「闇の子供たち」みた。
数多の変態犯罪記事の切り抜きが貼り付けられた壁の真ん中に設置された鏡は、自分の顔を映しだすものであり、自分もその一人であるという戒めの意味が込められたものだろうか。同時に、見た(観た)者に対しての、これは決して雲の向こうの話ではないという、メッセージも込められているのかもしれない。しれっと味方のような隣人が・・なんてね。
ドキュメンタリーではないが、匹敵するほどの衝撃的な作品だった。
原作があると知って少しホッとした。人身売買・幼児売買春・違法な臓器移植の実態の、どこまでが本当でどこまでが演出なのかが分からないところにはやや救われた。このすべてが事実というのはあまりに酷すぎる。勿論「そんな馬鹿な!信じられない。」などと言うつもりはないし、近からず遠からずなものとは想像する。それでも”映画だから”と正面切って見せ付けられる事実がとても痛かった。実際にあんなことがある、させられるのだと痛感してしまうから。一も二も知らないいたいけな子供たちに科せられる悪業非道な仕打ち。彼らは何も悪くないというのに・・・。
もはや悪しき慣習のような常習化した根深い社会的な大問題。臓器売買の場合は末端では抜き差しならない事情を抱える人達が関与している場合も少なからずある。藁をもすがる思いの確信犯に倫理や道徳を説いたところでどうして覆せようか。「こんなことが必要悪であってたまるか!」なのだけど天秤は強き者(金のある者)へと傾いてしまうのはおそらく必然。富める国と貧しき国がある限り、負の連鎖はとまらないのだろう。本来憎むべきは、他人の弱みに付け込んで甘い汁だけをすすろうとする輩たち。自らの性癖から快楽を満たす為だけに命を弄ぶ外道たちだ。この場合言葉が適切ではないかもしれないが、世界の全ては需要と供給で成り立っている。尊きものほど商売になる。私たちは世の中の裏と表、事に闇の部分の真実をもっと良く知らなければならないようだ。
感情の土俵ではどうにもならない問題ではあるけれど、人間の良心と本気の感情だけが、行動に移せる最後の砦になるという結末が描かれていたこの作品。仕組みを作るのも壊すのも人間にしかできないことを、まず知るべきなのかもしれない。
出来ることなら私としては、南部がその眼で見た事実でどんな記事を書くのか知りたかった。映画はその前に壊れてしまった南部で〆られてしまったけれど。
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» 『闇の子供たち』 [ラムの大通り]
「ときどきフォーン相手に喋るのが
躊躇われる映画に出くわすことがある。
梁石日の原作を映画化したこの阪本順治の新作は
タイを舞台に人身売買、幼児売春という
ショッキングな題材を扱ったもの。
タイ駐在の新聞記者・南部裕行(江口洋介)が、
若いフリーカメラマン、与田博明(妻夫木聡)の協力を得て
闇ルートで取引されているという臓器の密売に関する取材を開始。
一方、理想を胸に秘めてバンコクのNGO団体に加入した音羽恵子(宮?あおい)も
その悲惨な現実を目の当たりにしていく。
エイズに冒された少女のアッ... [続きを読む]
受信: 2008/10/08 22:37
» 『闇の子供たち』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「闇の子供たち」□監督・脚本 阪本順治 □原作 梁石日 □キャスト 江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、プライマー・ラッチャタ、プラパドン・スワンバン 、佐藤浩市、鈴木砂羽、豊原功補、塩見三省、三浦誠己■鑑賞日 8月10日(日)■劇場 109CINEMAS川崎■cyazの満足度 ★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>
タイで横行している幼児売春や人身売買、更に日本を含む臓器密売等、硬派の阪本監督の鋭い切り口が期待できる作品と前評判で聞いていた。 しかしながら、人身売買や臓器... [続きを読む]
受信: 2008/10/08 22:54
» 【闇の子供たち】 [日々のつぶやき]
監督:阪本順治
出演:江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、佐藤浩市
「タイ在住の新聞記者の南部は、日本の子供の腎臓移植の実情を調べ始めた。するとタイの子供の臓器が生きたまま摘出されるという情報を掴みフリーカメラマンの与田を連れ更に突っ込んだ取材を開始す... [続きを読む]
受信: 2008/10/09 09:32
» 闇の子供たち [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
『値札のついた命』
コチラの「闇の子供たち」は、「月はどっちに出ている」や「血と骨」の原作者梁石日の同名小説を「顔」や「カメレオン」の阪本順治監督が脚本も手掛けた8/2公開の衝撃作なのですが、観て来ちゃいましたぁ〜♪阪本監督の舞台挨拶もあったのですが、...... [続きを読む]
受信: 2008/10/09 22:07
» 闇の子供たち・・・・・評価額1650円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
熱帯のスラムの淀み湿った空気が、スクリーンを通して客席にも漂ってきそうだ。
幼児の臓器売買、買春というおぞましい現実を描いた梁石日の... [続きを読む]
受信: 2008/10/10 00:15
» 『闇の子供たち』 [めでぃあみっくす]
衝撃作。それ以外にこの映画を評する言葉が見当たらないくらいの衝撃作でした。微笑みの国と言われているタイの笑顔は大半が悲しい作り笑いだったのかと思ってしまうくらいに恐ろしいまでの児童売春や臓器売買、そしてそれに絡む日本人を始めとする外国人たち。これが事実で....... [続きを読む]
受信: 2008/10/10 22:13
» 闇の子供たち 初日は阪本順治監督の舞台挨拶がありました! [銅版画制作の日々]
アジアの現実を直視することが、今の私たちには必要なことではないか?
8月23日、京都シネマにて鑑賞。実はこの日は、キム・キドク監督の「ブレス」だけ鑑賞する予定だった。この日の京都シネマはいつになく、物々しさを感じた。人が多いのも一つあったが、明らかに「ブレス」を鑑賞する人たちではない。実は観客の多くは、「闇の子供たち」を鑑賞する人だった。初めは何で?と・・・・・。そうだ!この映画初日に監督、阪本順治さんの舞台挨拶があることを思い出した。そうなれば絶対鑑賞せねば... [続きを読む]
受信: 2008/10/10 23:05
» 闇の子供たち [to Heart]
値札のついた命
製作年度 2008年
上映時間 138分
原作 梁石日 『闇の子供たち』(幻冬舎文庫刊)
監督 阪本順治
音楽 岩代太郎
出演 江口洋介/宮崎あおい/妻夫木聡/豊原功補/鈴木砂羽/塩見三省/佐藤浩市
{/book_mov/}日本新聞社のバンコク支局駐在の南部(江口洋介)は、東京本社からタイの臓器密売の調査を依頼される。同じころ、恵子(宮崎あおい)はボランティアとしてバンコクの社会福祉センターに到着する。彼女は所長から、最近顔を見せなくなったスラム街出身の少女の話を聞くが、実は彼... [続きを読む]
受信: 2008/10/12 01:05
» 「闇の子供たち」格差社会における深い闇の世界を映した真実であり現実 [オールマイティにコメンテート]
「闇の子供たち」(PG-12指定)は東南アジアのタイを舞台にした生きたままの子供を臓器売買で売られていく現実を刻銘に描いた衝撃的な内容である。実際に行われている児童売春並びに臓器売買の現実を知る事になる社会派作品として注目されているだけに見逃せない事実を観る事に...... [続きを読む]
受信: 2008/10/13 00:47
» 【映画】闇の子供たち [新!やさぐれ日記]
▼動機
観ておかないと後悔しそうな映画だったので
▼感想
連鎖を断ち切る勇気はいったい誰が持つべきなのか
▼満足度
★★★★★☆☆ なかなか
▼あらすじ
日本新聞社のバンコク支局駐在の南部(江口洋介)は、東京本社からタイの臓器密売の調査を依頼される。同じころ、恵子(宮崎あおい)はボランティアとしてバンコクの社会福祉センターに到着する。彼女は所長から、最近顔を見せなくなったスラム街出身の少女の話を聞くが、実は彼女は父親に児童性愛者相手の売春宿に売り飛ばされていた。
▼コメント
”... [続きを読む]
受信: 2008/10/21 21:24
» 闇の子供たち■ラストのすべてが語られている! [映画と出会う・世界が変わる]
この映画はまず作られただけでも評価に値するというべきであろう。いわゆる社会派であるが、決して正義というものが勝つという結末ではない。また、勝つまでの道筋も見えてこない。それは「ダーウィンの悪夢」や「いのちの食べ方」を見たときの感想と同じである。この映画...... [続きを読む]
受信: 2008/10/24 08:43
» 映画 【闇の子供たち】 [ミチの雑記帳]
映画館にて「闇の子供たち」
梁石日原作の小説を阪本順治監督が映画化。
おはなし:タイ・バンコクの支局で働く新聞記者、南部浩行(江口洋介)は、タイ闇ルートで行われている子供の生体臓器移植の取材を始める。その過程でフリーカメラマンの与田(妻夫木聡)、NGO職員の音羽恵子(宮崎あおい)らと出会い、協力して調べを進めていくが・・・。
胸が塞がれてなんともいえず重い気分になるのに、一瞬たりともスクリーンから目が離せない、いや、目を離してはいけないという気にさせるドラマでした。
テーマは重いです。幼児... [続きを読む]
受信: 2008/11/06 23:50
コメント
とても重く、痛々しくやり切れない場面も多かったのですが、見てよかったと思える映画です。
どこまでが真実でどの部分がフィクションかは解らないですが、現実にこういうこともあるのかもしれない・・本当にどうにかしたいと思いますね。
南部のことは、私は全然気付かずに見ていたので、ラストは本当にショックでした。
投稿: hito | 2008/10/09 09:34
こんばんは。
>自分の顔を映しだすものであり、自分もその一人である事という戒めの意味が込められたものだろうか。
そこまで自戒していながら、
でも、自らの性癖は変えられない。
人間の業、そして欲。
今年観た日本の映画の中でも、
ココロに重くのしかかったという点では
『トウキョウソナタ』と双璧でした。
投稿: えい | 2008/10/09 20:22
■hitoさん、こんにちは
とても理不尽なことですよね。
何故そんなことになるのか、いろいろ考えてみましたが、全てを同時に断ち切らない限り終わらない現象のように思われます。様々な要因が折り重なって完成された悪魔の構図なだけにとても難しい事ですね。
せめて目の前の悲劇だけでも回避しなくては・・という思いは偽善にも思えるけれど、正解なのかもしれないと思えてしまいます。残念ながら・・・
投稿: たいむ(管理人) | 2008/10/09 20:26
■えいさん、こんにちは
>人間の業、そして欲。
まったくです。それなくして人間ではないのかもしれませんが。
そもそも諸悪の根源がループしているし、異なる性質のものが入り乱れている状態。なんら解決策が見いだせないのが悔しいです。
そういいながら自由な生活を送る私でしかない。心に重くのしかかるのは後ろめたさからかもしれません。
投稿: たいむ(管理人) | 2008/10/09 20:44
あのラストの鏡のシーンは強烈でしたね。
それまでどこか自分にはまだ関係ない話と思っていたものが、あのシーンで崩壊。
いつ、何かのきっかけで南部のようになりますよ!と言われているみたいで、凄い恐怖感も感じましたよ。
投稿: にゃむばなな | 2008/10/10 22:12
■にゃむばななさん、こんにちは
>何かのきっかけで南部のようになりますよ!
いくらなんでも「南部」にはならないでしょう(笑)・・というのは冗談として、容疑や罪状はともかくとしても、犯罪者の仲間入りの可能性は示唆されていますよね。戒めとしても記憶にとどめたいカットですよね。
しかし、あの手法は何かの作品のパクリです。未だにタイトルが思い出せないのだけど・・・・
投稿: たいむ(管理人) | 2008/10/10 22:25
たいむさん
今晩は★☆
TBありがとうございました。人身売買、幼児の売買も
本当にあるそうです。映画の中でも、旅行かばんに
少女が入れられていたシーンがありましたが、実際に
あるようです。時に大人も入れられるケースも。
信じられませんが、実際タイの研修ツアーをされている
職場の人から聞きました。もうひとつ驚くべきことは
日本人がその買春ツアーに最も多く参加しているという
悲しい事実です。その中ではべトファイル(幼児性愛者)という人もかなり存在しているようで・・・。
存在しないのは唯一臓器売買だけ?ということです。
信じられない現状がタイでは本当にあるんですね。
投稿: mezzotint | 2008/10/10 23:32
■mezzotintさん、こんにちは
コメントありがとうございます。
タイや他の地域での日本人の関与は以前から言われていることで、貧富の差がもたらす横暴と悲劇がただただ嘆かわしく、かといって何もできない無力さを痛感するところです。
さすがに臓器売買はありませんか(ほっ)
けれど、腎臓など命にかかわらない臓器の提供はあるとかないとか聞いたことがあります。闇はどこまでも深そうで、正直、事実を知るのが怖いくらいです。
投稿: たいむ(管理人) | 2008/10/11 13:07
こんばんは!
知ったところで、何か出来るわけじゃない・・かも知れない。
でも、見て知って、世界が監視している事を伝えるのも
また自由な社会に生きる者の勤めかもしれないですね。
この作品が一流の日本人キャストによって制作され、日本人に向けて
日本で公開されることに大きな意味があると思います。
出演された全ての俳優に拍手を贈りたいです~。
投稿: kira | 2008/10/12 01:20
■kiraさん、こんにちは
>見て知って、世界が監視している事を伝える
そうかもしれません。知らない事も時には罪。知るために為に戦うジャーナリズムでもありますしね。
暗くて重いテーマは敬遠されがちなのですけど、映画館は盛況でした。限られた地域でしかないけれど良い傾向ですよね。
投稿: たいむ(管理人) | 2008/10/12 16:52
こんばんは♪
おお、たいむさんのところは早くに公開されていたんですね。
今月一番見たかった作品です。
有名俳優が出ていることを除けば、まるでドキュメンタリーを見ているような錯覚に捉われることもありました。
あまりに根は深く複雑で根絶なんて出来ないって無力感にとらわれてしまうの。
どんなことをしてもわが子の命を助けたいと願う夫婦の気持ちも分かってしまうだけに辛い・・・。
あと、気になったのはNGOにもいろいろあって決して一枚岩ではないことかな。
人に手を差し伸べるって本当に難しいことなのでしょうね。
投稿: ミチ | 2008/11/06 23:55
■ミチさん、こんにちは
めずらしく早めに上映してくれて嬉しかったです。しかもシネコン。有名俳優そろい踏みだからかしらね~(^^;
「ダーウィンの悪夢」がややトラウマになってますが、ドキュメンタリーさながらなこの作品も、見ていてツライものがありました。私も同じくグルグルです。親の気持ちだけなんとも言い難い部分がありますが、だからといって諦めろとは言えないですし非常に難しい。倫理だ道徳だの一線をいとも簡単に越えさせるモノが「親の愛情」なのかなと思うところです。
>人に手を差し伸べるって本当に難しいことなのでしょうね
あおいちゃんの役どころも微妙。共感しきれない部分もありました。いずれにしても生半可な気持で携われるものではない、ということかな?
残念ながら、今の私には覚悟がありませんから(^^;
投稿: たいむ(管理人) | 2008/11/07 18:59
教えて下さい
遅ればせながら、今日観てきました
ずしりと重い映画で、いまだに頭から離れません
一人で観にいったために、いくつかの疑問をもみほぐしたり、感想を共有したりすることができないでいます
疑問1.南部さんの住まいにあった男の子の写真は誰ですか?
疑問2.南部さんの部屋の鏡に隠されていた、おびただしい新聞記事の中に、何か重大なものが隠されていたのでしょうか?
疑問3.南部さんは・・・???黒いロープは・・まさか???
このような場所で聞くことではなく観た人のそれぞれの感じ方にゆだねられているのかもしれないのですが
映画を観た方のそれぞれの感じ方を知りたいです
よろしくお願いいたします
投稿: しん | 2008/11/18 00:16
■しんさん、こんにちは
色々と疑問をお持ちのようですが、疑問のなかで明確な答えがありそうなのは3番目だけではないでしょうか?ロープはお察しの通りの事と私は解釈しています。けれど1つ目、2つ目の疑問をしんさん自身はどのようにお考えでしょうか?察するところがあるならば、きっとその通りではないかと思いますし、私はそれで良いと思いますよ。
もし明確な答えが欲しいのであれば、より多くのブログ記事を閲覧なさり、納得のゆく考察を探されるのが良いと思いますよ。そしてもう一度映画を鑑賞されることをお勧めします。
投稿: たいむ(管理人) | 2008/11/18 18:19
たいむさま
コメントをどうもありがとうございました
二日経ってもいろんなシーンが頭から離れずにいます・・・
本当に衝撃的な映画でした
写真の少年が誰なのかは全然察するところもなく、ただわからないのです
やはり、もう1度観た方がいいのかな
本を読むのもいいのかな
(本だと映画と内容が違うのでしょう)
投稿: しん | 2008/11/19 20:02
■しんさん、こんにちは
>写真の少年が誰なのかは
話の流れを考えれば、どこかの誰かなのでしょう。どうして一緒にいたのかは、買ったのか連れ去ったのか・・・そこまでは分りませんが。
もう一度見るのはちょっとキツイ作品ですよね。
でも、気になるならば見るのが一番かもしれません。
投稿: たいむ(管理人) | 2008/11/20 17:25
いまさらですが観てきました。。。
周りの評とか、映画の重さとかで、
ずっと躊躇していましたが、DVDになったら絶対見ないだろうと思ったのです。
観終わったあと、せめて劇場で観てよかったとおもいました。劇場で観ることくらいしか、自分にはできることがないですから。
投稿: mariyon | 2009/01/25 11:47
■mariyonさん、こんにちは
映画館でなければ見ないかもしれない・・・って解る気がします。DVDでは私もまず借りないかなー。TV放送なら見るかもしれないけれど。
>劇場で観ることくらいしか、自分にはできることがない
そうなんですよね。戦争モノもこうしたモノも、知るだけで精いっぱい。それすら偽善的だけど(^^;
投稿: たいむ(管理人) | 2009/01/25 16:58