『フィロソフィア・ロボティカ』 櫻井圭記(著)
いやーさすがにすんなり、と言うわけにはいかなかったけれど、かなり興味深くてとても面白かった。
【”人称代名詞”を切り口に説き明かす現代日本ロボットの最前線。人文系ロボット文化論(「7&Y」より)】 なんて書籍説明がされているだけあって、固い内容といえば固いのだけど、例題としてあげられるモノが、どれも身近な(もしくは知っている)モノであることから、容易にイメージを湧かせることが可能であり、数多い注釈で、画像や櫻井さんの余談が添付されていることによって、とても理解しやすくなっていると感じられた。
はじめに現象(結果)から発生する「何故(疑問)」を抽出し、仮説を提示する。事象を遡り現在に至るまでの経緯であり、類似例を引用しながら、または反
対論をも踏まえつつ、多角的な検証を行った上で「何故」に対する結論を導き出しているのだけど、とにかく、科学者であり、哲学者であり、技術者であり、様
々な分野の様々な研究・開発・観察によって導き出された思想や更なる仮説、応用に着目し、共通点を見出すことで自己の仮説を証明していくという、極めて論理的な方法に
よって、自己の仮説を確信からの結論として締め括っている。
まったく、知識の豊富さであり、その情報量に脱帽である。膨大な文献や資料の調査及び収集がなされたであろうことは想像ができるが、とても凡人
には計り知れない。とにかくスゴイの一言。(こんなこと好きじゃないと出来ないよねぇ。)
例えば、”外部記憶装置”のそれを持ってしても、本来なら話について行く事すら不可能かと思う内容だったりするのだが、内容の難解さ複雑さを感じさせない、凡人(私)でも理解できる優しい文章によって纏め上げられているのが素晴らしく、感謝したい。(私が、多少なりとも個人的にロボットや「攻殻」の世界観に触れてきたから・・・というのはあるかもしれないけれど。)
事例として「AIBO」という名称が、「”アイ”ボ」、すなわち「”I”ボ」、という一人称が使用されている所から始まり、最終的には「wii」(WeでありI×2)という、「一人称の複数系」とは微妙に異なる「四人称」に着地する。「四人称」という分ったような分らないような(新たなる)「人称代名詞」の定義がポイントだ。
人間は、ロボットを擬人化することで自ら「I」であったロボットを「YOU」として捉えて二人称化する。更に境界は曖昧となりサイボーグのような「融合」を経て、全てが”共有”に近い「四人称」が成立していく。副題の『人間に近づくロボットに近づく人間』とはつまりはそういうことで、この結論に興味を持った方は是非この本を読んでみて欲しいと思う。
しかし、最後に人間の、”ヒト型ロボット”の研究開発とは、ロボットを”如何に人間に近づけることができるか”というロマン溢れるものなどではなく、”如何に人間とは異なっているものか”(ロボットは決して人間にはなれない)という証明の為のものなのかもしれない、と語られてる。それでも櫻井さんは「しかし・・・」と続けて”青い鳥”に夢を託すかのように文章を終わらせていた。
私も考える。人間はだからこそだと。”違い”こそが人間たり得る存在の証明として意識できる何かだと言うのであれば、例えば”ゴースト”という形も質量もないモノの中に”人間”を見い出しこだわりたがる人間、というものが理解出来る気がする。けれど、人間が違いを違いとして認識できるから、より人間に近いモノを作れるのもまた人間のみ、ということになるのではないだろうかと。
本の到着時、帯に書かれた瀬名さんの言葉から、私もそうありたいと書いた。(参照)
全体的に櫻井さんの仮説にイチイチ頷いていた私だった。私如きの読解力では、どれだけ本質を汲み取れているかは甚だアヤシイところではあるが、それでも読了した時は、ロボット開発とは粗探しとしての違いの証明ではなく、そこにあるのはどこまでも「希望」だと、私もそのように感じられた。
所詮、人間が作ったロボット(AIを含む)は人間が知っていることしか知らない。けれど、時にロボットは人間の知らなかったことを人間に発見させたりすることがある。そこに「ロボットとしての希望」があるのではないかと、私も”青い鳥”の飛翔を夢見たいと思った。これが私がこの本によって導き出した結論かもしれない。
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コメント
おお~! 読破されましたか。おもしろそうな本ですよね。
今、枕元にある教科書やらシラバスやら「積ん読」が、少しでも減ったら…読みたいと思います。科学的なことってロマンチック…なんですよねぇ。
投稿: あかん隊 | 2007/07/31 02:33
だいじょうぶ、トップランナーのスタジオには、タチコマはつれてきてなかったですから。ほかのロボットは、いろいろつれてきてましたけどね(^^)
投稿: A-ten | 2007/08/01 19:39
■A-tenさん、どもども♪
あはは、そっかw
でも、ほら、あのタチコマは「24時」の時に櫻井さんが連れてきてくれたので、実物を目前で見てるし触らせて貰ったから~
動いてる姿こそ、映像でしか見られなかったけどw
いつか再々放送してくれるかなぁ~
投稿: たいむ(管理人) | 2007/08/01 20:27