アニメギガ(18)~作曲家:川井憲次
第18回目のゲストは、作曲家:川井憲次さん。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』など押井守監督作品に欠かせないのが川井さんの音楽。最近エンドレスで聴いているのが『スカイ・クロラ TheSkyCrawlers』であり、また『精霊の守人』や『機動戦士ガンダム00』等も担当されており、私も数枚のCDを所有するほど耳慣れた作曲家の一人だ。
『スカイクロラ』は”シッチェス・カタロニア国際映画祭”での「最優秀映画音楽賞」を受賞。この作品では象徴的にオルゴール曲が使用されているが、そもそもはオルゴールといえば『イノセンス』だ。
『イノセンス』では、「オルゴールで」という押井監督の発注にシンセサイザーで対応するつもりでいたところ、更に「本物で」と付け加えられてしまい大変苦労されたとのことだった。大型になると盤(ディスク)にあけた穴の配置や大きさ長さで音を作るオルゴール。連続した音が出せない等、様々な制約があると初めて知り愕然。曲を手直ししたもののFAXでのやり取りでは拉致があかず、最終的には長野の製作現場に赴き、試行錯誤する現場の作業に携わったとのこと。何とか完成するものの、今度は収録で一苦労。オルゴールの最高の音を引き出す為の”静かで広くて響く場所”探しで壁にぶち当たる。ようやく”大谷石採石場”にたどり着くが、最後まで一筋縄とは行かなかったようだ。こうしてあの♪THE DALL HOUSE♪は完成したわけだが、押井監督の感想はひと言、「いいんじゃない。」だったそうだ(^^;
もうひとつ印象深い”川井節”が「民謡」と「太鼓」の融合。「コーラス100人」、「作詞は大和ことば」等など、押井監督のむちゃぶりに懸命に応える川井さんだ。まず”ブルガリアン・ボイス”と太鼓の融合という発想から民謡歌手に着目。コーラスは総勢75人、一寸聴いただけでは何を言っているのか判らない大和ことばでの歌詞を捻り出し、(大好きな)地元祭りの神輿太鼓をヒントに工夫を施したバチまで発明して、遂に『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』での♪謡♪が完成する。『イノセンス』では♪傀儡謡 怨恨みて散る♪に応用され”合わせ技一本”だったことは言うまでもないだろう。
実は、特別作曲家を目指していたわけではなかったとのこと。それでも、音楽好きの父親の影響から音楽(特に映画音楽)に触れることが多く、小学生でフォークギターを演奏するなど音楽とは密接な環境で育った事は間違いないようだ。しかし信じられないことに専門的な音楽の勉強は、それこそ業界に入ってからだそうだ。川井憲次、恐るべし。大学時代にはバンドを組み、大会での優勝が切っ掛けとなり、やがて押井監督の目に留まることになるのだが・・・。川井さん曰く、自分の採用は”録音機材の所有及び新人”といった「安価」が第一ポイントだったらしい(押井監督の談話が無いのが残念)。とはいえ、さすがは押井監督。目利きというか見事に掘り出し物を引き当てたってことなのだろうね。
初仕事は『紅い眼鏡』。ひとつ、今だから言える当時の暴露話が披露された。押井監督の要望として「”カルミナ・ブラーナ”(♪おお、運命よ♪)みたいな曲を・・」で貰ったデモテープをうっかり紛失。「失くした」とは言えず、結局朧げな記憶を頼りに仕上げたらしい。それでも出来た曲には(やっぱり)「いいんじゃない?」と押井監督。OKを貰いなんとか事なきを得たとのことだ。確かに♪メイン・タイトル♪はそれっぽい曲に聴こえる。その曲調は「アヴァロン」の♪Log In♪にも感じられ・・というか、以降その曲調が多用されているように思える(^^)(そういえば、『デスノート』はまんま使用されていなかったか?>♪おお、運命よ♪)
以前【アニメギガ】に出演された音楽家:田中公平さんとは親交が深いようだ。田中さんからの談話は、「川井憲次の引き出しは1つしかない。でもそのひとつはとてつもなく深い。」だった。つまりは、川井さんの音楽は特徴が顕著で聴けばすぐに判るけれど(悪く言えば皆同じ)、どれも斬新に聞こえるという、条件含みな高評価といった感じ。川井さん自身、好きな音に偏る傾向は少なからずあると言われており、私も、川井さんの曲にはどれも同じ匂いを感じながらも、でも違うんだな~と思っていただけに大いに納得だ。
音楽からの印象とはかけ離れた、妙に若々しい髪型での登場にはびっくりで、「ならば・・・」ともっと軽くて賑やかな方を想像したが、話を聞けばやはり音楽どおり誠実で、どこか控えめな方と思われ、ますます好感度が上がった次第。昨年は15年ぶりにコンサートを開催された。コンサートの一部が映像で紹介されたが、壮大なスケールの演奏は生で聴きたかった!次回があれば是非参加して見たいものだ。
川井さんにとって”アニメ音楽”は、「自分の気持ちをストレートに盛り込める場所」だそうだ。オリジナルアルバムなどで自己主張するよりも、映像に音を添える仕事が性にあっているようだと言われ、今後もサントラ系(BGM)主体に活動をされるとのこと。
本当に謙虚な方だった。
そして今回は、興味深い内容に加えて、要所要所で話題に挙った川井作品をたっぷり聴かせてくれる、配慮のある番組構成がとても良かった!
次回のゲストは、声優:田中真弓さん。やたっ!!久しぶりにベテラン声優さんの登場でとても嬉しい。私の中の田中さんといえば、まず『天空の城ラピュタ』のパズーだが、『ダッシュ勝平!』以来、ひと声聞けば判る個性的な声優さん。どのようなお話が聞けるのか、う~~すっごい楽しみ!!
放送日時は以下の通り(予定)
2008/12/2 水曜日(火曜深夜)午前0:00∼0:39[BS2]
2008/12/2 水曜日 午後18:00∼18:39[BShi]
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コメント
たいむさん、こんばんは。
今回面白そうな内容ですね。見逃したのが惜しい。
川井さんという方は全く知らなかったのですが、押井監督作品の音楽といえばすぐに思い出す、日本民謡のようでブルガリアン、神秘的でどこか不安定、そんな特徴的な音楽ですよね。
>オルゴール
イノセンスのオルゴールにはそんな逸話があったとは。。。
でも、普通ほんまもんまでは作らせないですし、またその無茶オーダーに応えてしまう川井さんも凄いです(>_<)
投稿: GAKU | 2008/11/12 22:15
■GAKUさん、こんにちは
今回のは見どころ満載!期待以上に面白かったですよー。それにしてもGAKUさんが川井さんをご存じじないとはないとが意外です。
GHOST・・でも、イノセンスでも、楽曲は下手をすると眠くなるものですよね。意図的とは思っていましたが、あのホーミーにも似た波長は、感性で聴く音楽っていうのかな?面白いですよね。
>>オルゴール
イノセンスのオルゴールは「大きなのっぽの古時計」のような形で展示されているようです。でもどこかは分りませんが(^^)
かまやつさんっぽい風貌でギャップを感じさせてくれた川井さん。素敵な方でした(^^)
投稿: たいむ(管理人) | 2008/11/13 19:15