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2008/09/20

『20世紀少年&21世紀少年』を読んで。

21th_boys 映画『20世紀少年-第1章』を観てからおもわず大人買い。悩んだ末、結局3部作を見届ける前に手をつけてしまった原作本。率直な感想として、映画はストーリーこそ原作に忠実で同じだが、若干構成やアプローチが異なっているため、どちらも新鮮な感覚で楽しめる作品になっていると思えた。
途中までとはいえ流石に一度読んだ原作と、思い出す部分もいくらかあったけれど、「第1章」で省かれていても全く気がつかなかったところの補完ができて良かった。それでも「もう少しオッチョの内面も・・」と物足りなく思った感覚が正しかったのが嬉しい。(オッチョに限らずであり、やはり浦沢作品の人物描写は秀逸なのだよね)。そして極め付け、「いくらなんでもバレバレじゃない?」・・が正解だったこともちょっと嬉しい。(とはいえ、・・であり、もうひと捻りであり、それこそ・・なのだけどw) 
※以下、ネタばれらしいネタばれはなし。ただし、ヒントらしきものはあるかも?

この作品は「難解」とか言われているようだけど、私はそれほどではない思う。言葉のない心理描写だって一目瞭然でしょう?浦沢氏の秀でた画力で描かれた表情はすべてを物語ってくれるから。絵に説得力があるから凝縮されたワンカットでも納得できると、少なくとも私は思っている。
完全無欠で正義の味方はどこにもいない。誰しも過去のあやまちを心の底に抱え、悔いてもがいて苦しんで、必死にあがいている人間ばかりが登場するのが浦沢作品。そして何かを切っ掛けで出会った人々との交流から気づきを齎らされ、想いを交錯させながら”心の澱”を少しずつ吐きだしてくキャラたちの描写に定評があるのが浦沢作品。少しでも注目された人物には、必ず大なり小なりそうした人生ドラマがあることと、人間模様が複雑に入り組んで混沌とはするが、いつも”世の中は広いようで狭い”といった構造は、ほとんど”ルール”になっている。そこを抑えておくと様々な予測はそれほど難しく無かったりする。(といいつつ、約束の範疇ならばどんどん裏切ってくれるから、あっと驚かされる場合も少なくないけれど。)
原作も映画も、読者や観客に対して”フェア”な作品で、ヒントやポイント・伏線となるエピソードやアイテムがきっちり盛り込まれている。ずっと明かされないヒミツはあっても、明後日の空中から持ち出されたかのインチキや魔法の類は登場しない。巧みなミスリードによって素直に誘導されガチだが、何もかもを鵜呑みにしなければ可能性が見えるようにちゃんとできている。『探偵ガリレオ』ではないが、”すべての現象にはかならず理由がある”もちゃんと守られていて、種明かしも必ずしてくれる。まぁ、強いて言えばカンナの能力は”切り札”的に発動するから反則気味だけど、能力の存在は明かされているでのギリギリ許容範囲としたいところ。

子供の頃の記憶を手繰って最悪を回避しようと試みるのがこの物語で、”記憶の違い”もしくは”記憶の改ざん”、”都市伝説”的な眉唾話に翻弄されるのがこの物語の秀逸なところ。物語的には違和感を違和感として心にとめて置くのがコツだけど、もっとも重要で罪なのが”忘却”だと身につまされるのがこの作品だと思った。時間は不可逆なもの。当然「もしも・・」はありえず、過去も変えられない。結果として「悔いのない生き方を・・」というのが『21世紀少年』のラストになった。希望のあるエンディングは大好きだからこれで良かったと思う。最終的な”ともだち”の正体には少し疑問が残るけど、『MONSTER』とは違って間違いなく終わったのだと思えるし、私は納得できた。

大人買いからほぼ一気読みしたわけだが、結論から言うと『20世紀少年』は、あまり一気読みには適した作品ではないように思った。その為(壮大なストーリーもあるが)3部作としてひと区切りごとに時間を開ける映画の作り方は正解だと思った。
基本的なところでは、映画とストーリーを純粋に楽みたいと思うのならば、最後まで原作を読まない方が楽しめるのは言うまでもないし、読んだことで2度と味わえない初見の新鮮味が損なわれるのは勿体ない事。またそれ以前に、原作は完結までに8年の歳月を費やしている。「忘れているくらいが丁度良い・・」というのは、何も”映画を見るにあたって”というだけの話では無いようだ。そして、上で書いたとおり、謎解きに必要なアイテムや主要な登場人物は必ずどこかで目にしていて、注意深く見ていれば答えは案外難しくはない。特に映画はそれらが強調されているから分かりやすくなっている。しかもこの先は急転直下の連続。映像でどこまで再現できるか・・に全てが掛っている「第2章」「第3章」かもしれない。だから「第1章」を見て、同じように原作に手を出そうと考えている人がいるならば、「ちょっと待った!」と一声かけたい。
・・でも、読まない方が良い、とは言わない。逆を言えば脳内補完ができてこそ愉しめる「第2章」「第3章」になる可能性があるし、分り難さは一気読みすることでカナリ軽減される。原作に何を求めているのか、あるいは作品の何に重点を置きたいのかを良く検討してた上で決断して欲しいと思う。読んでから「読まなければ良かった」だけは聞きたくないし。
ちなみに読んでしまった私としては、最初から2回目のような鑑賞のできる「第2章」を楽しみに思う気持ちを新たにした、かな?(^^) 参考になったでしょうか?

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コメント

おお〜。大人買い!いい響きだ…(´▽`)
私はこれ、借りて読んでたクチなのでぶっちゃけた話あらすじ以外ほとんど忘れたという幸せな状態です。(単に年のせいという説も)たぶんレンタルで見ることになりそう。

ところで私はまさに彼らの世代なんですが、最初のアニメ世代であると同時にTVのヒーローたちを通じて『正義』の定義が大きく変化するのを見てきたわけです。

つまり勧善懲悪当たり前から、悪側ながらも事情のある者が描かれるようになり、次には悪にも悪なりの根拠が描かれ、さらに悪とされていた者が悪ではなかったという展開、そしていまや“勝てば官軍”の諺通り互いに正義がある…というリアルな立場の描き方も普通にありますよね。

いや、何を言いたいかと言いますと、この作品ってその“正義の崩壊”を描いてたと思うんですが、今の若い人のように最初からど〜んと“正義とはなんぞや”という命題をつきつけられてきた人は私らよりもショックがかなり少ないのではないかと…
だから難解(世界観がついてけなくて)だと言われてたりして?
長々とスミマセン、いつも。

投稿: よろ川長TOM | 2008/09/20 15:09

■よろ川長TOMさん、こんにちはsun
レンタルなら全完の後かしら?とすると、再来年???(笑)

まさしく言い得て妙なり!ですね(^^)
私はちょうどファーストガンダム世代。多感な年頃にさしかかったときに「ジオンの言い分」を聞かされ、「連邦の傲慢」を見せつけられたクチですが、勧善懲悪ヒーローヒロインで育ったのも間違いなし。善悪と敵味方、正義についての変遷は見てきた世代ですね。
最近の子供は最初から「混沌」を見せられ「正義」の定義を問われているといえば、確かにそうかもしれません。昔の子供より全然何もできない子供なのに、ヘンなところが大人なんですよね。困ったことに。
イジメが陰湿化し、ガキ大将がいなくなった今、世界観についていけないのは至極もっともなことかもしれません。でも、それが難解と片付けてしまうって、なんだか哀しいかも、です(><)

参考になるご意見、いつも感謝していますよ(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2008/09/20 17:21

おいらは、コツコツと読ませていただきました。
途中で、話を戻さないと分からなくなる場面もあったりしました。coldsweats01
主人公もカンナに変わるのかと思いきや・・・。(笑)
漫画よりも映画のほうが見た目も分かりやすいかもsign02

大人買いを行なったのは、「三国志」sign01
さすがに一気には読めませんでした。bearing

投稿: Brian | 2008/09/21 06:58

■Brianさん、こんにちはsun
そういえば、Brianさんのところで「21世紀少年」の存在を知ったのでしたねー
交換関係や内容にトリック、犯人も忘れていくるらいがちょうど良いので映画でのおさらいは良いかもしれません。

>大人買いを行なったのは、「三国志」
なんと膨大な!それは一気は無理ですね(^^;
ちなみに私は吉川版の小説を大人買いしました(^^;

投稿: たいむ(管理人) | 2008/09/21 10:30

まいどどうもです
この作品を大人買いとは素晴らしい。
一気読みに適していないは感じました、
でも連載では続きが気になって仕方なさそうですよね
映画1章を見る前に全部読んだので、初見の楽しみは原作で終わっています。
あとは映画の2~3賞を待つだけです。

投稿: くまんちゅう | 2008/09/21 15:24

こんばんは!!ついに読んでしまいましたね~(笑)
映画はよく言えば原作よりわかりやすくできてますよね。
2章でのバーチャル体験をどう描くのか?
そこはかとなく哲学漂う結末を・かえてくるのか??
きになるところですね。
「忘れているくらいが丁度良い・・」ということで
2章も映画を見終わってから読もっ♪と思っております(笑)

投稿: くろねこ | 2008/09/23 00:38

■くまんちゅうさん、こんにちはsun
一気読みはややチープな印象になってしまうかもしれませんね。
連載待ちは、まさに待ち遠しいですけど、現在「PLUTO」で1年前後に1冊ペースで読んでいますが、発売のつど遡ってパラ読みする楽しさはあります。それすらネライのような、浦沢作品はやっぱり素晴らしいと思います。

映画の続きが楽しみですね!


■くろねこさん、こんにちはsun
ええ、読んでしまいましたよ。
でも、映画に失望することはないと、願望も含めて確信しています。楽しみですね(^^)

>2章でのバーチャル体験をどう描くのか?
>そこはかとなく哲学漂う結末を・かえてくるのか??
バーチャルは問題ないかと思うけれど、哲学的なところはある程度緩和するのではないかと想像。
なんたって映画は超エンタメ作品ですから(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2008/09/23 10:03

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