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2008/02/19

「再会の街で」みた。

Saikainomachi「 9.11同時多発テロ」での被害者遺族の今を描いた友情の物語。
甚大な数の命を奪ったテロでの被害者遺族の数は、その数倍にも及ぶ。しかし一口に「遺族」と括れないものがそこにあると知った。想い出を大切に生きようとする遺族と、全てを封印し殻に閉じこもる遺族。時間ですら解決が難しい問題だけにとても難しいものだ。

アランとチャーリーは大学時代のルームメイト。しかし卒業後は音信不通となり、それぞれ歯科医師として家族と暮らしていた。9.11テロでチャーリーは妻と3人の娘と愛犬を一遍に失い、アランは後日チャーリーの悲劇を知る。ずっと気に掛かていた事であり、偶然にも街でチャーリーの姿を発見し、必死で彼を呼び止める。・・が、チャーリーの反応は極めて余所余所しく、「あんた誰?大学のルームメイト?」といった具合。とにかくチャーリーは覇気が無く、支離滅裂だった。それ程までに心が病んでしまったことにアランは愕然とする。時に常軌を逸したチャーリーの言動に翻弄されながらも、アランはチャーリーの”旧知の友人”として接し続けた。アランはアランで妻と2人の子供に恵まれ、仕事も順調で順風満帆に暮らしていたが、枠に嵌められた生活にはどこか息苦しさ感じていたからだった。チャーリーとの自由な時間は学生時代の奔放な心を甦らせ一服の清涼剤となっていた。偽善でも憐れみでもなく、本心からチャーリーを何とかしたと思うようになるアラン。チャーリーも、妻子を知らない”旧知の友人”を受け入れる。おかげでアランの家庭もギクシャクし始めるが、結果的にアランは何かをフッきり元鞘。一見駄々っ子でしかないチャーリーだが、アランにも彼が必要だったということだ。
「話したい」と言いながらも、言わず・聞かず・拒絶するチャーリーは最後まで変わらないし、世間を巻き込むトラブルまで起こしてしまうが、ほんの少しだけ変化の兆しを見せ始めるところで映画は終わる。

結論はあるような無いような作品。チャーリーのひたすら繰り返されるキッチンリホームの理由は、2度と償えぬ妻への悔恨の表れであり、亡くした家族の昇華を阻み続けるモノは孤独だということなど、ついに吐露されたチャーリーの心の傷は果てしなく深く、暗い闇だった。理由が分かれば、尚更に他者がどうこう出来る事でも、いずれ時間が解決するようなレベルではないものと知る。ましてや入院させたところで、である。出来ることは、いつも手を差し伸べつつ、彼が新しく自分の道を見つけるまで気長に待つことのみということだ。

テロの残影・呪縛からの脱出が進む中、未だ癒されずに苦しむ遺族であり、二次災害なども含めて心身を病む人も少なくないものと思う。そんな遺族の心の叫びを代弁するかの作品で、どこまでも痛ましく思えるチャーリーだが、政府の補償と生命保険で働かずとも不自由なく生活出来る境遇は、そうではない同じ境遇の人にはどのように映るのだろう?と思えば、綺麗事で纏まっている気もする。(いずれにしても第三者的意見だが)・・・しかし、「9.11被害者遺族」という特別な”フィルター”を遺族は望んでいるのかいないのか等、テロから生まれた多種多様な問題は、決して「報復」では解決されないことを確信する私だった。
公判でのことなど、ほかもの語りたいところは沢山あるのだけど、語り切れないので涙を呑んで省略。シリアスながら、イカレた演出で笑える部分も多々あって、さほど重い作品ではないのでご心配なく。ドン・チードルやアダム・サンドラーの名演技、女優陣も個性的なキャラクターを好演ですw

総評:★★★★☆  好き度:★★★☆☆+ オススメ度:★★★☆☆+

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コメント

たいむさん、TB&コメントありがとうございましたm(__)m
アダム・サンドラーは昔から好きでした。しかし今回は今までの彼の役からは想像できない新しい側面に触れたような気がしました。もちろん、映画のトーンも9.11のあまり話題になっていない内面的なものを捉えていましたが、それでもアダムの演技にはビックリしたと同時に思わず目頭が熱くなる時もありました。新生サンドラーを見た想いです。ドン・チーゲルやドナルド・サザーランドのサポート演技も素晴らしかったです!
すみません、勢いよすぎて2つもTBしてしまいました。お手数ですが1つ削除していただけますか?よろしくお願い致します、

投稿: cyaz | 2008/02/19 21:23

こんばんは♪

適度に笑いをちりばめながら、重くなりすぎずにちょうどいいバランスでしたよね☆

とにかく、主演ふたりドンチーとそしてアダムが素晴らしく良かったです♪

投稿: mig | 2008/02/19 22:48

たいむさん こんばんは~
ゲームにはまっちゃったアランは^^;;;かつての自分を
観てるような気がしました(爆)
ちょうど、はじめてRPGにはまったのが
あーいうシチュエーションだったんですよね~

投稿: にゃんこ | 2008/02/20 00:14

■cyazさん、こんにちは
私は、これといってアダム・サンドラーに注目したことはないですが、今回のチャーリー役は見事だったと、生気のなさ、荒れ具合が絶妙と思いました。

>ドナルド
とうしても、最近ではキーファのパパを見てしまいますが、役者としては一枚も二枚も上手ですよね(^^)

■migさん、こんにちは
音楽も軽快でドラマっぽくって、重すぎず軽すぎずで良かったですよね。
良かったですけど、演技派俳優に支えられた作品に思いました(^^)

■ にゃんこさん、こんにちは
私はあまりゲームはしてこなかったし、今でもほとんどしないのだけど、RPGはやり出すとなんか止められないんですよね。やらなければまったくやらなくても平気なんだけど。
アランの1時間後は、自己体験より想像できて笑えましたねw。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/02/20 17:23

キッチンのリフォーム。
そう言う意味だったのか----と。
この映画、二人の名優もさることながら、
シナリオも抜群。
ぼくにとっての忘れられない一本でした。

投稿: えい | 2008/02/20 17:28

■えいさん、こんにちは
>キッチンのリフォーム。
似たようなシュツエーションを見たことがあるので、おそらく・・と思っていたらやっぱりで、ダブって一番切なくなったところでした。
ホンの一部のお話なのですが、そこだけみればとても良く描けた作品でしたね。
演技派の俳優陣が深みを出してくれていますし。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/02/20 18:33

たいむさん、こんばんは。
最近暖かいですね~。

この作品、曖昧な終わり方をしているのに、
後味は結構スッキリしたものでした。
サンドラーの悲しみを前面に出した演技が痛々しくって・・・
でも、ラストはちょっとホンワカ。
>一見駄々っ子でしかないチャーリーだが、アランにも彼が必要だったということだ。
お互い、気づかないところで支えあっていたんですね。

たいむさん、語り足りないようですね。
遠慮せず、思いっきり語ってくださいな。
公判についてたいむさんが思うこと、知りたいわ~。

投稿: swallow tail | 2008/02/20 23:14

■swallow tailさん、こんにちは
ドン・チードルもアダム・サンドラーもそれぞれの役にあった演技が見事でしたね。
視点を固定化させれば、脚本も良かったと思います。

公判はね、やはり裁判官の裁量の見事さでしょうか。けれど、他のことはちょっと否定的な考えであったり、葛藤して未だ整理がつかないことで纏まらなくって書けません(^^;
涙をのむは、書けないからだったりします(笑)

投稿: たいむ(管理人) | 2008/02/21 17:25

こんにちは。遅くなってしまいました;
お元気でしたか?
この頃ヒキコモリーナなワタクシ。笑
たいむさんともお話しようともなかなか共通作品が観れないでいます;
ところで。
曖昧な結末。物語としては起承転結があった方がいいのかもしれないけど、そういう映画を普段からあまり見ない私には、その曖昧さがなければ現実的には受け止められなかったかもしれないです。実際の日常なんてその曖昧さばかりだし。
9.11に関しても何気に言いたい事もあったりしたけど、たいむさんも同じ様なお気持ちなのかな。ホント、解決は報復だけでは済ませれませんよね。あの裁判シーンも納得がいかーん。それにチャーリーにも一言物申す。申し上げたい。でも言わない。笑

投稿: シャーロット | 2008/02/22 15:06

■シャーロットさん、こんにちは
こちらこそ忘れられてしまったかと悲しんでおりました(嘘です)

私もですね、視点を固定してみれば脚本もよく出てているし・・とか思うのですが、どうもリアルにこだわる部分が最近強くって、なんだか違和感が半分。
結局、報復手段に打って出たブッシュ政権の現在は何?ってことは、とりあえずは置いておくとしても、チャーリーには私ももの申す!です。
で、「言わない」・・といいつつ、ぶちまけているシャーロットさんに一票を投じたいと思います(笑)
私は、ウジウジ系が苦手なので尚更かもしれません。冷たい目で同情するばかりです(辛)
悲劇に酔ってる?なんて書いたら不幸の手紙が送られてきそうですね。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/02/22 18:55

こんばんは^^ひりちゃんです(笑)←ウソウソ(笑)
先日はご丁寧にお詫びいただきまして
ありがとうございました。楽天は訂正(修正)が
利かないから困りますよね(ーー;)

この作品は悪くはなかったのですが、期待が大きすぎたのか
残念なことに思ったより感動できなかった作品でした(¨;)
たいむさんが言われるように、結論はあるようなないような作品ですよね(^_^;)
主演の二人の演技は素晴らしかったと思いますが・・・
何回もする台所のリフォームはつらかったかな・・・
あっ!でも、たいむさんはそういうウジウジはだめなの
かしら(笑)

投稿: ひろちゃん | 2008/02/22 20:38

■ひろちゃん、こんにちは
本当にごめんなさいね。名前をミスタッチだなんて最低ですよね(><)

ひろちゃんも思ったより感動できませんでしたか!
>何回もする台所のリフォームはつらかったかな・・・
これは理由が理由なだけに切ないところですよね。

>そういうウジウジはだめなのかしら(笑)
そこはウジウジとはちょっと違いますよね。そうせずにはいられない心理はウジウジとは異なります。
いつもまでも殻に閉じこもって、生活できるから甘んじて悲劇にどっぷりと浸かる。脱出する気もサラサラ無し。周囲も腫れ物扱い。
ゲームに音楽?したいこと三昧??現実逃避して好きなことだけを好きなだけだなんてフザケルんじゃないよ!ってね。そんなところがウジウジです(笑)
ま、このチャーリーなら生活できなくても脱力したまま半死人でいそうな気もするけれどー(笑)

私自身、そんな体験をしたことがないからもあるけれど、私は悲しみからの脱出を努力したいと思うし、そうすると思います。たぶん。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/02/22 20:55

たいむさん、こんばんは!

二人の演技は素晴らしかったし、内容も良かったです!
が、前評判や予告で泣かせられるのか~と思った割には、案外冷静に観てしまいました。

受けた心の苦痛というのは、本当のところ本人にしか解らないと思いますが、
周りの配慮や暖かさなど、立ち直るきっかけになりますよね~時間の経過も大切ですしね。

私はアランの妻がツボというか(笑)
何事にも焦らず騒がず~みたいな冷静さ、、、
見習いたい(苦笑)

投稿: オリーブリー | 2008/02/22 22:50

■オリーブリーさん、こんにちは
オリーリーさんも冷静に鑑賞されたようですね。
泣かされる内容だけど、泣かせに見せない俳優の演技ってトコロでしょうか(^^)

心の傷ほど厄介なものはありませんよね。けれどどれだけ苦しいのかは本人にしかわからないこと。他人は甘やかすのが良いのか、突き放すのが良いのかすら私には判断が付かない場合が多いです。けれど・・・といろいろ思うわけです(^^;

アランの妻は強かったですねー。男にとっては心地よくも、ウザイのタイプですねw

投稿: たいむ(管理人) | 2008/02/23 16:06

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