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2007/01/07

『すべてがFになる-THE PERFECT INSIDER』/森 博嗣:著

The_perfect_insider_1 時々遊びに来て下さる”A-tenさん”とのやり取りのなかで、だいぶ前に紹介された一冊。。。というか、”森博嗣氏”の話題だったのだけど、「私は知らない、読んだことがない」返したところ、とりあえず「どうです?」と紹介されたのがデヴュー作の「すべてがFになる」だった、ということ。
彼此ずっと読みたい本を山積みにしている状態で、この本も紹介されて速攻手元に仕入れたものの、山の中腹でしばらく待機させていたが、なんとか他の本と同時進行で就寝前にチビチビと読み進み、この正月でやっと読了した。
N大助教授:犀川創平とN大の学生:西之園萌絵の二人が核となり探偵役を務める”推理小説”のジャンル、といって良いと思う。但しやたらと理系な推理モノ。著者の森氏がバリバリの理系学者だからだろう。

※『すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER』は、一応1996年の作品であり(書かれたのは1995年12月)今から10年も前。とはいえ推理モノなので、感想を書くに当たっては核心を突くつもりはないが、それでも若干内容には触れるため(あらすじではない)、もし、これから・・と思っているのだとしたら、ご注意願いたい。

まずこの作品でとても魅力を感じたキャラクターが、”真賀田四季”博士だった。
天才プログラマーの異名と実績を持つ四季博士には、映画『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』でおなじみの”ハンニバル・レクター博士”を彷彿した。(トマス・ハリス著の原作は未読だけどw) どちらも常識を超えるマイワールドの住人であり、類まれなる知性の持ち主だ。レクター博士は非凡な”精神科医”という肩書きだったけれど、事件を切っ掛けに”監禁”状態だった事やその後、狂気であり、邪悪さや残忍性、こだわりの芸術性等において共通点がいくつも感じられた。強いて違う点を述べるとしたら、「無邪気さ」かな? 四季博士は、”頭でっかちな子供がそのまま大人になった”ように見受けられる。
冒頭の、西之園萌絵による四季博士との面談。曰くつきな四季博士の登場によって「なかなかイケルんじゃない?」と期待したが、即”真賀田四季”博士が密室で殺害されてしまったことには落胆してしまった。「こんなインパクトあるキャラがコレで退場?勿体無い!」という感じ。(ある意味、嬉しい誤算が待ってはいたけれどw)
面談でのやり取りがとても面白かった。数学は嫌いじゃないけれど、さすがに”BとD”の話は意味不明。ただ、『すべてがFになる』というタイトルで、天才プログラマーに関する物語。PCネタも多く、”すべてがF”とは「FFFF・・・・・」というものが頭に浮かんだのは間違なく、”BとD”の話が萌絵から犀川に伝えらなかった時点で、”BとD”は”すべてがF”以上に重要なキーワードに違いないという予感はあった。
犀川先生は割りと好きなキャラクターかもしれない。考え方とか他人に於けるスタンスだとか、共感する部分がある。対して萌絵。困ったことに、萌絵にはどうしても好感が持てない。計算機のような頭脳を持ち、四季博士に”天才的な発想力”と言わせるほどの才媛なわけで、通常なら大好きキャラの要素がいっぱいなのに、好きななれないどころか、嫌い?(笑)

犀川と萌絵が事件の真相にたどり着くクダリは、ちょっとインチキな感じ。(犀川先生はともかく) 突然閃く萌絵は反則に近い気がした。また、憶測の域を出ない仮説の段階での暴露は、一歩間違えば人権侵害にもあたるデリケートな事柄という認識がまるでなく、どうにもいただけない。(例え結果論として事実であったとしても) 実際に”検死結果”という証拠からあっという間に仮説は崩壊したわけで、たまたまそれが切っ掛けで犀川は確信に至るという結果オーライな構造には、「舐めとんのか?」とやや辛口にならざる得ない。
けれど、謎解きも含めてきっちり大団円とし、「マリオネットは誰だった?」と苦笑いする犀川先生、という結末にはニヤリであり、スッキリした後味から今後への期待は高めてくれた。

推理モノとしては分りやすい作品だったと思う。けれど、この本はそれだけを楽しむ本ではないようだ。
文庫本の巻末での瀬名秀明氏の「解説」でとにかくアツク語られていた。著者の素晴らしさであり、作品の斬新さ等々大絶賛。犀川と萌絵シリーズ(S&Mシリーズ)は、全10作品とのこと。デビュー作品を『F』にしたことで、既に書きあがっていた5作品の順番を入れ替え、必ずしも執筆順でなくなったこと等が細かく解説されている。『F』のラストから考えると、どうしても再登場を期待してしまう人物もいるわけで、残り9冊にチャレンジしてみたくなる。けれどシリーズを検索した結果、確実に再登場するのは10作目『有限と微小のパン』だけのようでもあり、ちょっと足踏み状態、というのが本音。決して”不満”な作品ではなかったけれど、”大満足”でもない。如何せん”萌絵”がネック。
もし、中8作をすっ飛ばして『有限と微小のパン』に着地できるのならそうしたいところ。そして、別枠で生き延びている四部作に速攻ジャンプしたい感じ。

果たして、私の”森博嗣デビュー”はこんな感じとなった。

余談:「理系な文学者」・・・ってちょっと不思議な感覚なんだけど、そういえば、もうひとり知っているような気がする。「世の中に不思議なことなんて、やっぱりないのだよね?関口君!」(笑)

余談2:”ハンニバル・レクター”が5年ぶりに登場する劇場最新作『ハンニバル・ライジング』はGW公開(予定)!! 幼少期のレクター博士の物語であり、レクター誕生(ライジング)の謎が遂に明かされるらしい。期待度MAX!

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コメント

たいむさんこんにちは
S&Mシリーズは、是非全巻読んでもらいたいですね、犀川は魅力ある登場人物ですが、そのほかにも個性豊かな方々が登場しますので、すっ飛ばしてしまうのはもったいないですよ。(四季博士の魅力は別次元)
萌絵に対して”なにそれ!”と思うところが出てくるかも知れませんけど、萌絵にもいろいろあるのです。私は嫌いではないですね。
Fから有限に飛ぶのもありだと思いますが、読み終わった後の印象が違うものになるだろうから、できれば全巻通しで読んでもらいたいです。
ファイトです!

今回、上にある記事を見てしまうことを恐れて直接飛んできました。
ううう、読みたいよ~、知りたいよ~、でも我慢だよ~、辛いよ~。
今週は、SEED関連引きこもり決定です(笑)

投稿: すずしろ | 2007/01/08 11:49

■すずしろさん、こんばんは♪
そっか、なんだか太鼓判を押されてしまったようですね(笑)
ではシリーズを頑張ってみようかなぁ。
順番に読みたいのは山々だけど、そもそも執筆順が違も違うわけで、「有限」にとんでも問題がないなら「有限」をまず先に読んで、四季シリーズを読んで、その後でもいいかなぁ~。
さすがに中8冊は待ちきれない、というか下手したら飽きる可能性ありなので(^^;)

Ⅳの記事かぁ。ある意味見なくて正解かもなぁ、すずしろさんは。
で、今回は引きこもり??
だとしたら、見たほうがいいかも(え?)

投稿: たいむ(管理人) | 2007/01/08 17:44

こんにちは。姫鷲です。
今日はどうもありがとうございました。

帰りに「冷たい密室と博士たち」を買って帰りました。
(何故か置いてない店が多くて探し回っちゃいましたw)
帰りの電車で半分くらい読みましたが、読みやすいですね。
ただ、読みやすい分、2日しかもたないという欠点が(笑)

犀川助教授はヤン・ウェンリーみたいですね。
「銀英伝」読んでなければ好きになったかもしれませんが・・・ちょっと微妙。
田中芳樹もS&Mみたいなコンビをよく書くんですよね。
良くも悪くも田中芳樹ワールドに浸かり過ぎちゃいました。

>萌絵にはどうしても好感が持てない
連呼すると「もえー、もえー」になるからじゃないでしょうか(爆)

投稿: 姫鷲 | 2007/01/08 21:36

■姫鷲さん、こんばんは♪
先ほどは無い情報をどーも(笑)
>「冷たい密室と博士たち」
執筆順で行くおつもりですか??
それもいいかもしれませんね。(瀬名氏の解説にもそのようなことが・・・)
>読みやすい
ですよねー!速読が出来る姫鷲さんなら尚更でしょうし。
小説もある意味”先着順”ですよね。
京極氏はいい意味で早いうちに出会えてよかった、という感じです。

私も↑でのすずしろさんのコメントを見て、一応そろえる決意は固まりつつあります。ただ悪い病気があって、一度に全部は読めないのに全部積まないと気がすまなくなるんですよね~。全巻揃っている古本屋はチェック済みなので、決着は早いかもしれませんが(爆)

>「もえー、もえー」
連想はしたけど、違いますよぉ。
姫鷲さんはいかがでした?萌絵の印象は??

投稿: たいむ(管理人) | 2007/01/08 21:51

たいむさん、こんばんは。
S&Mシリーズは私も昔、一応読破しました。
Fはその中でも犀川、萌絵、四季といった個性的キャラクターが
私にとってかなりインパクトがあったので、謎解きもさるものながら
理系独特の人物像に魅せられた記憶があります。

たいむさんはあまり好みでない萌絵も然り、犀川や四季も
恐らく人によっては「こんな奴、大っ嫌い。最低」と思われるか、
もしくは逆に「とても興味深い」かの二つに分かれるのではないか
と思います。
そういった独特の“濃い”世界観を前面に打ち出すことで
たぶん“森博嗣ワールド”が形成されているのでしょう。

あとがきや森氏のブログの著書を読む限りでは、
森氏本人も元は理数系の助教授で、ちょっと変わった人らしく
そんな感性がキャラクターの性格を作っているのかもしれませんね。

投稿: GAKU | 2007/01/08 23:09

こんばんは(^^)

あら、文頭に出演しちゃってるわ(^_^;
文庫版は瀬名さんの解説がついてるんですか?いいなぁ〜。
内容はもう思い出せないに近いですが、Fの意味を知らなくてもストーリーわかるようになってましたよね。
萌絵はスーパーお嬢様なので、一般人が感情移入できる設定にはしてないような気がします。とくに最初のうちはね。でも、シリーズの中で少しずつ変化がみられると思います。って読むんですか?読むんですね?全部?(爆)
個人的には萌絵の叔母さまが素敵!(^0^)/

投稿: A-ten | 2007/01/08 23:34

■GAKUさん、こんにちは♪
GAKUさんも既に読破されているのですかー。
人気なんですね・・・(^^;)
>“森博嗣ワールド”
なるほど、好き嫌いは2極分化の傾向にあるということですね?
萌絵への印象がどう変化していくかは分りませんが、もう少し読み進んでみることにしようと思ってます。(大変ダァ=)

森氏のブログも少し拝見したことがあります。
森氏ご自身には、たしかに只者ではない印象を受けましたw


■A-tenさん、こんにちは♪
えへへ、すみません。
勝手にお名前をどーんとさせていただいちゃいました。
>文庫版は瀬名さんの解説がついてるんですか?
あら?ご存知無かったのですか??
ものすごい絶賛の仕方ですよ(笑)
「イノセンス」をアツク語っていたあの姿を彷彿しながら解説を読みましたから(爆)

>スーパーお嬢様なので、一般人が感情移入できる設定にはしてない
ハイ、私は平々凡々の一般人ですから~(笑)
変化とは成長?
なんだかアッチこちから背中を押されているみたいになってきたなぁ。(予想外の展開w)
去年は攻殻機動隊に始まって、今年は森博嗣に始まる1年になるのかしらん?(^^)

>萌絵の叔母さま
まだ登場してないかな?(印象が無いのだけど。。。)
叔父様だけのような?
執事(?)さんのパワーにはびっくりでした。


投稿: たいむ(管理人) | 2007/01/09 11:01

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