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2008/11/03

『ナイチンゲールの沈黙(上・下)』 (著)海堂 尊

Naichingeru もはや言わずと知れた風でもある『チーム・バチスタの栄光』の続編、田口・白鳥コンビ第2弾がこの作品。今度の舞台は小児科病棟で、タイトル通り”看護師”が重要な役割を担う物語だ。
『チーム・バチスタの栄光』の文庫化が2007/11月であり、第2弾が2008/9月とは思いの外早い文庫化なのだが、単行本に手を出そうか出すまいかと悩んでいた身としては早々の文庫化は嬉しい限り。このペースならば文庫一色で行きたいところ。ちなみに、出版社が異なる『螺鈿迷宮』の文庫版が11/22に発売される。”桜宮サーガ”として文庫待ち決定かな?

東城大学医学部付属病院内一の歌姫・小児科病棟に勤務する浜田小夜が”ナイチンゲール”だ。網膜芽腫(レティノブラストーマ)を患い、眼球の摘出手術を受ける必要がある牧村瑞人と佐々木アツシ、そして小夜を”真の歌姫”に開花させる切っ掛けとなる歌手の水落冴子とマネージャの城崎がゲスト的登場人物で、牧村瑞人の父親殺害事件が軸となって、田口・白鳥及び病院・警察の両機関、関係者で織り成されるドラマとなっている。
あらすじは省略するが、『ナイチンゲールの沈黙』は推理するまでもなく犯人がほぼ確定されている作品。なのに真実の告白(謎解き)は最後まで引っ張るという推理小説仕立て。それでいて犯人の行動を裏付けるだけのヒントはちゃんと書かれているし、アリバイが逆にそれ以外はあり得ないといった書き方でもあるので、ジャンル的には「推理小説」とは言えないように思う。
「犯人は分かっている。でも何故そのような行為に及んだのか?」・・なのだろうなぁ。ただハマらないピースを求め、釈然としない部分が気になって読み進めてしまう感じ。また白鳥の思わせぶりで秘密の匂いを増幅させているようでもあり、箱を開けてみれば「なーんだ」だったりもするが、田口と白鳥コンビであり、そこに白鳥の旧友(天敵?):加納警視正&玉村警部補コンビが加わったことで、客観的捜査概要や言葉遊びが更に面白くなり、それだけでもイイヤ(^^)となってしまうのがこのシリーズの特徴だろうか。結局、エンタメ的推理小説の形をとってはいるが、その主旨は「医療現場の現実」を判り易く訴えたもので、問題提起がその役割なのだろうと思う次第。

下巻での「解説」にて、このシリーズは刊行順に読むことが奨められていた。私は残念ながら諸事情により『ブラック・ペアン 1988』を最初に読み、続いて『医学のたまご』、そして『チーム・バチスタの栄光』、『ナイチンゲールの沈黙』という順に読んでしまった。幸いなことに『ブラックペアン...』は”シリーズ・ゼロ”の位置づけで大した影響はないと思われ、『医学のたまご』もスピンオフに近いのでこちらも影響はないものを思うが、やはり順に読むほうがより楽しめるものと、これからの方にはオススメしたいと思う。
今回『ナイチンゲール...』に登場していた「佐々木アツシ」が、『医学のたまご』では”スーパー高校生”として登場していたことに気がついたのは「解説」を読んでのことだった。高階”学長”や田口”教授”にはニンマリしたものの、「佐々木」が「アツシ」に結びつかなかったことが非常に悔しい(笑) ”レティノ”や”バッカス”&”シトロン星人”に思った引っかかりのワケがやっと判明した事は嬉しかったが・・・。また『医学のたまご』の主人公である曾根崎薫の母親が、『ジーン・ワルツ』の産婦人科医:曾根崎理恵だという。こちらも無関係ではないと知り、読むのが楽しみだ。やはり伏線的登場人物の重複加減は、京極作品にも近い一連感があり、時の流れがひとつであることを裏付ける面白さがあってとても好きだ。

11/7には、田口・白鳥コンビでの最新刊『イノセント・ゲリラの祝祭』が発売される。今後は刊行順を守るつもりなのでたどり着くまでには時間がかかりそうだが、”桜宮サーガ”として、長く付き合っていけたらと思う。

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コメント

たいむさん、こんにちは!
読まれましたか~
私はこの作品にはかなりガッカリだったんです(笑)
バチスタが凄く好きだった分、ガッカリ感が強かったんだと思いますぅ~
でも!!次々にシリーズに手を出してしまうのは、やはり魅力ある筆致やキャラが立っている点、考えさせられるテーマを配置しているせいでしょうか。
『京極作品にも近い一連感』もいいですよね~(笑)
『イノセント・ゲリラの祝祭』読みたいです!!

投稿: 由香 | 2008/11/04 12:30

■由香さん、こんにちは
読みました~~
由香さんのイマイチ感は記事からよーく伝わってきましたが、つづく「ジェネラル・・」はまた面白そうですねw
文庫本を待ちたいのだけど、読む本がなくなったら図書館でも行こうかなぁ~。なかなか無くならないのだけど(笑)
キャラが立っている小説は、それだけで楽しめるからシリーズ制覇したくなって困ります(爆)

>『京極作品にも近い一連感』もいいですよね~(笑)
由香さんもそう思います???桜宮はせいぜい20年。京極ワールドは百年を超える歴史の中で描かれていますが、見え隠れする影、思わぬ因果関係とかが楽しいですよね!桜宮も壮大なスケールに育ってほしいですねw

投稿: たいむ(管理人) | 2008/11/04 18:08

執筆順に読んでいます。
京極さんでは始めにハコを読んでしまうと言う
うっかりな事になったのでその後は
シリーズ物は順番に、という鉄則を守ります
前作では強烈キャラに驚かされましたが
今回慣れてきたのか、白鳥VS加納で薄まっちゃったかな?
異能な人物が多かったので視点が分散した気もします
次に期待して大人しく文庫を待ってます

投稿: くまんちゅう | 2008/11/04 22:19

■くまんちゅうさん、こんにちは
私も、シリーズものは最初から・・、もしくは作家のデヴュー作から順に、と目指しているのだけど、時々そうもいかない場合があって四苦八苦します。

>白鳥VS加納で薄まっちゃったかな?
強烈なキャラクターが揃うと中和される傾向はありますよね(笑)
傍若無人にしか思えなかった白鳥が、今回は多少殊勝に見えたりしましたから(^^;たぶん気のせいのだろうけどw

「ジェネラル」は、春~初夏くらいに文庫が出てくれると嬉しいですね。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/11/05 20:11

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