『図書館危機』 有川 浩 〔著〕
『図書館戦争』シリーズも、第3弾『図書館危機』へと突入。
現在、アニメの公式ページTOPは、郁と可憐な花が舞っている画像が使用されている。どこと無くイメージに合わないと思っていたが、「小さな白い花」の意味がココへきてやっと理解できた。実は”図書隊”の徽章(正階級以上)にデザインされている花の模様は”カミツレ(カモミール)”とわかった。そう言われれば、ちゃんと”カモミール”の花に見えてくる。
なんだかキーアイテムになりそうな”カミツレ”。デザイン化の由来には泣けたー(TT)・・・というか、ヤラレタ!それどころか後半に入ってからはボロ泣き。次々に襲ってくる切ないエピソードの数々には、嬉しくも悲しくも、何度となく泣いては持ち直すの連続だった。最終的には持ち直すまえにトドメを刺されて撃沈してしまった。
1-2章は、「王子様、発覚!」による着地点を模索する話と、堂上班に関係深い人々の関係性に変調の兆しが感じられた事件であり、昇格試験を絡めたエピソード。3章は、(おそらく)ファイナルバトルへ向けての布石になりそうなエピソード。4-5章は、変革の時期が間近に迫っていることがヒシヒシと感じられる大事件の勃発~沈静化まで、である。
郁&手塚は入隊3年目に突入。無事「士長」への昇格も果たし、もはや”新人”と侮ることの出来ない実力を身につけ始めている。もちろん相変わらずなところも沢山だが、私が最初に持った郁への嫌悪感等はすっかり消え去り、今では応援するばかりとなった。今回の大事件と郁のプライベートに関わる様々なエピソードは、確実に成長が伺われるもので、大人になることの痛さが切々に伝わってくる。
「戦争」~「内乱」で(ありきたりとはいえ)キャラが確定し、ベースが固まったところで、一気に転章へと移行した「危機」。もはや既知感アリアリな展開とはいえなくなった。(これでもか、という位のベタ甘と泣かせでの交互攻撃は、少女マンガの王道だけどw)
5章はタイトルでネタバレしていたが、まさか”円満”でないなどと、誰が読む前に想像するだろう。確かに4章での雲行きから「まさか」の影は付きまとい始めるのだが、拒絶反応が先立ち「まさか」を打ち消そうとしてやまない。号泣の所以はココにもあるような気がしている。ラブコメだけではなく、ストーリー展開でも惹きつける作者の手腕に敬意を表したいと思う。
シリーズ最後の1冊が『図書館革命』。原則派のドン=稲嶺の勇退は”図書隊”の今後にとっての最大の精神的打撃であり、行政派の副指令昇格という後任人事は、原則派の多いタクスフォースには不安要素でしかない。肝心の玄田の事もある。「革命」というだけあって、ラストバトルはあらゆるものを巻き込んでの凄惨なものになるかもしれないが、希望の持てるタイトル。落ち着いたところで直ぐにでも取り掛かりたいと思う。
さて、以下は「王子様、発覚!」からの顛末と個人的解釈による感想。(長文ゆえ、元気のある方のみどうぞ)
闇討ちに近い形で「王子様」の正体を暴露されてしまった郁。あまりのショックに発熱し、思考回路はパンク寸前。今までの様々な自分の言動を甦らせては、泣いたり喚いたりとひとりでジタバタするのみ。本人を目の前にしてのこっぱずかしい発言の数々。上官と部下である以上、この先もずっと顔をつき合わせて仕事をする仲間だ。気まずいことこの上ない。
・・・とここまでは、ある程度予想できる展開。しかし、更なるネガな思い込みで「堂上に嫌われているのではないか?」にぶっとぶ思考が分からない。(ま、郁らしいが・・^^;)
飽和状態でパニクる郁のなだめ役・相談役は必然的に小牧が引き受けることに。事情を知る小牧であるから事態の把握は早く、ほとんど盲目的で6年前から一歩も動いていない郁であることを指摘した上で、「今の堂上を見るように。」とだけ促す小牧だ。毎度他人事となるとからかいガチの小牧だが、郁へのアドバスは当時を知る職場の仲間としても、堂上の友人としても、郁の(元)教官としても実に的を射たピンポイントアドバイス。唯でさえ混乱している郁に余計な事を言わないあたりはさすがだ。
回らない頭をフル回転させて、小牧の言う事の意味を懸命に咀嚼しようとする郁。その結論が堂上本人に向かっての「脱・王子様宣言」だもんなぁ(笑) 「王子様から卒業します!」には、全て知る小牧がバカウケするのも無理はない。(大真面目な郁と、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした堂上、横隔膜が痛くなるほど笑い転げる小牧に真っ赤になってひたすら耐える郁、といった光景を思い浮かべて私もしばらく笑いが止まらなかったが。)・・ということで、「内乱」のラストから、気になっていた事の顛末(一応)を掻い摘んで言えばこんな感じ。
郁は小牧の言から、”何が自分の本当の気持ちなのか、この先どうなりたいのか、どうしたいのか。”を見極めようとし始めたわけで、序でに言えば、正体を知ったことが堂上にバレるのを何よりも恐れている段階。「王子様の話はもうしません。」の宣言は、唐突とはいえ逆発覚の危険回避として有効だ。それらしい言い訳も、郁にしては良く考えたようだね。それに対して堂上!私が思っていた以上に過去回帰していたのようで、こちらは少し意外だった。現在の郁に、かつて自分を行動に掻き立てた”高校生の郁”を重ねて、「見ちゃいられない」とツイ過保護になってしまうようなヌルイ堂上とは思っていなかっただけに、「こっち(堂上)も6年前から進んでいないようだね。」という小牧の言葉に対する堂上の解釈にはなんだか残念になった。
私が解釈を間違えていたのだろうか?それとも堂上を買いかぶり過ぎていたのだろうか?少なくとも堂上は”今の郁”と接していると思っていたし、今の郁が好きなんだと思っている。いずれにしても堂上にとって郁が”特別な娘”なのは確定だろうが、過保護なのは、何かと世話を焼くのは堂上元来の性格であり、ともすれば生死に関わる戦闘職であること、体力に差のある女性であること等による、あくまでも郁の弱点と甘さを案じた、何より郁が心配で仕方が無いところの公私混同だと思う私だった。なのに堂上の結論が「お前を見くびっていた。お前を認める。」にはガックリ。どこまで上官なんだ?コイツは!と苛立ち、部下としてなら最高の言葉(評価)が嬉しい郁だろうが、どこか的外れに思う私だ。
確かに小牧の「過保護」という窘めは、堂上の解釈でも成立する。けれど郁しか見ていないことに変わりないから、解釈が違っているとは思いたくない。・・・とはいえ、本当は郁に対する恋愛感情を堂上がタブーとして封印しているものと仮定するならば、モヤモヤしている気持ちに辻褄を合わせただけ、という可能性はある。昇進試験の結果から、テレもなく素直に謝るあたりが如何にも”上官”としての堂上。辛うじて”上官と部下”の関係で気持ちに折り合いをつけようとしているようにもとれる。一貫して”上官”として郁と接する堂上だから何の抵抗もなく言われるままに手を握ってあげるし、動揺して震える郁を抱きしめもする。身を挺して庇いもする。銃弾から守るのはともかく、一般的に考えて手を握ったり抱きしめたりはさすがにセクハラ問題にもなり兼ねないこと。この先どこかで咄嗟の”堂上篤”の行動だといったボロを出してくれる事を願いたい。(けど、このまま曖昧にして引っ張る作戦だろうなぁw)。それにしても「今の堂上教官が好きだ。」と遂に自覚してしまった郁にとっては、酷な事だよね、これは。バレバレなんだから妙なプライドは捨ててとっととシロクロつけてくれよな、どーじょーきょーかん!!
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