「Solid State Society」感想。
昂揚したまま、しかも思考回路はほぼ停止状態での先回の記事より、冷静さを取り戻し幾分踏み込んだ雑感を少々。(若干のネタバレあり)
その前に、なんとかチケットをゲットできた私であったから、のほほんと浮かれた記事など書いているけれど、その裏(地下に潜っていた自分達の知らない地上)では劇場側と入手できなかったファンとでひと悶着があったという事実を知った。
やっとこさ食い込んだ自分達の間でさえも今回の劇場側の対応のまずさについて、何度も何度も話題に上がった。イベントが決まってから実施までの期間が短かったことも要因のひとつだとは思うが、そもそも200余席しかない劇場であり、殺到は予測の範疇なのだから”応募による抽選”が妥当だったのではないかと思う。当日なら当日として誘導の仕方を事前に検討すべきだっただろう。そして、ひとり1枚にしなかったのが最大の不公平でありミステイクだと思う。
騒動の詳しい内容は良くわからないけれど、諦めきれずに居残ったファンによる劇場への糾弾であり、誠意の見られない劇場側への不満から謝罪要求などがあったらしい。驚いたのが劇場側はその一部のファンに対して、次回(有無は不明)の優先権を約束したとかしないとか。これまた中途半端な措置をしたものだ。では素直に諦めて帰った人たちへの謝罪や救済は?無茶苦茶としか言いようがない。ここでこの次はないような気がする。けれど、劇場側はきちんと認識不足の非を認め、教訓とし、以後このような事態を回避する方法でのイベント開催を行って欲しいと思う。
「Solid State Society」
先回は素直に「良かった」と書いた。それは間違いない。緻密な脚本や技術的なものは素晴らしいと思うし、申し分ない。最初から最後まで引き込まれて飽きることもない。けれど、最高に面白かったかというと私は絶賛にはもう一歩と言いたいかなぁ。
DVDの概要などでは、あれから2年後、公安9課を去った素子、トグザ率いる9課、傀儡廻の正体などなど、思いっきり謎が謎めいていて興味深々、期待度MAXだった。
素子はどんな登場をするの? バトーVSクロマ? 傀儡廻=素子? タチコマは? トグサ君率いるって何? 荒巻課長はどうしちゃったの? とにかく???ずくし。
いざ開けてみれば、「なるほどね」というより「なーんだ。」という感じ。トークでも話されていたけれど、「オールスターキャストによる同窓会」色が強く、多少はあれど皆に見せ場が用意されていた。素子が去ってから2年。「メンバーそれぞれがどのような2年を過ごしてきたかをまず考えた」とも話されていたけれど、大きく逸脱したメンバーは居なかったと思う。課長は課長で”素子不在”での今後の9課のあり方を考え、現在の体制作り(強化)を決断・実行し、バトーはやはり”イノセンス”に近く、単独でずっと素子を探し続けてた。イシカワ・パズ・ボーマはそれぞれの役割を理解し、後輩トグサのサポートに回る。トグサは相変わらずいい意味での公私混同を続け青臭い正義を一歩前進させていた。必要性からマテバを捨て、義体化まで施したことには驚かされたけれど。サイトーは任務から一時的に9課を離れていたとのことだが、やはり義体化率が増えたとのことだった。
S.A.C.・2ndGIGの流れならば、納得できない2年後という人物は居ないと思った。素子もまたしかり。
原作の流れから、もしかして・・という期待があっただけに、ムサシにマックスetc....もそうかな。これは素直に嬉しがっちゃうけど(笑)
さて、肝心のストーリー。『傀儡廻』と『Solid State』という2つの謎。それらに関係する事件の数々がリンクしていくバランスはとても上手いのだけど、どうしても予定調和の感がぬぐえない。9課内では繋がっていない事件だが、観ているほうは完全に繋がっていると知っているから驚きがない。「あ、ヤラレタ!」という制作サイドに対しての敗北感がないのがとにかく残念。
やはりトークの中で「90分の尺はTVシリーズなら4話分。同じ尺でもCMや次回という時間的な空間がないのが厳しかった。随分助けられていたとわかった」という話があった。その話は多いに納得できた。S.A.C.では、笑い男事件と一話完結事件とが上手く組み合わされ、突然の伏線発覚だったり、「続く・・」で終わったはずなのに次回では一気に後日談であったり、いきなり形勢が逆転していたり、という奇抜さに脱帽させられることが多かった。26話というスパンだから出来たことかも知れないけれど、90分でもそんな感じで上手く盛り込まれていたら「最高!」と絶賛したと思う。綿密過ぎたが故にバレバレ。この辺が私には少し物足りなかった。どっがーんが欲しかった。
(やっぱり90分枠に慣れていないからだろうか?同じようにTVシリーズからの映画化「名探偵コナン」はその辺のストーリー構成が功名に出来ていると思うのだけど)
一度解散したかのような9課が再び元のメンバーで復活するまでのお話。
簡単にいえば、「Solid State Society」はその切っ掛けとなった事件を描いた物語ともいえそう。
押井監督の”イノセンス”の要素を別角度から捉え、そして結末は180度反転した。
これが神山監督の想いであり、答えであり、社会的メッセージなのかもしれない。そんな風に感じられた。
少々辛口?になっているけど、総合的には”良かった”に変更はなし。DVDでは見逃したところなど、繰り返し見てみたい、そう思っている。
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コメント
へえ~。劇場の外で、そんなごたごたがあったのは知りませんでした。無理もないと思います。
近頃、自分は、こういうこと(並んで整理券)というのにさほど「萌え」なくなっているので(爆)、たぶんひとりだったら、さっさと帰宅していたかもしれません。あの大混乱の前に。
劇場で攻殻を観て思ったのは、やっぱり、これはみんなでわいわい観るものじゃないなってことです。「個別(の11人)」でもありませんが、ひとり(stand alone)で、静かにじっくり味わい、タチコマの自己犠牲に嗚咽する…ややもすると「怪しげ」でもありますが、そんな気もしましたです。DVDが到着したら、プロジェクターをセットして、スクリーンを広げよう、と思っとります。(^^;)
投稿: あかん隊 | 2006/09/12 01:40
■あかん隊さん、こちらにもありがとうございます♪
劇場の外、なんだかそんな感じだったらしいです。
私などは浮かれ気分でヨカッタヨカッタとニコニコしていましたが、すずしろさんの後ろは3名だったのですよね。境目を目の当たりにしていたのになーと今更ながらに思ってます。
みんな立ち去れずに居ましたよね、そういえば。
>やっぱり、これはみんなでわいわい観るものじゃないなってことです
そうですね。そうかもしれません。
映画のようにひとりでじっくり味わいたい作品群だと私も思います。今回はなかったけど嗚咽は欠かせないしw
イベントとして、監督ほかスタッフの制作裏話をその直後に聞くことが出来たのいい経験だと思いました。(けれどコレはDVDに収録されるのでしょうね)
投稿: たいむ(管理人) | 2006/09/12 18:42