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2008/01/10

『鹿男あをによし』 万城目学(著)

Shikaotoko_2 「あをによし」とは、”奈良”にかかる枕詞だそうだ。
和歌は得意じゃないので「そういう意味だったのね。」と納得する。枕詞といえば「たらちね~母」くらいだもんね、自信をもって答えられるのは(^^;
さてこの本、ドラマの放送開始には間に合うようにと思っていたのだが、読み始めたらサクサク読めてあっという間に終わってしまった。
話はわりと単純。いろいろな伏線が散りばめられていて、映画『キサラギ』の時と似たような感覚が味わえた。キーワードさえ見逃さなければ、簡単に次のネタの先読みができるのだけど、一つ一つにたどり着くまでの過程や経緯がとても愉快。伏線も余すところなく回収しているのは見事である。(判りやすいので答え合わせが楽しいとも言うけど。)
ただ、強いていうなら、この作品は一貫して「おれ」という鹿男の一人称で語られていて、そんな「おれ」は他者から「先生」としか呼ばれず、結局最後まで本名が明かされない。京極夏彦著の『百器徒然袋』でも意図的に名前を隠した書かかれ方がされているけど、最後の最後には明かしてくれたこともあり、きっと最後のオチだろうと、「鹿男」としての運命を感じさせる名前をアレコレ想像していただけに判らずじまいなのはちょっと残念だったかなー。
※ちなみにTVでは名無には出来なかったらしく「小川孝信」というらしい。

大学の研究室でのトラブルから、半厄介払い的に(期間限定で)追い出されてしまった鹿男の「おれ」。一時避難?場所は奈良。女子校での代理教師を任される「おれ」だ。そう、奈良と言えば「鹿」(か「大仏」)である。
実は、鹿男の出身は茨城県は”鹿島”。しかも「鹿島神宮」の氏子の筋だという。加えて奈良の「春日大社」と「鹿島大明神」は、遠く古事記や日本書紀に記されている「建御雷(タケミカヅチ)命」の逸話で非常に縁が深いらしい。全てが必然的に「鹿」でつながってしまうのだった。
奈良に赴任して早々喋る「鹿」に遭遇する「おれ」。ちょっとした失敗から「鹿」に「鹿男」にされ、日本の存亡・人類の危機を救う「役目」を強制的に与えられてしまうのだが・・・核心を突くネタバレはやめておく。
この鹿男、大学のトラブルより「神経衰弱」がNGワード。けれど、選ばれし「鹿男」である以外はごく平凡な青年。特別何かに秀でているわけでも、オタク的な何かがあるわけでもない。そんな極フツーである「おれ」の視点、(主観ではあるが)まっとうな思考・発想(心の声)がなかなか面白い。口に出る素直な疑問や感想にも好感がもてるし、とにかく良き漢なのだ。容姿こそ玉木君程ではない設定だが、あえて玉木君にキャスティングした理由が分った気がする。何より”千秋真一”ですっかり「モノローグ」に定評がある玉木君。幾分期待が高まってしまったかも(^^)

この作品、一言でいうなら『和風ファンタジー』か。
奈良(&鹿島)の「鹿」のほかに、京都が「狐」、大阪が「鼠」として絡み、3学園の対抗戦で優勝杯(サンカク)の争奪戦になるあたりは『ハリー・ポッター』を彷彿。お土地柄から日本の歴史(神話・逸話)がキーポイントでもあり、雰囲気的にはちょっぴり『陰陽師』でのドタバタ劇にも似ているかな。なんであれ、小説としてとても面白い作品だった。
個人的には、やはり日本古来の神様たちが(当たり前のように)絡むあたりがツボ。小学生までは旧約聖書やギリシャ神話が好きだったけれど、中学以降は「あさきゆめみし」で「源氏物語」を学習し、当時大好きだった作家:氷室冴子の少女小説で、古事記・日本書紀・平安文化に興味を持ち、その後「陰陽師」にはまった私だもんね(^^)
思うに、実写よりは漫画やアニメ化に向く(描きやすい)作品だと思う。でも、まだ思い入れるほどの付き合いじゃないから、きっとドラマでも楽しめる気がしている。
そのドラマでは、同僚の男性教師である”藤原君”が女性教師(綾瀬はるか)に変更(是否はともかく)。”リチャード”とあだ名される教頭役の児玉清が”リチャード・ギア”に似ているか・・というとちょっと疑問だが、役柄的には雰囲気があって良さそう。何より「鹿」の声を山寺宏一が担当するっていうじゃない!もとより玉木宏に佐々木蔵之助とくれば、コレはやっぱり見なくちゃだわね!一応録画もセットしておこっかな(^^) ※敬称略

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コメント

こちらにもお邪魔します。
これは昨年夏、偶々知る機会があり、奈良が舞台ということで読んでみましたが、
最近、ドラマになると聞いてビックリ!
普段ほとんどドラマも観ないので、これもきっと観ないのだと思うのですが…
本の内容は、いろんな面白さが詰まっていて楽しかったです。

特に、わたしは生まれてこの方、ずっと奈良県民なので、
細かいローカルネタも笑えたし(待ち合わせは「行基さん前」とか。これ、奈良の定番です)
「竈馬が嫌い」って、榎木津みたい!なんて喜んだり。
心に残る名作ではないけれど、盛りだくさんで気楽に一気読みできる、楽しい作品でしたね。

投稿: 悠雅 | 2008/01/16 20:44

■悠雅さん、こんにちは♪
リアルがミックスされたファンタジー。そんな地元ともなるとちょっと応援したくなりますよね(^^)
オモチャ箱のような物語がとても楽しかったですね。読みやすいし勢いがあるので、ほんと一気でした。

>竈馬
私も虫全般が苦手なので、竈馬どころじゃないのですが、この本、何かをオマージュしているのか、リスペクトしているのか、日常会話のように話題満載でノレますよね。

ドラマは一応見るつもりで、玉木君贔屓から少し楽しみにもしています。
鹿は骨格的にも「イ」の音が出せない・・・ここは説明があるかしら?(笑)

投稿: たいむ(管理人) | 2008/01/16 23:51

こんばんは♪
読みましたよ~!
なかなか面白かったです。
ドラマの方は女優さんたちが苦手で見ていなかったのですが、主人公はしっかりと玉木君をイメージして読みました。
でもね、本当の主人公はオヤジ言葉の雌鹿ですよね。
ポッキーが大好きだなんてカワイイ!
今度奈良に行くことがあったら鹿せんべいじゃなくてポッキーをやってみようかな。
エッセイはイマイチお好きでないたいむさんですが、敢えてマキメさんのエッセイ「ザ・万歩計」をおススメしたいです!!

投稿: ミチ | 2008/07/24 00:01

■ミチさん、こんにちは
私も綾瀬はるかが苦手です。「市」はちょっと気になっているのだけど俳優陣がネックになってます。

>本当の主人公はオヤジ言葉の雌鹿ですよね。
鹿は魅力的でしたよね。
ポッキー好きだなんてかわいいし、長い歳月ずーっと純愛も良かった!

>ポッキーをやってみようかな。
え?ええええ?そんなことをしていいの??って思うけれど、絶対に誰かやってますよね(笑)

>敢えてマキメさんのエッセイ「ザ・万歩計」をおススメしたいです!!
強力なプッシュですねぇ(^^;
「人のセックスを笑うな」のナオコーラさんのエッセイは受け付けなかった私ですが、とりあえず書店でチェックしてみることにしましょうか。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/07/24 19:24

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