『おおきく振りかぶって』 (1-8巻)を読んで。ぱーとⅡ
アニメと漫画の違いは前回書いたとおりだが、原作は戻ること、見直すことがラクチンであることをまず追加したい。原作では「何巻のどのあたりのどの枠のあたり」というストーリーの流れとの紐付け不可欠だけど、イメージとして文字や形を記憶として残しやすいんだよね。(流れっぱなしのアニメだと拾い難い)
例えば、夏体の”やぐら”。アニメでは初戦(桐青戦)までの予定しかないから、他のシード校がどの位置にいるか等はさほど重要視されていないけれど、原作ではそれなりに描かれていて、泉の説明が概要を補足していた。(説明はアニメもほぼ同じだが)
後々を考えると”抽選会”は、単なる初戦の対戦相手の発表ではなく、泉の説明と合わせて、今後の展開に於ける重要な”布石”となっていた事が分る。それは、原作者には先の想定があるわけで、いざ桐青戦に勝利してみるば、あの時点での前提(今後の展開予想と登場予定キャラ)を泉に語らせておいたのだと良く分る話だ。改めて読むと「ははぁ~」という気がしてくる。初読ではさすがにそこまで頭が回らなかったから、前回、「今後のゲーム展開予想はまるで想像が付かない」と書いた。けれど「そうでもないか?」という気がしてきた。(もちろん、三橋君の成長が全ての鍵を握る部分は同じであるが)
まず、今更ながらに気がついたのが、出場校は”170校”であり桐青が「85番」であること(西浦「84番」でもいい)。という事は、西浦は「170番」である最有力優勝候補(泉予想)“ARC学園”とは”決勝戦”まで当たらないことが分る。当然、「同じ山に入っちゃいましたね。」と言っていた榛名の“武蔵野第一”とも当たらない。しかし、これまでの話で西浦と他校とが因縁めいて描かれているのは、榛名と阿部のエピソードだけ。三橋と榛名の接触もあったしね。(田島君と利央もあるけれど、決勝前の経過だろうと予測)
長い長い戦いの末、希望とも言えるまさかの決勝戦があるとしたら、「西浦VS武蔵野第一」しかなく、その試合こそが、『おお振り』(もしかしたら第一部)のラストではないかと予想ができるということだ。バッテリーの対決。投手同士の対決。そして甲子園。一番盛り上がるシチュエーションで燃える(萌える)話だ。(出来すぎな話にはなっちゃうけど、マジでお願いしたくなってしまうなぁ)
次に、どうしても引っかかるのが、『ケガも病気もしない』という阿部君の発言。三橋のポジティヴな発言を助ける為に思わず言ってしまったのが発端で、三橋の頑張りに応えるための阿部のせめてもの恩返しであり、本心だとは思う。思うけれど、試合中の興奮もあり再び阿部君から当たり前のように言い放たれ、三橋君も約束を忘れていない言葉に安心するという、実はあまり宜しくない状況に陥っているように思え、悪い方向への伏線的な意味合いを感じてしまうのよね。モモカンが、あの時の会話の内容を聞き逃しているにも関わらず、状況判断から「良いこと」としてしまったことに引っ掛かりを感じた私で(コミュニケーションの話は納得だけど)、話自体には「ありえんだろ~」って突っ込んでいた私だったからね。
大会を勝ち進めば、バッテリーは当然対戦校に研究され、西浦バッテリーが“キャッチャーの采配ありき”であることが看破されてしまうのは時間の問題。ならばキャッチャーさえ居なければという「阿部潰し」の発想は、誰でも簡単に思いつくことだろう。もちろん、故意にケガをさせるような卑怯があってはならないと思うし、やらせる監督が居るとしたら大問題だと思う。しかし、実際の野球でも、作戦としての「待球」(=事実上のピッチャー潰し)が暗黙の了解とされていることを考えれば、守備ではホームでの体当たり(タックルされたら・・なんて本人も言ってたし)、攻撃では危険球(デッドボール)など、故意ともいえない故意が有り得ないとは言い切れない。もちろん本当の“事故”も含めてである。(嫌だけど)無いとは言い切れないというか、むしろ有り得ると考えるほうが妥当な気がする。そこで三橋君が一緒に潰れてしまうか、奮起して田島君と乗り切るかが、次なるステップへの足掛かり、可能性ではないかと思ってしまうからね。
(ホントのホントは阿部君の事故は考えたくない。雰囲気の悪い、意地の悪い展開が想像できるから。けど、三橋君がもう一皮剥けて大化けするチャンスはこれしかないっ!思うわけで、妄想なのに葛藤してしまう私だ・・・^^;)
とりあえず以上2点が、特に再読から思いついた考え。先にも書いたが、雑誌はまったく読んでいない。もしもまったくのトンチンカンでも「考えすぎ~」って笑って許してね。(逆に、もし的中していたら絶対に教えないでね。)
軽い話題では、田島君の「ゲンミツ」。「ゲンミツ」がすっかり口癖になっている田島君だけど、この「ゲンミツ」は榛名の「厳密に80球」からきていることを再読で再確認した。しかも、田島君言うの「ゲンミツ」の意味は、本来の「厳密」という意味ではないということも、使い始めた経緯を追っていけば「ああそうか」となる。「ゲンミツ」とは、基本的には「絶対」という意味で使用。そこに「じっくり」とか「ちゃんと」、「しっかり」が同義として添加された感じだね。どこか言葉(会話)として噛み合わない感じも、このように置き換えてみればすんなり意味がとおるようになるははず(^^)
ついでに、田島君のモデルは「長島茂雄」かな?と思うのは私だけかな?(イメージ的に) 阿部君の分析どおり、三橋君と阿吽に通じているのは、今のところ“感性”の鋭い田島君だけで、いろいろな意味でキーマンなのだよね、田島君は。
(三橋君にとって)阿部君の次に倒れられたら困るのが田島君。けど桐青戦で田島君は故障したっぽいし、この先嫌な雲行きにならないといいのだけど・・と、明るいアニメの最終回とは裏腹に、(上記も含めて)どうも心配になってしまうなぁ。
最後に、久しぶりに現実の野球の試合を見て、野球ってやっぱり目立つのはまずピッチャーで、勝っても負けてもピッチャーなんだよなーとふっと再認識した。『おお振り』で、アノおどおどな三橋君を見続けていると、三橋君がどんなにスゴイことをやっていて、どんなにスゴイ子なのかを忘れてしまうのだけど、本当に本当は2ケタ三振を奪うスゴイ投手なんだよね三橋君は。守備だって悪くないし。(バッティングは最低だけどw)
8巻での「ひとつ勝って」のエピ。桐青戦での各自の総評は、ほとんどが投手の頑張りを賛辞するものだった。スポーツニュースでも、名前を挙げるのは「1年生ピッチャー三橋の奮闘」。あの試合ならそれが「普通」(あたりまえの評価)で、試合中の掛け声も、特別三橋をかばうものではなく、投手が誰であっても野手として「フツー」の言動なのだと教えるあげるみんなだったね。(それでも)飲み込めない三橋君なのだけど、実は、私もちゃんとは分っていなかったかもしれない。嫌いじゃないのに何故か今ひとつ”三橋君のスゴさ”に実感が湧かなかった私。とにかく、結果(表面)だけを見た場合と、裏まで知り尽くしている場合とで、こんなに印象が異なるものかとちょっと愕然としてしまった「ひとつ勝って」だった。西浦ナインは、三橋君の裏を知りながらも、(阿部君の思惑通りに)三橋君を評価し、バックを守りながら実感していたんだね。(ごめんよ、レンレンw)
やっと私も三橋君のスゴさを痛感し、阿部君の強気な「完封」発言だって心から「もしかして」って思えてきた。とはいえ結局は、「三橋君成長次第」って話がループするのだけど、ならば尚の事、成長してもらわねば!って思い、可愛さ余って(阿部君同様)三橋君を攻撃してしまいそ~(笑)
『おお振り』は等身大なのだけど、微妙に『ファンタジー』が入ってる感覚で見ているところが私にはある。みんな良い子で、いい人ばかりだしね。ずっとそうであって欲しいと思いつつ、三橋君の成長には荒療治も必要・・・。『ファンタジー』過ぎになっては茶番劇にもなりかねないから上手く纏めていただきたいと思う。(それでも卑怯・無礼・下品は極力避けて欲しいと思う気持ちは変らないが。)
読めば読むほど、感想にフレが出てきてしまう作品。明日になればまた違う思いが沸き起こるかもしれない。そんな『おお振り』は、私にはまだまだ旬であり、これからもずっと葛藤しつつも楽しみたいと思っている。(まだ最終回もみてないしねw)
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コメント
パートⅠとⅡ、どちらも読みましたが…
なんとするどい観察眼!
さすがたいむさん!と思ったのですが、触れるといろいろとネタばれしかねないので内容については触れないでおきます(笑)
と、言いつつひとつだけ。
個人的にもプロテインの話のカットは妥当だと思うのですが…
あの最後のまずいプロテインを飲む三橋たちのシーン、花井が面倒をみてあげてるんですよね。
こういう細かい描写あっての、その後の部長決定だと思うので…カットはもったいなかったなと思っちゃったり。
最近DVD4巻が届いて、ちょうど阿部と榛名の過去バナのところだったのですが。
秋丸の榛名への想いとか、榛名の阿部への想いとか
(といっても榛名はいろいろ無自覚なので秋丸のモノローグから探るしかないわけですけど)
やっぱり人間関係に心震わされるなぁ。
もちろん試合もすごくドキドキハラハラするわけですけど。
試合中も無邪気に喜んだり、あせったり怒ったり泣いたり。
なんだか高校生にしては幼くて純粋でキラキラしててちょっと恥ずかしくって。
でもそういうところにやっぱりおもしろさを感じてしまうみたいです。
この傾向はずっと変えないでほしいものですね。
今月のアフタヌーンに9巻は鋭意準備中。とあったので来月号には発売日が発表されるかもですよww
ひぐち先生はながーく連載する気満々な模様なので、あたしもずっと着いていく所存です(笑)
投稿: きりん | 2007/10/04 02:11
■きりんさん、こんばんは♪
ながーい自己満足記事に付き合ってくれてありがとう!
この作品、見てると自分の高校時代の部活とかと被って想いが溢れて来ちゃうのよね。
バスケなんだけど、伝統有る(地元では)強豪校で先輩も後輩もいるけど、自分の学年はたった8人しかいなくってね。しかも一人はマネジだし。西浦みたく、全員が仲良かったんだ(今も)。私が『おお振り』にハマッた理由はここにもあるかなー。個人的にノスタルジーを感じちゃうんだ。
高校の部活で綺麗事ばかりじゃないっていうのも良く知ってる。”自殺点事件”っていう、話せば長い高校生にあるまじき汚い作戦決行が実際にあったのね。(ウチの学校じゃないけど)
”魔”が差せば、いつでも誰でも何でもありうるコワイ世界なんだよね、スポーツって。勝ちたい・勝たせたい一心からなのだろうけど、後味の悪さは果てしなく、一生の汚点になるってのにね。
そんなこんなで、阿部君絡みの発想がどうしても頭をかすめて書かずにいられなかった次第です。
きりんさんは雑誌も読まれてましたよね。単行本まで先のネタバレはよそうと、あの記事は読まないようにしていたのだけど、TOPページでの数行やコメント返し時のきりんさんのお言葉から、「三橋君と阿部君の絆が一層深まったかな?」なんて想像をめぐらせていました。
花井君のバットで”こんこん”のエピ。私も好きですよ。
原作は原作なだけあって、随分と補完させてもらいました。あのエピこそ”全会一致”の強い裏付けでしたよね。確かに。ほかにも原作では随所に垣間見られるのだけど、花井君の”主将の資質”が描かれた細かな部分はアニメではことごとく簡略化されてしまって、花井ファンにはさぞかし残念なことでしょうね。
秋丸君は私にはちょっと謎なキャラ。榛名とかなり仲が良いけど、阿部君に匹敵するくらいのキャッチなのかな?
武蔵野第一の番外編を読んで、榛名が悪い子じゃないのは分かるし、阿部君を気に入ってるのもわかるけど、やっぱり無自覚は無神経だと思うし、80球は事実。阿部君は真面目で真剣な子だから、榛名に対して卑屈になるのも分かるし、同情のほうが強いかなぁ。(阿部好きのためw)
>なんだか高校生にしては幼くて純粋でキラキラしててちょっと恥ずかしくって。
ですよね。ちょっと子供っぽいかな?とも思うけど、純粋さというより、純情が素直にカワイイ。
それでも高校生には高校生なりの人間関係があって、思春期の人間模様を上手く表現してるなーって私も思います。
少し非現実的でナインは理想像を描いている感じはあるけれど、そんな夢のようなドラマのなかにリアルを垣間見て共感する。『おお振り』はそれくらいで丁度良いかと思ってますw
>今月のアフタヌーンに9巻は鋭意準備中。
うぉ!そうですか!待ち遠しいですね!
>ひぐち先生はながーく連載する気満々
気持ちは分るし、嬉しい事だけど、ドカベンクラスは避けて欲しいなぁ...なにせ月刊誌なワケだし(^^;)
文字数制限がないので、ツイいっぱい書いちゃいました。
『おお振り』を語り合えるのって、きりんさんくらいしか居ないものですから・・・(^^)
記事も含めて、ホント、読んでくれてありがとう!
投稿: たいむ(管理人) | 2007/10/04 18:25