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2008/01/23

『ブラック・ペアン 1988』 (著)海堂尊

”日本武尊”といえば「ヤマトタケルノミコト」と読むのは一般常識だが、”海堂尊”を「カイドウ、ソン?」なんて、見事に”タケル”と読めなかった自分が情けない。やっぱり地名と名前は難しい(と自己弁護)
『ブラック・ペアン 1988』は、2月9日に映画の公開される『チーム・バチスタの栄光!』シリーズの最新刊(続編)である。
シリーズ続編ながら、舞台が20年ほど過去に遡った物語であり(回想でもない)、主人公も異なるらしい。・・・ということで、私が実はシリーズをまるで読んでいない。そもそも旅先で、「間違って2冊買ったから、あげる」といきなり渡された本だったりする。
今まで読んだことのない作家さん(どころか現役医師とのこと)だったが、「あかん隊さんのお墨付きであらば」と遠慮なく頂くことにした。・・が、やっぱりなかなか手が出ず後回し。既に2ヶ月も経ってしまったけれど。(^^;)
結論から言えば、オススメなだけあって、医療現場の実態が興味深く、グレーな世界がとても面白かった。専門用語もあるにはあるが、内容は難解というもので もなく、読みやすい本。(若干、これだけでは尻切れトンボの感が無きにしも非ずだけど、未来で解決されている可能性はありそうだね。)

東城大学医学部付属病院を舞台に繰り広げられる、「実録!これが一流大学病院:総合外科教室のすべて!」というかの、如何にもありそうなリアルに満ちたフィクションが、国家試験にパスしたばかりの1年生外科医:世良雅志を中心に、同教室の教授・講師・医師・看護婦達の交差したそれぞれの思惑が淡々と描かれている。
主人公といっても、すべてが世良の視点で進行する物語ではないから、何かに偏って感情移入をする事はない。登場人物は誰もが一長一短。誰もが腹に一物ありそうな、絵に描いたような”ヒーロー”が一人もいないところが実に良く、逆に好感が持てる。
『チーム・バチスタ・・』の映画予告編では”ミステリーサスペンス”なタッチを感じたが、『ブラック・・』ではそういうこともなく、ただひとつ不気味な”ブラック・ペアン”が何のため在るのか、以外に謎はない。
この番外編のような続編が、後付けの過去なのか、設定を磨いたものなのかは判らないけれど、読み終えてみれば、やはり20年後の未来に起こる事件(?)であり、どんな物語が描かれているシリーズなのかが気になってくる。しかし、公開間近の映画を楽しもうと思えば結末は知らないに越したことはない。また、完成度が原作と同等以上になる実写化の成功例がほとんど見られない映画の実態を鑑みると、結局は読むとしても先延ばしにした方が良さそうにも思える。
現在、映画化により大半の書店で平積みされているこのシリーズ本。帯からは「田口」の名前が見える。読む気はないが手に取ってみれば「病院長高階」という文字が目に入った。
「へぇ、『ブラック・・』では講師として登場した「高階」は20年後には病院長になるのか!」、「あのオペの研修中に血を浴びて卒倒した医学生だった田口公平が今度の主人公?」・・・と、急にヘタレな田口君に親近感が芽生えてきた。とはいえ映画は、田口は田口でも「田口公子」で竹内結子が演じる心療内科の女医とのこと。男ばかりじゃ華がないとアレンジが加えられているとなれば、雰囲気は大分違うのかもしれないね。 それでも映画のチラシでは『ブラック・・』に登場した何人かの名前も見受けられ、核心とは無関係ながらも予備知識になった事には違いない。おかげで映画も原作もとても楽しみになってしまった。

偶々とはいえ、奨めてくださったあかん隊さんには、今更ながらも改めて御礼を言いたいと思う。ありがとうございました(^^)

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コメント

いやいや~。(^^;)
読破なさいましたか? 『チーム・バチスタの栄光』は、実におもしろいんですよ。もし、映画をご覧になるなら、原作は後回しにした方がよいでしょう。『チーム…』に続く本は、それぞれで、やっぱり『チーム…』には勝てない雰囲気でした。でも、『ブラック・ペアン』は、続編(?)の中でも、一番良かったからお勧めしました。

最近、映画を観ても、なかなか記事にできずにおりますが、頑張らないと!(笑)

あ、そうそう、そういえば、例のお品、いつ頃ご入り用ですか? ご連絡をお待ちしています。

投稿: あかん隊 | 2008/01/23 22:32

■あかん隊さん、こんにちは♪
2ヶ月も放置してしまいましたが、無事?読み終わりましたー(^^)
読み始めたら面白くってあっというまでした。
個性的なキャラがいいですねー。
世良君は流石に「青いな~」でも、青臭過ぎないところが良かったし、歯に衣着せぬ高階先生の好感度が高めかな?やることはやるし。(やや腹黒そうだけどw)
「チーム・・」は文庫を買って、映画の後に読むことにして、後のは様子を見ながら読み進みたいと思ってます。

>なかなか記事にできずにおりますが
ぱったり更新が途絶えてしまってますよねぇ(^^;
忙しいのに無理をすることはないと思いますが、映画の感想は楽しみにしていますから~ボチボチでも拝見できると嬉しいです。

お品は・・なかなか良い機会がなくって。
追ってご連絡させていただきます!

投稿: たいむ(管理人) | 2008/01/24 00:33

こんばんは♪
お気に召したなら是非シリーズ読破を目指してくださいねっ!
たいむさんは映画をご覧になる予定のようですね?
私は田口医師=竹内結子って聞いたときから脱力なんです(泣)
あと、白鳥っていう登場人物も阿部ちゃんのイメージじゃないんですよねぇ。
映画どうしようかなぁ。グズグズ・・・・。

投稿: ミチ | 2008/02/05 19:52

■ミチさん、こんにちは
とりあえず徐々に、かな?
実録っぽい作風が読みやすいので、読み始めたら一気できそうな本なので。

映画は見ますよ~。
竹内結子はともかくとしても、誰にも思い入れがないので、すんなり見れそうですもん(^^)
ネタバレなしのようだったので見たメイキング特番は面白かったですしねw

さしあたりミチさんは様子見?ま、評判を聞いてからでも遅くはないんじゃないかな?
今週は「L」がTOPでしょうし(爆)

投稿: たいむ(管理人) | 2008/02/05 21:47

こんにちは!
グズグズしておりましたが、やっと感想をupしました(早速絵文字で楽しむ私・笑)
たいむさんは本作を楽しまれたのでしたら、絶対チーム・バチスタを読んでもらいたいです。
スッゴク面白いですよ~
映画はちょっとキャストの面で心配なのですが・・・(主役の田口先生が何故か女性になっていたり・泣)、観に行こうと思っています。
映画がどんな結果になっても原作は面白いですよ~

投稿: 由香 | 2008/02/06 16:59

■由香さん、こんにちは
予告どおりの訪問感謝ですw
バチスタは間違いなく読む予定です(^^)
そろそろ買って準備しようかと思っていたところですし。

映画は普通に楽しみにしています。
田口が女でも、気になりませんし(笑)
みなさんキャストが微妙とおっしゃっていますが、おもいっきり違った作品として楽しめると良いですね~。

投稿: たいむ(管理人) | 2008/02/06 19:47

たいむさん、こんばんは!

こちらを先に読むと高階院長のイメージは全然違いますよねー。
僕は「バチスタ」を先に読んだので、すっかり「古狸」イメージです。
この作品のいろいろと桜宮サーガは続いていますね。
意外なところに意外な人物が登場したりして、それもおもしろかったりします。

投稿: はらやん | 2010/04/22 22:37

■はらやんさん、こんいちは
そうなんです。高階先生カッコイイ!って思ってたのに・・・えーなんで黒ダヌキ?ってね(><)

>桜宮サーガ
同じ時の流れにある相関関係とかは京極ワールドにも似ています。ちら名前しか登場しなくても、なんか嬉しくなりますよねw

投稿: たいむ(管理人) | 2010/04/23 21:11

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