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2008/06/16

「つぐない」みた。

Atonement 「変えようのない事実、悲劇の真実を明かすことになんの意味があるというのか。」
物語のラストは、幻の幸福に満ち満ちていた。・・でも、本当にそうだろうか? と私の中で鬩ぎ合いはじめる。
ブライオニーは小説の中でしか生きることが出来なかったのか?だとしたら・・・?それこそが「贖罪」か。

映画は、観客に事実とブライオニー視点の願望と空想(妄想)の全部を見せている。最終的に見た者にすべての判断を委ねるといった作りになっていたように思う。ただし、ブライオニーの創作小説の部分と、ブライオニーの知らなかった事実との混在が観るものをやや戸惑わせる。
突然の巻き戻しや激しく弄られた時系列には瞬間的に困惑してしまうが、2つの視点から描かれていると分れば、それほど混乱することは無い。現実と事実、虚構と妄想の両方を見て、はじめて理解できる複雑な内容を表現する為の手法としては、そても上手い見せ方だったと思う。

ここから先は完全に作品に入り込んだ感想。
「せめて物語のなかだけでも・・」と事実を書き換えたブライオニーについて。
私はどうも釈然としない。取り返しの付かないことをした上に、償うことも出来なくなったブライオニーは、一生十字架を背負ってしまったようなもの。性に興味を覚え過敏に反応する年頃。ましてや姉と気になる男性の情事と年近い友人のレイプシーンを立て続けに目撃してしまえば、動揺から思考が停止するのも道理。自分の発言でどういうことになるのかをまったく考えなかったことについても、少しだけなら同情の余地がある。しかし、彼女の行動を支配していたモノは単なる”嫉妬”であり、自分の苛立ちの元凶として矛先をすり替えた、ささやかな復讐であることを、まるで自覚しなかったことが最大の不幸で落ち度。描かれてはいなかったが「いい気味だ」くらいに思っていたことだろうな。
事の重大さを想像しなかった(多分できなかったのではなく、しなかったのだと思う。分かったつもりになっていたのだから)、ブライオニーの無知と幼さが引き起こした悲劇だ。恐怖から逃げ続け、冤罪を晴らすこともしなかったブライオニー。結局そのまま和解することなくこの世を去った姉とロビー。文字通り「取り返しの付かない事」をした者として、彼女は生涯赦されない。それを、自分の思い描いた懺悔シーンで「小説」の中に吐き出す。姉やロビーにどのように責められるかも、自分のシナリオどおりすり替えてしまうのは「自己満足」以外の何物でもないと、私は思うのだが・・・。
私が、もしブライオニーの物語を小説で読んでいたらならば、ベタでも都合よくても「Come back me.」と待ち続けるセシーリアのもとに、晴れて潔白を証明したロビーを帰してあげたいと、幸せなラストを願ったことと思う。小説を完成させ無ければならなかったブライオニーが、フィクションを差し込む事について、どれだけ逡巡したのか、何度書き直したのかはわからないではない。けれど、やはり事実のすべてを知ってしまうと、「この小説を書いた意義は何だったの?何の為に書いたの?」と、どうしてもセシーリアとロビーに対してのアンフェア感を払拭することができない私だ。だってね、死んでしまった彼が幸せな思いに満たされることは、絶対にないから。

総評:★★★☆☆++ 好き度:★★★☆☆+  オススメ度:★★★☆☆++

タイプライターのカチカチが、BGMと重なって最初は小気味よく聞こえていたのだけど、だんだんムカついてくる私でした。

捕捉:私も、セシーリアとロビーが生きていたならば、きっといつかはブライオニーを赦したと思うし、私も赦したいと思うのだけど、引き裂かれたまま死んでしまった2人である限りは嘘は許せない。フィクション小説にするくらいならば、日記どまりにして欲しかった。

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コメント

確かに彼女は小説という世界に逃げ込んだともとれますが、そこにたどり着くまでに20作も遠回りしたことを考えると彼女も苦しんだんだなぁ~と切なく思います。

ところで今日はバトンを持ってきました。よろしければ受け取ってください。

投稿: にゃむばなな | 2008/06/16 22:28

こんにちは。

私は「つぐなう」ならなぜ最後まで看護婦してないのか、そこが不思議でした。

映画のトーンは大好きなのに、そういう部分が気になって仕方がない私。ベストセラー作家になって自分だけ金持ち?

投稿: ぷくちゃん | 2008/06/17 05:00

■にゃむばななさん、こんにちはsun
>彼女も苦しんだんだなぁ~と切なく思います
うん、そうですよね。確かにブライオニーに対して厳しい言いようだなって私も思うのだけど、でもダメ(笑)
ならば書かないほうがよっぽどマシって思っちゃうもの。

>バトン
残念ながら、ご覧のとおりでバトンは一切記事にしていないんです。
流行の頃に保留にして以来ずっと断り続けているので、申し訳ないのだけどごめんなさい!

でもなんのバトンでしょうか?皆さんの答えを読んだり、自分ならと考えてみるのは好きです。


■ぷくちゃん、こんにちはsun
>つぐなう
小説だと分かった時、看護婦を志したこともフィクションなのかな?とか思いましたが・・・実際はどうなのでしょうね?
看護婦の仕事の傍らで小説を書いていたと思いたいですけど。

>ベストセラー作家になって自分だけ金持ち?
インタヴューを受けるくらい著名な作家さんになったってことは、印税もがっぽり?
何処かに寄付とかしているのかなーとか、私は、こちらも好意的に考えたいところです。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/06/17 20:28

こんばんは♪
ブライオニーの気持ちは分かるとしても、どうしてもある種の嫌悪感(っていうのとは違うかも)を感じてしまうのも事実なんですよね。
もっと早くに行動を起こして許しを乞う術は無かったのかしら・・・。
ブライオニーの一生も気の毒だとは思うのだけど・・・。
とても感想が難しく、また、原作も頑張って読んだだけに、好き嫌いはともかく印象に残る作品になりました。

投稿: ミチ | 2008/06/18 23:05

■ミチさん、こんにちはsun
>もっと早くに行動を起こして許しを乞う術は無かったのかしら・・・。
それもロビーの罵倒のなかにありましたよね。
何故あんなに時間がかかってしまったのかちょっと分りません。
セシーリアもまったくブライオニーと話をしなかったのかしら?愛し合っていたことを説明できなかったのかしら?・・と不可解なことばかりです。
映画が良く出来ているとするならば、やっぱり原作からして好きじゃないわ、私は。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/06/19 17:29

こんばんは

ブライオニーのラストの告白、当初は
「そういう秘密は墓場の中まで持ってけよ! それじゃ粉飾した意味がないだろ!」と思いましたが
たいむさんの記事を読んで「正直に『あれはフィクションです』と告白したことが、彼女なりの『つぐない』だったのかもな・・・」と思いました
それでもまだなまぬるい、といわれそうですがcoldsweats01

わたしはロビーはあんまり彼女を恨んでないと思うんですよ。実際の彼はブライオニーに対してほとんど何も言ってないので。まあ正確には「そうあってほしい」というわたしの願望ですけどね

投稿: SGA屋伍一 | 2008/06/19 22:31

■SGA屋伍一さん、こんにちはsun
>「正直に『あれはフィクションです』と告白したことが、彼女なりの『つぐない』だったのかもな・・・」
アレがなければ、ただの小説で終わっていましたね。海辺の家で幸せそうな2人に安堵して涙なみだって感じでしょう。
私は、老ブライオニーは最初から、完成させたら必ずフィクションの部分を全てを告白する前提で発表したのではないかとも思いました。おっしゃるとおりに公然に自分の過ちを暴露することが「贖罪」であると。でも、同時に事実を曲げた小説が永遠に残ることで、自分は罪から逃れられないと自縛したようにも思えました。
だからいずれにしてもすべてが自虐的な自己満足で嫌なんです。言い方は悪いけれど、ダシにされた2人があまりに不憫です。
死んだ人間に想像も未来もない。・・と超リアルな考え方をしてしまう性質なので、こんな感想になっちゃいます(^^;。

映画は、私をこれだけイラつかせる素晴らしいデキなのですが、原作がやっぱり嫌いです(^^;

投稿: たいむ(管理人) | 2008/06/20 01:28

そっかぁ~そんな感じ方もありましょうね。
あたしはず~っと背負い続けた彼女を
不憫にさえ思いもしましたけどね。

投稿: miyu | 2008/06/25 22:50

■miyuさん、こんにちはsun
ええ、こういうのにはツイツイ反発してしまうもので・・・
同情の予知がないとは言いませんが・・・心が狭いのかしら?私(^^;

投稿: たいむ(管理人) | 2008/06/25 22:59

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