「河童のクゥと夏休み」みた。
これといって不満はないけれど、とびっきりご機嫌でもない毎日。なんとなく同じペースで生き、同じものからはみ出さないように暮らす。そんな日常に舞い込んだ非日常。同じものから違うものへ、立場が変って初めて気がつくことができる何か。
寂しくて悲しくて、でも優しい物語。忘れてしまったこと、見過ごしてきてしまっていたことに気がつかせてくれるような、愛のある作品だった。
(以下、若干ネタに触れています)
普通のサラリーマンのお父さん。(たぶん)専業主婦のお母さん。小学生高学年の康一と(嵐を呼ぶかもしれない)幼稚園児の妹、そして「おっさん」という名前の老犬が一頭。東京の郊外にやっと念願のマイホームを手に入れたような、ごくごく普通の核家族が上原家だ。
康一の通う小学校もふつうにイジメがあり、康一も出来れば関わりたくないと思っているその他大勢な男の子。家庭内でも「仕事が・・」を言い訳にする父。愚痴っぽくなってる母。主役は自分でなくちゃ気がすまない妹。そこに康一が河童(クゥ)を拾ってしまったことから、物珍しさに早々に帰宅する父。末っ子の座を奪われた不満を新参者に当り散らす妹。どれもこれも言動の一つ一つ、仕草までもがとても自然に描かれ、「そうそう、あるある」と思わず自らを振り返り、笑みがこぼれてくる。”日常”を描きたいと宣言されていた原監督なだけに、さすがこだわりが良くわかるし、とても出来ている。
クゥと康一、上野家の穏やかな日々は長くは続かない。やがて「クゥ」の存在が世間を賑わすのはお約束。執拗に追いかける記者やレポーター。そこも”お馴染みワイドショー”そのものという”日常”であり、リアルだ。騒動や反応を、こうして傍から見れば馬鹿馬鹿しくて不愉快にも思うけれど、誰しも覚えがある言動であり、光景ではないだろうか。だから、クゥを守ろうとしていていながら、逆とも言える悪気のない上原家の態度も、ちょっと解かる気がしてしまう。
恐怖で逃げ出したクゥが東京タワーを登るシーンは、何もかもが『キングコング』と被り、悲しくなってしまう。もちろん戦闘機は登場しないし、クゥも戻ってくる。けれど、東京一円を見渡して「ここは人間の巣だ」(自分が生きる場所ではない)と悟り、”生きる”覚悟をしたクゥに泣けた。とにかく、掛け替えのない犠牲も含めて、この一連のエピソードを綺麗事にしなかった原監督に拍手したい。
当然のように別れは突然やってくる(これもお約束)。芽生えた友情や絆。別れのシーンは無条件で泣ける。でも、ここでは終わらず、クゥの意外な新天地がきちんと描かれ、締めくくられている。それがとてもあたたかい。希望に満ちている。嬉しくなって最後の涙をこぼした私だった。
感動・・というよりは、嬉しいまま席が立てる映画が好きだ。この作品はそんな作品だった。一言でいうなら「思いやりのこころ」。何にでも、誰にでも、いつまでも持ち続けたいものだ。
総評:★★★★☆ 好き度:★★★☆++ オススメ度:★★★☆☆++
やはり約2時間半の大作。子供に媚びない作品なだけに小さな子供には向かない。前半には子供向けの笑いもあるのだけど、後半は寝ちゃう子、飽きて騒ぎ出す子が続出していた。
毎度タレント声優には否定的な私だけど、今回は悪くなかった。(特にゴリ。彼の方言は素敵だ。) 子供は子供が演じていたのも自然で良い。逆に、ほんのちょい役にそうそうたるメンツ(本職の声優さん)が代わる代わる登場するのに気がついてしまい、瞬間的に意識がそれるのだけど、それはそれで楽しかった。(強いて言うなら、藤原啓治&矢島晶子コンビに笑った)
そうそう、入場特典で「キュウリのキューちゃん」という漬物を貰って苦笑い。初日にはどこでも配っていたのかな?(笑)
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» 河童のクゥと夏休み [八ちゃんの日常空間]
きっちり作ってきましたね〜。日本のアニメは世界に誇れるといいますが、この作品、技術的なことだけではなく内容もいいです。数年に一度の作品ではないでしょうか。 [続きを読む]
受信: 2007/08/11 18:48
» 河童のクゥと夏休み(評価:☆) [シネマをぶった斬りっ!!]
【監督】原恵一
【声の出演】田中直樹/西田尚美/なぎら健壱/ゴリ/冨沢風斗/横川貴大/他
【公開日】2007/7.28
【製作】日本
【ストーリー】
夏休み前のある日、康一は学校の帰りに拾った大きな石を家に持って帰り、それ... [続きを読む]
受信: 2007/08/11 22:17
» 『河童のクゥと夏休み』 [ラムの大通り]
----あれっ、これ携帯の写真だよね。
映画のシーンとは違う。どういうこと?
「うん。この前観た『河童のクゥと夏休み』が
あまりにも素晴らしくて
ちょっとロケ探訪してきたってわけ。
ここはこの映画の
重要な舞台となる黒目川」
----へぇ〜っ。でも確かそれってアニメだよね?
「そう。
あの大傑作
『クレヨンしんちゃん・嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』の監督、
原恵一初の“マンガ原作ではない”アニメ。
この映画は
東久留米在住の児童文学作家・木暮正夫の原作が基になっているんだ」
----ふうん... [続きを読む]
受信: 2007/08/12 00:39
» 河童のクゥと夏休み [Akira's VOICE]
笑顔と涙いっぱい。
[続きを読む]
受信: 2007/08/12 10:32
» 『河童のクゥと夏休み』 [アンディの日記 シネマ版]
感動度[:ハート:][:ハート:] 2007/07/28公開 (公式サイト)
笑い度[:ラッキー:]
泣き度[:悲しい:][:悲しい:]
切なさ[:失恋:][:失恋:]
満足度[:星:][:星:][:星:]
【監督】原恵一
【脚本】原恵一
【原作】木暮正夫
【時間】138分
【出演】
冨沢風斗/横川貴大/田中直樹/西田尚美/なぎら健壱/ゴリ/松元環季/
植松夏希
<ストーリー>
夏休み前のある日、康一は学校の帰り道で大きな石を見つ... [続きを読む]
受信: 2007/08/12 13:55
» 河童のクゥと夏休み [何書☆ねくすと]
評価:★!! クゥとオッサンに涙度:100%
評価表(★:絶賛! ☆:面白い! ◎:良かった♪ ○:普通 △:ややつまらない 凹:ヘコむ :観ちゃいけない)
『あらすじ』
学校からの帰宅途中、... [続きを読む]
受信: 2007/08/12 19:44
» 『河童のクゥと夏休み』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「河童のクゥと夏休み」□監督・脚本 原恵一 □原作 木暮正夫(「かっぱ大さわぎ」「かっぱびっくり旅」)□キャスト(声) 田中直樹、西田尚美、なぎら健壱、ゴリ、冨沢風斗、横川貴大、植松夏希■鑑賞日 8月19日(日)■劇場 TOHOシネマズ川崎■cyazの満足度 ★★★☆ (5★満点、☆は0.5) <感想> 人間が犯して来た環境破壊へのメッセージを、河童のクゥと、クゥを発見したある家族とのひと夏の触れ合いを通して描いていく作品だ。 客席はやはりファミリー層、特に母親と小さな子供... [続きを読む]
受信: 2007/08/23 12:32
» 映画 【河童のクゥと夏休み】 [ミチの雑記帳]
映画館にて「河童のクゥと夏休み」
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』などで高い評価を受ける原恵一監督が、5年の制作期間を経て完成させたアニメ超大作。
おはなし:夏休み前のある日、康一が学校帰りに拾った石を洗っていると、中から河童の子供が現れた。クゥと名づけられた河童は人間と同じ言葉を話し、初めは驚いた家族もクゥのことを受け入れ一緒に暮らし始める。
夏休みとあって劇場には子供の姿が多かったですけど、このお話は大人の心にこそ響く物が多かったように思います。
冒頭の江戸時代のエピ... [続きを読む]
受信: 2007/08/27 10:59
» 河童のクゥと夏休み [Movie] [miyukichin’mu*me*mo*]
映画 「河童のクゥと夏休み」(原 恵一:監督)
を観てきました。
いいという評判は耳にしてましたが、
期待以上でした。
ものすごく、ものすごくよかったです!!
子ども向けだとバカにせず、
ぜひ皆さんに観ていただきたいです。
クゥがたまらなくかわいいです。
声もGOOD!
冒頭から泣かされてしまい、
途中もところどころで泣き、
最後はエンドロールの主題歌を聴きながら
まだ涙が出てきてました。
映画館出るときには、目が腫れてたくらいです^^;;
泣かせる映画=... [続きを読む]
受信: 2007/09/02 01:32
» 河童のクゥと夏休み [創作といろいろ]
我が町、東久留米市が舞台のアニメ映画です。
もうほんとに東久留米が盛り沢山~!
川沿いも神社も線路下も駅も…
み~んなそっくりそのままで、テンション上がりました☆
江戸時代に地割れにのまれた河童が現代に蘇る話ですが
その化石状態が発見されるのが、私も馴染み深い黒目川♪
そのせいかとても感情移入できて感動しました(^0^)
実は東久留米の絵が目当てで
あまりストーリーは期待せずに観に行ってみましたが
ストーリー構成もなかなか良かった!
環境... [続きを読む]
受信: 2007/09/03 20:49
» 「河童のクゥと夏休み」映画感想 [Wilderlandwandar]
カッパだの、竜だの、ぬかすな! 有りがちな子供向けの映画で、見たらとっつぁんに上 [続きを読む]
受信: 2007/09/09 15:08
» 第11回文化庁メディア芸術祭受賞作品が決定 [ひねもすのたりの日々]
公式サイトはこちら。各部門の賞は以下(公式ブログより引用)=========== [続きを読む]
受信: 2007/12/04 20:09
コメント
たいむさんこんばんわ♪TB&コメント有難うございました♪
子供は純粋にクゥ目当ての鑑賞かもしれないので、後半のシリアスな展開は確かに眠気を誘ったり『飽き』を誘発するかもしれませんね。自分が観ていた時も落ち着きの無いお子ちゃまがちらちら目に付いていたのを覚えています。
クゥはラストにキジムナーのおっさんの所で新たな生活を始めてホッとしましたけど、自分はその前のコンビニの兄ちゃんが妙にうさんくさくて、『この兄ちゃんが最後にとんでもない事やらかすんじゃないだろうか・・』なんて事も思ってしまい、康一のようにちょっとびくびくしてしまいましたね(笑
投稿: メビウス | 2007/08/11 22:28
■メビウスさん、こんにちは♪
コンビニの兄ちゃん、あやしかったですね(^^;)
でも、その前に「ワレモノ」じゃなくていいの?ってドキドキでした。思い出してくれてホッとしたけど、「生モノ」だし、クール便(冷蔵)はいいの?とか少し(笑)
大泣き作品じゃないけど、じーん残る作品でしたね。
投稿: たいむ(管理人) | 2007/08/12 08:08
こんにちは♪
TB&コメントありがとうございました!
ほんと優しくていい作品でしたね。
かなり評判がいいですけど興行的にはどうなんでしょう?
こういう作品をたくさんの人に観てもらいたいなぁ。
画がもっとかわいければ客も増えそうだけど(笑)
僕も「キュウリのキューちゃん」もらいましたよw
でもキュウリが中国産だったので未だに冷蔵庫で眠ってます^^;
投稿: こーいち | 2007/08/12 14:00
この作品が単に「楽しい日々」を描いただけの作品なら
子供向けで終わっていたでしょーね。本当は、現実に起き
ている色々な問題から目を逸らして生きている大人たちが
観るべき作品。上原家の中では、ひーちゃんが一番リアル
なキャラに感じました(小さい頃のうちの妹にそっくりw)
クゥの声優の子、すっごい上手いなぁ~と思いました。
最初は、ベテラン声優がやってるのかと思ってましたしw
確かに2時間越えは、中学生?ふらいにならないとツラい
ですねw
投稿: たましょく | 2007/08/12 19:43
■こーいちさん、こんばんは♪
作画はちょっとカワイイとは言いがたいものでしたね。
宮崎アニメの魅力はそこにもありますしね。
映像はマッドハウスなだけに素晴らしいのだけどなぁ。
>中国産
ああ、気がついてませんでした。
でも、やっぱりどこでも同じなんですねwww
■たましょくさん、こんばんは♪
冒頭あたりは子供向けにしては少々鮮烈でしたね。
内容は大人がみて「アイタタタ」と思うものばかり。より多くの大人に見てほしい作品ですね。
>ひーちゃんが一番リアル
でしたね=。もうそこらじゅうに転がってる女の子の要素を全て持ってましたね。
クゥの声、上手かったですね。
ジョイ君を彷彿しました(笑)
投稿: たいむ(管理人) | 2007/08/12 20:50
こんにちは♪
終了ギリギリで見に行ってまいりました~。
アニメはなかなか触手が伸びず、「絶対おススメ!」という強力プッシュが無ければ見逃すところでした(汗)
いや~、これは大人向けでしょうね~。
子供たちには二時間越えはキツイでしょう。
トイレに立つ子がたくさんいて集中力をそがれました(汗)
あれはトイレに行きたいというよりも飽きてるんでしょうね。
河童のクゥの絵柄はワタクシ的にはオッケーで、「カワイイ!」とさえ思いました。
ここだけの話、香川さんに似てるなんて思っちゃった(汗)(汗)
投稿: ミチ | 2007/08/27 11:02
■ミチさん、こんばんは♪
どなたかにプッシュされましたかー(^^)
子供は、昨今の妖怪人気であり、”かっぱのくぅ”などという可愛らしいタイトルに騙されましたね(爆)
原監督でしたから、最初から大人向けと思って鑑賞しましたが、あまりにも小さな子供が多くって苦笑いしてました。
そそ、トイレじゃなくってつまんない。ですね。「もう、みたくないーっ」って聞こえきましたからww
子供向けでもある(大人な)アニメの場合、レイトショーに限ります。
私も今回は失敗でした。
>香川さんに似てるなんて思っちゃった
ぶははっ!
そう言われてみればそんな気も・・・
私も、クゥはOKです。
全体的に可愛くない作画、などと言われてもいますが、平凡・日常を描いた作品ならあんなものでしょうね。10人並みってねw
投稿: たいむ(管理人) | 2007/08/27 17:27
こんばんは♪
TB&コメント、どうもありがとうございました。
日常のいろいろな描写が、とても自然でしたよね。
強いメッセージを伝えつつ、けっしてきれいごとには終わっていず、
教訓くさいこともない。
すばらしかったです。
ラストもよかったですよね。
幸せそうなクゥを見て、ほんとうにうれしく思って、
またしても泣けてしまいました。
投稿: miyukichi | 2007/09/02 19:01
■miyukichiさん、こんばんは♪
ミエミエのお涙頂戴ではなく、全てにおいてごく自然。
メッセージを受け取るか否かも受け取り手次第みたいな作品でしたね。
>幸せそうなクゥを見て、ほんとうにうれしく思って、
嬉しくなって泣ける作品って大好きです。
ゴリのキジムナーに私も癒されました(笑)
投稿: たいむ(管理人) | 2007/09/02 22:47