二階堂くんの(一方的な)友情には泣けるでぇ~ そして、言葉足らずでも零の気持ちを汲み取った、ヒナちゃんの同級生で片想いの君でもある高橋くんだろう。感情豊かになってきた零を素直に喜ぶヒナちゃんの存在も大きい。内側が”通じる”ことに喜びを感じはじめた零。姉妹との交流が随分とリハビリになっているようで”通じ合う”も夢ではなさそうと、こっちも嬉しくなる。
後半、零とはいわく有りそうな義理姉の香子の突然の登場には、折角良い方向へ向かい始めた零を再び突き落とす事になりはしないかとドキドキしてしまうが、動揺は隠せないまでもズルズルと流されることなく、ちょっぴり強くなっていた零を頼もしく感じた。

・・・ネタに触れていると言いながら、あらすじひとつ紹介しないで感想(分析)ばかり。おそらく漫画を読んだ人以外にはサッパリわからない内容と思うが、この漫画は絵(表情)とモノログとコマ割りと、総合して心に染みる作品と思うので、あらすじだけで満足ぜずに読んで見て感じて頂ければ・・という意図が込められていると思って赦して欲しい。シビアな現実を見せつつも、あたたかな雰囲気に包まれたこの作品。興味を持った方は是非1巻から手に取って欲しい。

ところで、4月からのフジTV系深夜アニメ枠”ノイタミナ”が『東のエデン』だと発表された。『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズの神山健治監督のオリジナル作品で、キャラ原案を羽海野先生が担当されるとの事。制作は勿論《Production I.G》。近未来の物語・・とだけで詳細は殆ど明かされていないが、非常に春が待ち遠しくなった。神山監督と羽海野先生は「2nd.GIG オフィシャルLog」での対談以降も交流があったのだろうか?少なからず羽海野作品は神山監督に影響を与えているだろうし、困ったときには”雨”が降るのかな?とか思いつつ、デザイン公開やキャスト等の次なる情報を待ちたいと思う。

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