「ダーウィンの悪夢」みた。
いきなりスクリーンに登場する”人”の大きさ程もあるグロテスクな巨大な魚、『ナイルパーチ』。これが様々な出来事への発端ともいえる魚だ。
魚を見るのも触るのも嫌がる人でも、頭が落とされていれば、切り身になってしまえばとりあえずは平気、なんてことは良く聞く。また”白身魚のフライ”の魚の種類を考える人も、そうそういないのではないかと思う。実は、ナイルパーチは別名「白スズキ」として日本の食卓にも流通していた魚だったりする。(切り身になってしまえば、本当に鱈とか鱸とかと似ている。ただし今現在は別名での流通はNGのはず)
ひっきりなしに離着陸を繰り返す飛行機。
ヨーロッパから来る”カラ”の輸送機。そして加工品を積んで帰る輸送機。
輸送機のパイロットほか各クルー。
パイロット達の”愛人”。娼婦・売春婦。
ワニのいる湖を泳ぐ漁師。漁師の口には入ることのない魚。
”弓矢”で研究所を夜間警備する元兵士。
道で寝る孤児たち。弱肉強食。
工場の廃棄物(魚の残骸)を食糧として調達する人々。
不衛生な環境・有害物質・不健康・病気。
”生きるため”に戦争を望む元兵士。”生きる”とは収入を得ること。
無線機すら使用できない”空港の管制塔”。
中継地となる空港。ないにも等しい空港検閲システム。
暴力・虐待・ドラッグetc..ヴィクトリア湖周辺の無法地帯。
一見バラバラのそれぞれは、パズルのピースのように”ナイルパーチ”というキーワードからつながりを見せ始める。連動するすべての事象。
そこに、「”カラ”の輸送機の”積荷”」と「終わらないアフリカの紛争」をつなぎ合わせれば、自ずと答えは導き出されてくる。
悪魔のグローバリゼーション。貧しい国の、貧しい人々の更に足下をみたような国際支援。エビで鯛を釣り、エビすらも足だけ残して、おいしい身とダシの出る頭は回収するような周到な戦略。それでも社会の一部としてなくてはならないモノとして機能している。ありがたいものとして認知される。
”ナイルパーチの放流”。もはやそれすらも誰かのシナリオだったのではないかと、計りしれない恐怖を感じた私だったが、それは考えすぎだろうか?
『アンゴラの子供たちはクリスマスに武器を貰い、ヨーロッパの子供たちはブドウを貰う』
今では誰もが保身の為「見ざる・言わざる・聞かざる」を暗黙の了解とするなかで、重い口を開いたパイロット言葉が頭に重くのしかかっている。
そして、もしかしたらアンゴラの子供たちは、それを当たり前のように喜んで受け取っているのかもしれない、と思えてくるのだった。
ただ、知ることで精一杯だった。何をどう考えていいのやら未だ混乱している。
そんな、それほどの作品だった。
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コメント
こんばんわ☆
コメント&TBありがとうございました~!
確かに、知る事で精一杯でしたね。そこから今まで観てきたもの、勉強してきた事の裏側がこうなっていたのか。と多少疑心暗鬼にかられながら帰りの電車で考え込んでしまいました。
システムに組み込まれる事の怖さを知らず知らずのうちに実行していくナイルパーチ工場の方の視点とシステムの恩恵を同時に少なからず受けるストリートチルドレンの視点が違うのは当たり前で、それは決して相容れる事も無いのかなと思います。
世界には知らない事が多いですが、これも日本に当てはめると同じ絵が見えてくる事もあるのでしょうね♪
投稿: orange | 2007/02/23 05:53
■orangeさん、こんばんは♪
鶏が先か、卵が先か。もはや、それと同じくらいに難しい問題を見た気がしています。
単なる国力・経済力だけの問題ではなく、敵味方も相対的に変化するような、有りとあらゆるものの利害関係が絡み合ってしまっている現状ですね。
>ナイルパーチ工場の方の視点とシステムの恩恵を同時に少なからず受けるストリートチルドレンの視点
いろいろな視点によって違うもの。良くも悪くも既に成立してしまっているバランスを崩すことは、痛み分けではもうすまされない所にきてますし、正そうとしても結局不利益はいつも弱き貧しき者に降りかかるばかり・・・
何も出来ない私です。
投稿: たいむ(管理人) | 2007/02/23 18:35
こんばんは。
私は昨年NHKBSで観ました。
滋賀県の琵琶湖が外来魚によって従来の生態系が崩されつつあり、
この映画ほどではなくても悪夢が現実になりつつあります。
主婦の私にとって安い食材は歓迎するものですが、
自分の口に入るものがどこから来ているか、
頭において買わなきゃいけないなと思いますね。
投稿: shamon | 2007/02/23 19:47
ちは(^^)
たしか、年末年始あたりにBSで放送していたドキュメンタリーかな?
2回くらい放送あったような記憶があるけれど、これだったかなぁ。
でも、最初と最後くらいしか見てないです(ちょっと長そうだったから)
やっぱり長編は家のテレビじゃだめですね。チャンネルかえたりするし。
映画館だと他に選択肢ないから、観ることに集中できるけど(^^)
内容は記事を読むとなんとなく察しがつきますが、いやぁ、「血+」って
よくできたアニメだったなあとあらためて思います(なんじゃそれ)
D67の経路などストーリーの背景でナイルパーチなみにリアルだった。
藤咲監督ブラボーといまさらながらに思いました(笑)
話が脱線してすんませんm(__)m
投稿: A-ten | 2007/02/24 00:37
■shamonさん、こんなところにまでいらっしゃいませ♪
>NHKBS
完全に見逃してました(^^;)
全編を放送したのですが?。。。ちぇっ余計な出費...(←オイオイ)
外来魚による生態系破壊という部分に焦点を当てれば、全くそのとおりでいろいろな湖沼で同じような現象が見受けられ、他人事とはいえない程身近になりつつありますが、ブルーギルやブラックバス等は”資源”の対象にはならず、「駆除」の選択肢があるだけ幸せだと思えてきます。この作品を見てしまうと。
この作品が発表された頃は、『ナイルパーチ』の不買運動も起こったとか。けれど、そういうことではないのですよね。
売れなければ売れないで打撃を受けるのはやはり現地の人々。
アレを見てしまうと、どーするべきなのかわからなくなります。
「銀ムツ」なんて昔時々買ってましたけど、あれもその手の一種なんですよね~「メロウ」とかなんとか言うアチラの巨大魚(笑)
投稿: たいむ(管理人) | 2007/02/24 13:15
■A-tenさん、まいど♪
A-tenさんもBSのクチですか?
年末年始にドキュメントは完全スルー。娯楽作品ばかりで目一杯(笑)
けど、年末年始に観たいドキュメントではないですね。どんよりしますから(爆)
たっぷり2時間。内容は重いしキツイし、でも釘付けでした。
劇場で正解だった気がします。
あらすじもない、見たものを羅列しただけの文で察していただけてよかったです。最初と最後でも見ていただけに、話が繋がったのかもしれませんね。
>「血+」
なるほどね。I.G.お得意の「二重構造」の秀逸さは感じますね。
私はね、「ダーウィン・・」にアナログな「S.A.C.」を見た気がしました。
まず構成が素晴らしかったです。ドキュメントでありながら、サスペンスを感じるドラマ性をもってました。起承転結がしっかりあるのよね。
そして、取り扱っている内容そのものも「S.A.C.」的。
最初に「ナイルパーチを放流した者」は「真の笑い男のオリジナル」であり、その後の展開は「個別の11人」のような感じ、というのかな?
『攻殻機動隊』に染まりすぎた考え方なのだけどね(笑)
と、こちらも脱線。
「BLOOD+」は絶賛していない私ですけど、そうしたグローバル社会や経済での問題点等のさりげない埋め込みはさすがだなー、と思ってますw。
投稿: たいむ(管理人) | 2007/02/24 13:44
こんばんは♪
覚悟はしていましたが、暗澹たる思いになってしまいました。
ファミレスなどで白身魚のフライなんてもう頼めないような気がします(いえ、そういう問題ではないんですけどね)
魚を積みに着た飛行機が空っぽで飛んでくることなんてありえないんですよね、本当にイヤなものを積んで来てくれますよ、全く(怒)
先進国のアフリカへの搾取とナイルパーチの貪欲さがリンクして、どよーんとしてしまいました。
たいむさんとは一ヶ月遅れで見たことになるんですね。
やっぱり新潟の方がちょっと早いのかな。
投稿: ミチ | 2007/03/23 23:04
■ミチさん、こんばんは♪
いろんな意味でショッキングでしたね。
私も、”冷凍白身フライ”はもう買わないと思います。
けど、売れないと一番困るのが最弱者という皮肉を、どう処理してよいものやら思考が彷徨ってしまいます。
まさかね、空の飛行機の荷物があんなものに行き着つなんて想像もしてませんでした。いかに平和ボケ日本に染まり、安穏と生活しているかを痛感しました。漸く理解して「ロード・オブ・ウォー」での少年兵を思い出してしまいました。あの時はあの時で衝撃を受けてたハズなのに。思考が繋がらない私も対外大バカですよね。
>先進国のアフリカへの搾取とナイルパーチの貪欲さがリンクして
ええ。ナイルパーチは利益至上主義者による略奪の象徴に見えてきて。。。どんよりです。
新潟が早い・・というか、劇場のマネージャーの趣味かな?と思う今日この頃です(笑)
こっちのワーナーマイカル新潟は社会派好きみたいだし、ユナイテッドシネマ新潟は、クチコミなど話題になったミニシアター系の速攻対策班みたいな感じ(爆)
そこそこバランスが取れてるのかもしれません。
投稿: たいむ(管理人) | 2007/03/23 23:30