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2008/10/29

『3月のライオン(1)』 羽海野 チカ (作)

Lionofmarch 『ハチミツとクローバー』の羽海野 チカ 先生の新作が『3月のライオン』。『ハチクロ』最終巻に予告編があり、2月の単行本発売以来ずっと気にはしていたものの取り合えずは様子見していた作品。しかし6月に放送された「BSマンガ夜話(第34弾)」での『ハチクロ』の回に、あの、いしかわじゅんさんが絶賛していたことから、再びスイッチが入り、読める機会を待っていてた。
☆主人公は桐山零。若干15歳にしてプロの棋士の資格を獲得した、世間的に見れば前途洋洋・順風満帆な天才少年だ。しかし当人にしてみれば、将棋は何もかもを失った零に残された唯一の拠り所でしかない☆
映画は、1本の中で3度泣かせることが出来る作品はヒットするという。『3月のライオン』第1巻で私は3回泣いた。(正確に言えば4回。3回目と4回目は別の話なのに泣き続けていたから) 1冊の漫画で何度も泣ける、でもとても温かな物語が『3月のライオン』。絶賛に値する作品として納得だ。

ある日突然自分以外の家族(両親と妹)を一遍になくす零。親戚の中に小学3年生の零を引き取ろうという者はおらず、零は己の境遇を察し、悲しみと絶望にただ耐えていた。最後に零を救ったのは”将棋”だ。もともと将棋は多忙な父親に構って貰う為に始めたもの。特別好きだったわけじゃない。でも父との大切な時間の為に頑張った。また、たまに訪れる父の友人に棋士が居た。遅れた父の変わりに相手を努めた時、零を対等に扱うその人の応対を嬉しく思い、零の中で特別な人となった。
特別な人は、葬儀の席で零に言う。「君は、将棋 好きか?」
堰が切れたように泣き出し、「・・・ はい」と答える零。
嘘だけど、自分の身の振り方がその答えで決まると察した零の、理性と本能の両方がそう言わせていた。神様との契約。以来、”将棋”が零の命綱となった。
零は棋士の家に”内弟子”として引き取られた。親方の家には4つ年上の娘と同じ年の息子が居てやはり将棋をしていた。しかし、将棋しかない零が努力すればするほどに実力が歴然とし始め、実子たちとの確執が生まれ始める。彼らは師匠として分け隔ての無い父親に苛立ち、反発を募らせる。そうした怒りの矛先は当然零にも向けられた。屈辱と嫉妬から、歪む弟と憎悪をたぎらせて容赦のない言葉と態度で零を傷つける姉だ。

・・以上のような暗く思い過去を背負っている若干17歳の少年が桐山零五段。
現在はプロになったことで自立して1人暮らしをはじめ、”高校生”という2足目のわらじを履いている。しかし、元来のコミュニケーションベタから、学校では友達が出来ず作らず、なのだか。。。
1巻は、現在の日常生活と、零の過去が回想のような形で段階的に明かされるつくりになっている。・・・が、『3月のライオン』は、そんなジメジメしただけの物語ではない。零が近所に住む3姉妹と出会い交流することで、互いに癒し癒されながら成長して行くという、あたたかくて優しい物語でもある。
昼は姉妹の母親代わり、夜は銀座のホステスという2つの顔を持つ長女のあかり、中学生のひなた、幼稚園児のモモの3姉妹。零と同じように彼女たちにも両親は居ない(詳細は今のところ不明)。祖父が近所で和菓子屋を営んでいるが、姉妹は独立してあかりが家を仕切っている。零と3姉妹との出会いの切っ掛けは銀座。零が先輩棋士に無理やり飲まされ、ぐったりしているところをあかりに拾われたのだった。零をそのまま自宅に連れ帰り、介抱するあかりと姉妹。あたたかい待遇に慣れず戸惑うばかりの零だったが、次第に姉妹に打ち解けていく。また3姉妹にも触れたくない過去があり、現在には現在の等身大な悩みがある。零と3姉妹の、様々なモノを見え隠れさせながら、時には交差しながら物語は進んでいく。変わっていくモノと変わらないモノ。色々なものが溶けて混ざり合って新しい何かに育っていくような、そんなお話が綴られている、とても素敵なストーリー。
シリアスになり勝ちなテーマなのだが、お茶目な動物たちが場を癒してくれるのが愉しく、ドタバタ風エピなどでも巧く緩急が付けられており、見事と思う。また、時折”Chaptre”の合間に入る”将棋監修”の先崎学八段による”ライオン将棋コラム①~④”は、解説に留まらない面白くも興味深い内容でひと休みさせてくれる。ほか”Chaptre”の表紙が独立した連載になっている等のお遊びも満載。更に巻末のオマケ(作者の)ページがまた楽しい。1巻では特に”新連載の予告カット”での失敗?談に吹き出した。「よその”とーちゃん”」が誰なのか分かるばかりに大爆笑。本編ラストで大泣きしたばかりだというのに余韻もヘッタクレもかっさらってくれてありがとう!だった

11/28には第2巻が発売になるが、まだまだこれからの作品。この機会に1巻、2巻と手にとってはいかが?とオススメしたい1作となった。

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コメント

たいむさん、こんばんわ♪
これ『ハチクロ』が終わってから気になってるもののスルーしてたんですよ。
つい最近、ネットカフェ行ったときも存在はわかってたんですが『スキップ・ビート』最新刊と『7SEEDS』を手に取ってしまったんですよね。
次回はこれ読んでみますわ。

投稿: エミ | 2008/10/30 22:54

■エミさん、こんにちは
次回はぜひ読んでくださいませ!
「ハチクロ」よりも、年齢は下がってますけど、全然そんなことないですから!!
私もずっとスルーしていたのだけど、もっと早く読めば良かったって思ってますから(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2008/10/31 18:03

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