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2007/11/08

NHK:プロフェッショナル「長崎尚志」

11/6の放送はフリーの漫画編集者であり、原作等も手がける長崎尚志さん。出版社勤務の頃から漫画家:浦沢直樹さんの担当をされており、『MONSTER』や『PLUTO』など、私が贔屓にしている作品にも携われているという。そう言われてみれば、同じく”プロフェッショナル”での浦沢さんの回にチラッと登場していたようにも思う。・・・が、私は長崎さんという、名前が表舞台に登場しない編集者の存在と貢献度の大きさを知らなかった。そもそも漫画編集者の仕事内容がどんなものかを知らなかったからなのだが・・・。

私の漫画編集者のイメージは、基本的には作家や漫画家の原稿依頼から回収、飴とムチで作家をバックアップ・・程度なもの。それも間違いは無さそうだが、そんな誰にでも出来そうなものではなく、企画からアイディアの捻出、編集・校正に至り、作品が世の中に発表されるまでの一切合切を取り仕切り、ほとんど共同原作者に匹敵するくらい密接に且つ具体的に作品と関わっているものらしい。言うなれば「絵を描かない漫画家」とのこと。読者の視点に立ち、常に読者が求めるモノが何か考える。読者に「たかが漫画」とは言わせない作品つくりに心血を注ぐ。読者に「何を見せたいのか。何を訴えているのか。」を的確に捉え、その部分がより際立つ演出や修正(読みやすさ)を加える。
読者の視点(感覚)と作者の視点、そして客観的な編集者の視点を併せ持ち、熟知している長崎さんだからなせる業かもしれないが、なかでも理にかなった”視線誘導”の技は見事なものだった。吹き出し内のセリフ文の切り方、位置、文字の大きさ等、絵とのバランスを考慮に入れながらミリ単位の修正を施す。こだわりに妥協はない。
・・きっと私などは、思惑通りに読んで、泣いて、笑っているのだろうな(^^)

長崎さんの言う、面白い作品を作るための極意は2つ。
「わかりにくいものを選ぶ」。そして「裏切りながら、安心させる」とのこと。これには大きく頷いた私だ。
「よくわからないもの」・・・今の読者は頭が良く複雑なものを好む傾向にある。わかりにくいものをわかりやすく描くことで読者の気を引き、満足させることが出来るということだ。
「裏切りながら安心させる」・・・大抵の読者は自分で先の展開を(自分に都合の良い形で)予想している。しかし予想どおりになってはつまらなく思うのが読者。予想に反した展開は読者に刺激を与え作品を活性化させる。それでも読者は、最終的に自分の希望に添った決着をどこかで望んでいるもので、途中何度裏切られても最終的な着地点は一緒になることを期待し、作者がその期待に応えた場合、多大なる満足感を得られた作品として評価してしまうものだという。
さすがは「読者心理」を知り尽くしている。私は間違いなくどちらにも当てはまっている。
小難しかったり、奥深かったり、専門的な分野を扱ったテーマの作品が好きで、面白いと思う作品には必ず「敗北感」が付きまとう。敗北感の大きさがバロメータと言っても良いかもしれない(「感動」も「敗北感」が増幅させていると思うので)。 もちろん絵も重要。必要以上に丁寧でなくても良いが、イケメンはイケメン、美人は美人でなければダメだし、前後を感じさせる(人生のある)表情や動作表現のリアルさは必須。
もちろん、これらは私に限った事ではないだろうし、どんな作品にでも求められるものと思う。こうした「読者心理」を知リ尽くしていなければ、編集者など勤まるワケがないのだが、この2つの極意は、本当は極意などではなく、おそらく基本(当然)として長崎さんは挙げられたのだと私は思う。基本に忠実であることが極意。まったくその通りで、それを知る長崎さんは「プロ中のプロ」だと思う。
現在は編集者の仕事の他、原作の執筆、新人漫画家の総合的な育成(コーディネート)という新たな取り組みを同時進行中とのこと。なかなか前途多難で思うように行かないこともしばしばなようだが、きっと上手くいく、そんな気がしている。

「”プロフェッショナル”とは、過去の実績・栄光に縋らない人。縋らないから次がある。」という長崎さんの言葉で番組はしめられた。
それでも、私は思う。「この人が関わった作品なら間違いない!」
そう納得させられるだけの日々の変らぬ努力と、長崎尚志という人間の器量を、しかと感じさせて貰ったから。

再放送:11/13(火)NHK総合:02:25-03:10 (大相撲の為、変則になってるようです)

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コメント

たいむさん、こんばんは。
私はこの長崎尚志というかたは知らないのですが、たいむさんの記事を見て「番組見たかったー」と純粋に思いました。

>「裏切りながら、安心させる」
名言ですね。ただ、言うは易し、行うは難し。
恐れ多くもプランナーとして仕事をする立場ですが、ユーザー視点をシュミレートして、この「裏切りながら安心させる」なんてのはなかなかできることじゃないです。
ジャンルは違いますが、こういった方の話には刺激を受けますねー。ああ、見たかった。。。

投稿: GAKU | 2007/11/08 23:25

■GAKUさん、こんばんは♪
私も知らない人だったのですが、新聞の番組紹介を見て予約しておきました。
見応えのある番組でしたよー。

>「裏切りながら、安心させる」
名言ですねー。大きく頷いてしまいましたから。
余韻の残るラストは良いのですけど、広げた風呂敷を畳まない(畳めない?)、伏線は張りっぱなしもしくは活かせていない。そんな作品には何度もガッカリさせらせてますしね。
この方は、ちゃんと実績があるだけに言葉自体に重みが感じられました。

で、朗報です。
ウッカリしてましたが、再放送、ありますよ!
相撲シーズンで再放送が変則になってます。
NHK総合ですし、誰でも見られます!
ここに書いていないこともまだまだあります。是非録画の準備を(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2007/11/09 17:23

たいむさん、こんばんは。
再放送の情報、ありがとうございます。
早速ビデオ録画の予約をセットしておこうと思います。
またお勧めの情報があれば、教えてくださいね。

投稿: GAKU | 2007/11/10 01:08

■GAKUさん、こんばんは♪
お名前の件は驚かせてしまったかな?
意外な盲点に気がついていない人って多いですよ(^^;)

投稿: たいむ(管理人) | 2007/11/10 18:00

たいむさん、こんにちは。
再放送、録画できました。
放送を見た感想は一言「いやー、ええもん見せてもらった!」
長崎さんのプロ根性にとても刺激を受けるとともに、あそこまでやらないと本当のプロにはなれないんだという厳しさも教えてもらえたような気がします。

印象的なのは、たいむさんの記事に書かれていたこととあわせて「自分がある意味、盲目的にでも“これは良いんだ”と言い切れる自信がなければ、相手にもそれが伝わってしまう」という言葉。仕事は違えど、同じことは自分の仕事でも言えるなぁ、なんて考えさせられることが多い番組でした。
情報ありがとうございました。

投稿: GAKU | 2007/11/17 09:29

■GAKUさん、こんばんは♪
わざわざのご報告?ありがとう(^^)
正しく、プロ根性の塊にような方でしたね。
>“これは良いんだ”と言い切れる自信
これは浦沢さんも同じようなことを言ってました。
「自分が面白いと思えば、絶対に読者も面白い!」みたいな。
どちらも”いずくんぞ・・をや。”の世界ですよね(笑)
ものすごい自信家だと思うけど、そのくらいじゃないとアーティストにはなれませんよね。

私はクリエイト的な仕事はしたことがないので、ちょっとニュアンスが違うけれど、仕事はいつも自画自賛しながらやってますよ(^^)

再放送に間に合ってよかったです。

投稿: たいむ(管理人) | 2007/11/17 17:26

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