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2008/08/05

『PLUTO -鉄腕アトム「地上最大のロボット」より 』 6巻

Pluto 豪華版から半月遅れで待望の通常版6巻が発売。雑誌を読んでいない者にとっては、ご飯を目の前にお預けをくらっているワンコのような半月だった。
6巻はついに「プルートゥ」を取り巻く謎が明らかとなる。プルートゥと接触するゲジヒト。そして・・・・・。
6巻も、美しくも切ないドラマが繰り広げられている。きっと誰もが涙を誘われることだろう。
8月に実写映画が公開される『20世紀少年』も良いが、こちらも秀作!(以下ネタばれを含んでいるのでご注意ください)

エプシロンからゲジヒトに転送されたデータは、花畑に埋もれて穏やな微笑みをたたえた青年の画像だった。手がかりを求め、ゲジヒトはペルシアでアブラー博士に接触。博士が何かしら隠していることを察するが、博士からはそれ以上得られることはなかった。しかし、花売りロボットから”花畑の男”の情報を掴み、一路オランダへ。そこでついに”花畑の男”=”サハド”=”プルートゥ”という決定的な真実に行き当たる。そしてヘラクレスとの戦いで傷を癒すために戻っていたプルートゥと、漸く対峙するゲジヒトだ。
ゲジヒトと別れた後アブラー博士は、エプシロンやホフマン博士に接触し、不可解な言動を繰り返していた。そして直後に命を狙われるホフマン博士。ちょうど同じ頃プルートゥに接触していたゲジヒトであり、戻るに戻れない状況の中、両方の出来事をリンクさせることで全てを悟るゲジヒト。プルートゥの事、プルートゥを操る黒幕の事、夢をみる自分と過去の記憶。プルートゥの破壊命令を拒絶し、己が罪を償うと言うゲジヒトだった。
その瞬間はすぐにやってきた。あっけない幕切れ。
・・・最後の最期の瞬間を迎えるまでの、ゲジヒトの感情に溢れたほとんど人間らしい言動、あるいは妻との対話の描写がとても素晴らしかった。そして、遺言のようになってしまった日本旅行へ赴くゲジヒトの妻と、天馬博士に促されて「本当の涙」を流す妻の姿には、おそらく胸を詰まらせない読者はいないのではなかろうか。そのくらいに秀逸。
このシーンは「どのカットから妻の涙を描き入れるか」で、浦沢・長崎両氏で繰り返し意見交換をし、納得が行くまで何度も書き直しをしたとのことだった。(2007/11/6放送:NHK:プロフェッショナル「長崎尚志」時に語られていた思う)。やっとそのシーンに行き着いた6巻。”涙の描き方”のこだわりは私の記憶に残っていたが、それとは無関係にちゃんと彼らの思惑どおりに感情を高ぶらせ、191Pの最後のひとコマにピークを迎えて妻と同じように涙を溢れさせた私だった。そして193Pの天馬博士の顔(表情)にダメ押しされる。(194Pで終わるのだが)すべてを読み終えて、物語と絵と演出の、三拍子揃った卓越した手腕に納得した。

雑誌の連載は終了しただろうか?手塚治虫の「鉄腕アトム-地上最大のロボット」は豪華版1巻を買って読んでいるが、ここまでくれば残すはアトムの復活と決着のみだろう。(破壊されるロボットの順番が異なる以外に大筋に変更はないし)。ゲジヒト視点で進んできた「PLUTO」なだけに、ここでの退場は残念だが、この先犯人と目されているゴジ博士とアブラー博士の謎をどのような味付けで見せてくれるのかなど、アトムの目覚め方とともに期待して待ちたいと思う。

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コメント

こんばんは♪
ほんとにゲジヒトのあんな形の死は、ただ呆然。
びっくりすぎて涙も出なかったですわ・・。
あの妻の姿といい、涙といい・・。
ほんとに秀悦ですよね~。胸が痛いです・・。
ゴジとアブラーにはまだ謎があるんですね~?
あのクマは何者なんでしょうか・・?
私は手塚氏の原作を読んでないので、
もうやきもきしますわ~〔笑〕
雑誌は連載中で、アトムはおっしゃるとおり復活してました(今日立ち読みした:笑)
あ・・又何ヶ月待つのやら(笑)


投稿: くろねこ | 2008/08/06 01:06

懲りずに恥ずかしげもなく、またやってまいりました…m(_"_)m
雨宿りに本屋さんにとびこんでラッキーにもこの新刊をゲットしました。
私はいわゆるアトム世代の筈なのに、アトムをはじめとしてほとんど手塚作品を読んでないのでこの作品は新鮮この上なしです。だからたいむさんの記事を読んで、原作に沿って進んでいることを知って驚いています。
浦沢PLUTOが終わったら、原作も読んでみたいなと思いました。


『ポニョ』ではいろいろと気を遣っていただいて本当にありがとうございました。
気を悪くするどころか逐一真面目にお応えくださったこと、感謝に堪えません。
パソ通の時代から似たようなことをしてきているクセに(そして随分いい年をしているのに)未だに同じような失敗を繰り返しております。こちらこそ、不愉快な思いをさせ、また余計な手間をおかけして申し訳なく思っています。
もっとオトナにならなければと思いつつも、あちこちで“ネチッコさがあんたらしいよ”という言葉に甘えてしまっている自分に気づき、また凹むことしかりです。
ハッキリ言って下さる方こそ、本当に貴重な存在だと身に染みて知っています。これからもよろしくお付き合いお願いできれば心から嬉しく存じます。

投稿: よろづ屋TOM | 2008/08/06 16:51

■くろねこさん、こんにちは
あまりにも唐突な死は衝撃的でしたね。
だけど、あのあっけなさが逆にゲジヒトを救ったようにも思えました。やはり表現方法が素晴らしいと思います。

>あのクマは何者なんでしょうか・・?
なんでしょうね?
実は、これは私ものわかりません。
もしかしたら、ヨハンかもしれません(違っ)

>アトムはおっしゃるとおり復活してました
あ、本当ですか?終わっていないってことは、結末を読めるのは、少なくとも2年後???(><)

投稿: たいむ(管理人) | 2008/08/06 23:17

■よろづ屋TOMさん、こんにちは
またの御来訪、心から嬉しく思います。
私もね、アトムの次の世代だというのはあるけれど、手塚作品に魅力は感じないんです。精々「火の鳥」くらいかな?たぶん絵がダメなんですね。

確かにパーツと骨格は原作どおりではありますが、装飾はまったくオリジナルといっても過言ではないかもしれません。そのくらい浦沢色に染まった「PLUTO」だと思います。だから、私もこの先どんな展開になるのか想像できません。けれど、必ず原作と同じ所に着地する事だけは間違いないので、きっと最後は切なくとも、それでも幸せな気分になれるものと期待しています。
まだ連載中とのことなので、いつになるかわかりませんが是非最後まで堪能して、それから原作を読んでみてください。
「ああ」となること請け合い。そしてどれだけ「PLUTO」が素晴らしいか分かると思います。


私も大人げないと思っております。それだけTOMさんが私に親しみを覚えてくださっていたにもかかわらず、なんて心なく突き放した態度をとってしまったかと反省しきりです。
これからも宜しくお願いいたします!
「ひぐらし」も継続中なことだし(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2008/08/06 23:32

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