『陰陽師~夜光杯ノ巻 : 夢枕獏(著)』 よんだ。
「もったいぶるのはおまえの悪い癖だぞ」と博雅に嫌味を言われながらも、確信の無いことは一切語らならいスタイルを貫く清明。全てを理解したところで”百聞は一見に如かず”とばかりに必ず博雅を巻き込み、本人の目で事の顛末を見届けさせて納得させる手法は、何よりも説得力がある。やはり清明が一枚上手。
博
雅が好まない「呪」の話を「呪」の話としてしなくなった清明、というのは少々物足りないのだけど、逆に博雅は無意識に自分から「呪」の話をしているわけ
で、そんな博雅に感心しつつ、無自覚さを愛おしくも思いつつ、「お前はすごい」と褒め称え心を開く清明、という図も悪くない。・・・やはり清明は博雅には敵わない、ということか?(^^)
『夜光杯ノ巻』は全体的に穏やかな雰囲気のお話ばかり。大半がシミジミなのだけど、「浄蔵恋始末」はホロッと、「魔鬼物小僧」はググッとくる。ま
た、博雅が鬼から貰った笛-”葉二”の活躍が多かったかな?お馴染みの蘆屋道満や、最近では一番印象深いキャラとなっている露子姫が一編とはいえ登場する
が嬉しい。ほか、かつて清明が関わった事件での登場人物がちらほらと見受けられるのも、長年の読者として懐かしく思う。そこでおぼろげな記憶を頼りに、書
棚のシリーズ本をパラパラとめくって「ああ、そうだった」とザッと読み直す作業がまた楽しい。
逆に、”初めて読む本”にするには、枠組みが出来上がってしまっているのであまりオススメ出来ないかな?けれど、もし興味を持ったのなら、シリーズ最初の『陰陽師』を是非にとオススメしたい。彼此20年近くも前の作品だけれど、まったく問題なしと太鼓判を押しておこう。
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