« 機動戦士ガンダム00(#21) | トップページ | 「明日への遺言」みた。 »

2008/03/03

「ヒトラーの偽札」みた。

Die_falscher 終戦間際のナチスによる、敵国の経済破綻を狙った偽札の偽造、「ベルンハルト作戦」にまつわる物語が描かれている作品。著者は実際偽札作りに関わったユダヤ人であるが、自身の視点とも少し違った描かれ方にやや困惑。(違った展開を想像していただけに)
職人は一日にして成らず。「芸は身を助く」というけれど、正にそれを地で行ったお話。

選択肢があるようでいてまるでない状況。ナチの極秘作戦(偽札贋造)の為に、各収容所から専門の職人による選抜チームが作られる、それが「ベンハルト作戦」のはじまり。
ソロヴィッチもその一人であり、逮捕される以前は紙幣・身分証などさまざまな贋造で名を上げたまさしくプロの職人であり、絵画でも秀でた才能を発揮する。収容所で密かに絵を描くソロヴィッチ。作戦なのか純粋に慰みだったのかは不明だが、描いた絵は士官の目に留まり、絵を描くことで過酷な肉体労働から解放、若干の優遇されることになる。さらに腕が見込まれ偽札チームのリーダーに任命されたことで、ソロヴィッチの近辺は一変する。チームと作業場は収容所内で隔離され、シャワーに柔らかい布団と枕、収容者としては破格の待遇を受けることになる。が、断ればその場で死あるのみ。偽造に加担することは、自分たちを散々虐げてきたナチに対して多大なるの貢献をすること。皮肉な状況と立場に葛藤しつつも、「生き続ける」ことだけを目標に作業を進めるソロヴィッチらメンバーだ。
隔離棟の内と外の格差、経歴を偽り紛れ込んだ者の射殺を目の当たりにすれば、誰もが不本意ながらも今の境遇に甘んじようと思うところ。ここでやっと著者であるブルガーが主張しはじめる。「自分達のしていることは、結局は自分達の首を絞めることの他ならない。」 ドルを成功させてしまったら世界は崩壊するとして、サポタージュを決め込み作業を遅らせるブルガーだ。面白いのは前者の考えでありながらもブルガーの主張に耳を傾け、作業の遅延には言い訳をでっち上げて度重なる催促をかわすソロヴィッチ。いよいよ切迫した状況となりブルガーを売ろうとする仲間を諭し、最後の最後まで粘るソロヴィッチだった。犯罪者は必ずしも悪人ではないってね。(これまでも、今も、何の為に今まで偽造をしてきたのか、なのかもしれないけれど。)
結核に冒された仲間も、主義主張の異なる仲間も、最後まで誰一人として見捨てず、最終的に「終戦」を勝ち取ったソロヴィッチだったが、それは結果論。ブルガーの主張と行動が偽札の製造を遅らせたことも「ナチの敗戦」の要因のひとつかもしれないが、それも結果論。
いずれにしても、彼らは優遇された中で「ポンド偽造」に成功し、最後に壁をぶち破ってきた彼らとは違う生活をしていたのは事実。個々における罪の意識を痛ましく思うところだ。
戦時中におけるユダヤ人迫害、異常な状況下での八方塞にたったひとつの選択肢。理不尽にも戦争に利用される者。決着の難しい話だったけれど、密かに持ち出されようとした偽ドル札を守り、正規の場でのギャンブルにわざと負けて使い果たすソロヴィッチには、我を誇る自信と器量が伺われ、後味の悪くない終わり方に、なんだかほっとする私だった。

総評:★★★★☆  好き度:★★★☆☆++  オススメ度:★★★☆☆+

想像していたものとはまるで違う展開だったけれど、見せ方が上手く、エンタメとしても楽しめる作品だったと思う。

|

« 機動戦士ガンダム00(#21) | トップページ | 「明日への遺言」みた。 »

コメント

こんにちは。TB&コメントありがとうございました。

考えさせられる映画でしたね。アカデミー賞を取ったのは意外でしたけど(笑)。
僕は特に卓球のシーンがお気に入りです。あの場面でのブルガーの行動が特に印象的でした。

投稿: えめきん | 2008/03/04 07:07

こんにちは♪
サリーがあそこでわざと負けてお金を使い切ったところで男が上がったな~と思いました。
女性に「運が悪いわね」って言われたけど、ユダヤ人でありながら収容所を行きながられて来た事の運の強さはサリーが一番知っていたでしょうね。
芸は身を助ける。
私なんて無芸大食ですから収容所に行っても肉体労働しかできない・・・・トホホ。

投稿: ミチ | 2008/03/04 14:37

■えきめんさん、こんにちはsun
考えさせられる、というよりは、自分に当てはめて勝手に考え込んでしまった感じです。
卓球のシーンは印象に残りますよね。
けど、私はサロモンの方(笑)


■ミチさん、こんにちはsun
エースのフォーカードには「え?何で?」って思ったけれど、「ああ、そうか」でしたね。
誇り高き職人の意地を見た気がしました。
そうそう、そして誰よりも運強い。自分でもプロ級って言ってましたしねw

私も、肉体労働の途中に餓死かなー。芸がなくて青年海外協力隊にも参加できませんし。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/03/04 17:41

こんばんは☆
たいむさんの考えていた展開ってどんな感じでしょうかー。
もしブルガーが主役だったらどんな物語になっていたのか興味あります。原作はどんなラストなんでしょーか。。。
見た目はそんなにイケメンズではなかったサリーがとってもカッコよく見えてきてしまったんです;恋は盲目。違ぅっ…

投稿: シャーロット | 2008/03/04 21:15

■シャーロットさん、こんにちはsun
何と言いましょうか、ブルガーの作品とは知らなかったもので、ブルガーの正義(正当性)はわかるのだけど、世の中それじゃあやってけないぞ(綺麗ごとを言うな!)という、黒いままのお話かと思ってましたので。・・(^^;
恥ずかしながら勉強不足で、事件の概要すらよく知らず、結末も知らなかったからなんですけどねー。

>もしブルガーが主役だったらどんな物語
見る前はコッチ。正義の為にみんなで反乱を起こすの(笑)
とはいえサリーがブルガーの役割なのかと思ってましたが(^^;

>サリーがとってもカッコよく
ヘタレオヤジにしか見えないんですけどねー。
最後のギャンブルではそりゃぁもう、って程に(爆)

投稿: たいむ(管理人) | 2008/03/04 22:52

コメどうもでした。

実際はブルガーも「選択肢なんか無かったし、生き延びるので精一杯だった」らしいですが、そこをギリギリの抵抗で上手く見せてくれてました。
大げさに登場したピンポン台に笑っちゃったけど、収容所ではとんでもない贅沢だったんですね、納得です。
最後の一般収容者との対面も考えさせられる場面でした。

投稿: くまんちゅう | 2008/03/06 21:46

■くまんちゅうさん、こんにちはsun
>「選択肢なんか無かったし、生き延びるので精一杯だった」
ですよねぇ。やっぱり。

ピンポン台は、何が出てくるのか興味津々、プっと吹いてしまいました。(私も、もちろん直ぐに思い直しましたよw)

>一般収容者との対面
こちらもなるほど~でしたね。
柔らかいベットに夢見ごごちな絵も印象深いです。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/03/07 19:18

こんばんは
DVDで鑑賞。たしかに異色のナチスものでしたね。
選択肢があってないようなもの,ってほんとそうですね,あの状況。選択する気力も残ってないような環境ですよ,あれは。
ソロヴィッチの人柄や行動は,複雑で予測不可能でした。それが一番面白い・・・というか眼が離せませんでした。
ナチスの大罪にも,あらためて怒りを禁じえませんでしたね。

投稿: なな | 2008/07/18 23:18

■ななさん、こんにちはsun
選択肢のない卑怯な手口には憤りを感じますが、この映画はそれなりに爽快感があって助かりました。

ナチ系の作品って滑稽か悲惨かどっちかだけ(もしくは両方)が多いですから。

DVDは借りなくていいけど、TVで放送されたらもう一回みたい作品かもですw

投稿: たいむ(管理人) | 2008/07/19 16:32

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106009/40357707

この記事へのトラックバック一覧です: 「ヒトラーの偽札」みた。:

» ヒトラーの贋札 [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
 『完璧な贋札。 それは俺たちの命を救うのか。 それとも奪うのか──』  コチラの「ヒトラーの贋札」は、1/19公開となった"ナチス・ドイツが行った国家による史上最大の紙幣贋造事件。この驚くべき歴史的事実に隠された、ユダヤ人技術者たちの正義をかけた闘いの物語...... [続きを読む]

受信: 2008/03/03 19:26

» ヒトラーの贋札 [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
造らなければ死、造ればそれは家族や同胞への裏切り。彼らの命をかけた選択とは__。 アカデミー賞外国語映画賞受賞おめでとうございます! 第二次世界大戦の直後、モナコのモンテカルロ。サリーことサロモン・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィクス)が豪華なホテルに...... [続きを読む]

受信: 2008/03/03 21:54

» ヒトラーの贋札 [5125年映画の旅]
第二次大戦下のドイツ、ザクセンハウゼン強制収容所。偽造の天才サリーは逮捕後、芸術や印刷技術に秀でた収容者と共にこの収容所に送られた。そこで彼らを待っていたのは、完璧な贋札を偽造し、世界経済を混乱に陥れるベルンハルト作戦だった。命の危機に怯えながらも彼ら...... [続きを読む]

受信: 2008/03/04 06:47

» 映画 【ヒトラーの贋札】 [ミチの雑記帳]
映画館にて「ヒトラーの贋札」 ナチス・ドイツによる史上最大の贋札事件「ベルンハルト作戦」を描いた作品。第80回アカデミー賞外国語映画部門ノミネート。 おはなし: ナチスは敵国イギリス国内経済に打撃を与えるため、大規模な偽ポンド札の製造に着手する。各地の収容所から印刷技術の専門家のユダヤ人をかきあつめ、ヘルツォーク親衛隊少佐のもと作戦は開始された。ニセ札作りのプロ、サロモン・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィクス)もリーダーとしてそこに加わった。 先日原案本を読んだばかりなのですが、本とはまた... [続きを読む]

受信: 2008/03/04 14:33

» ヒトラーの贋札 [シャーロットの涙]
生き抜く・・・ [続きを読む]

受信: 2008/03/04 21:16

» 「ヒトラーの贋札 (Die Fälscher)」映画感想 [Wilderlandwandar]
アカデミー賞の外国語部門にもノミネートされていた「ヒトラーの [続きを読む]

受信: 2008/03/05 21:52

» 【2008-18】ヒトラーの贋札(にせさつ)(Die Falscher) [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
人気ブログランキングの順位は? 国家による史上最大の紙幣贋造事件 その隠された真実 成功すれば同胞への裏切り 失敗すれば死 完璧な贋札。 それは俺たちの命を救うのか。 それとも奪うのか── ナチス・ドイツが行った国家による史上最大の紙幣贋造....... [続きを読む]

受信: 2008/03/10 23:30

» ヒトラーの贋札 [ネタバレ映画館]
プラテンといっても食べ物ではない。 [続きを読む]

受信: 2008/03/17 12:37

» ヒトラーの贋札 [Diarydiary! ]
《ヒトラーの贋札》 2007年 ドイツ/オーストリア映画 - 原題 - DIE [続きを読む]

受信: 2008/05/25 19:51

« 機動戦士ガンダム00(#21) | トップページ | 「明日への遺言」みた。 »