小説版:機動戦士ガンダムSEED DESTINY(5)-選ばれた未来(決意のアスラン編)
読破してから随分と経つのだけど、いまひとつ方針が決まらず・・・なんとなく頭の中で形づいてきたので、やっぱりここは”まずアスラン”ってことで(笑)はじめようと思う。
「俺にも何か出来ることがあるはずだ」とカガリのもとを離れ、ザフトに戻り、紆余曲折の末に再びオーブへ戻ったアスラン。
”デスティニープラン”
戦いのない平和な日々を齎すであろうもの。そして同時に人々の未来を殺し、過去を否定するもの。それは実行させてはならないもの。
そのために戦う道を選ぶアスランやキラ。戦いを厭いながら戦う我が身。何度となく繰り返される自問自答。
「何と戦わなければならなかったのか?」その答えをやっと掴むアスラン。
●AAに駆けつけたカガリを含めて、デスティニープランについて、初めてクルーでの話し合いが行われた時。
プランのこと話しながら、ふとカガリと目が合ったことで思うアスラン。
定められた道を進んでいたなら、彼女(カガリ)との出会い自体が存在しないことになったかもしれない。・・・このさきどんな道筋をたどろうと、これらの出会いが自分たちの人生にもたらしたものを否定することだけはできない。
「無駄・・・か?」無駄だとあきらめてしまう?すべてを閉ざし、ここまでだと終えてしまう?「俺はそんなに、あきらめがよくない」
もしかして、今回撃たれたプラントの人々も新たな世界の為に必要な犠牲と切捨てられたのか・・・?
こんなことを続けさせるわけにはいかない。
自分自身が”戦士”として生のみを強要されたことからハッキリと確信するアスラン。
こんなことは認められないと。
そして、今までの人生、カガリとの出会いを否定されることを何よりも厭うているアスランの気持ちが良くわかる。
●宇宙への出航を翌日に控え、AAの上部甲板でキラと語り合う
夢とは欲望の別名。人はああしたい、こうしたいと未来を願うもの。
かつてこの地を離れたときの自分も同じだった。戦いを止めたい。何とかしたい。自分の能力を活かしたい。それは願いであり、同時に欲望だった。・・・オーブを守りたい。愛する人を守りたい。誤った方向へ進む世界を止めたい。---幸福になりたい。したい。
自分たちのやろうとしていることは、戦争のない世界を希求する人々の思いに反している。単なる自己満足か?迷いを断ち切れないアスラン。
「戦ってはいけないのか、戦わなきゃいけないのか・・・」
自分たちは結局、いつの同じことを繰り返しているに過ぎないのか?
夢があり、欲望から自由になれない限り、人は戦い続けるしかないのだろうか?
平和な世界という夢はみんな同じのはず。”戦う”ことには迷いつつも”同じ夢”の為に戦うという決心は変わらない。原点に戻るアスランの自問自答がよくわかる。
●カガリの選択。出立式で。
黙って踵を返して去るカガリを見送るアスラン。いいのか、というようにアスランに歩み寄るキラ。
「いいんだ・・・・いまはこれで」もし自分が彼女なら、きっと同じ選択をしただろう。相手を大切に思い、幸せにしたい、ともに歩みたいと願っても、それ以上に大切にしたいものがある。「焦らなくていい・・・夢は同じだ」
前夜にキラと話し合った「夢」。”国民全体の夢”を背負うカガリ。何がより大切なものか、秤にかけるまでもない。彼女の決意をそのまま自分の決意に変えるアスランだろう。
『俺が、彼女と彼女の国を守る』かなw
●月へ向かう艦内でキラにシンを語るアスラン。
戦争は矛盾をはらんでいる。正しいかどうかは自分が身を置く陣営によって変化する。絶対的なものではなく、いつだって相対的なもの。所属陣営の大義で、罪ではないと刷り込まれ、戦い続けるシン。
自分も同じだっただけに、アスランはそんなシンを救いたいと願わずにいられない。
やはり、シンの姿にかつての自分を見ているアスランだね。
●ミーアの死
アスランは悟る。自分が間に合わなかったことを。あの時無理にでも連れ出すべきだったと。自分だけが彼女を救えたはずだったのに・・・
あの時ちゃんと言えばよかった。ラクスにはラクスの、ミーアにはミーアの価値がある。偽ることでそれを手に入れることなんてできないのだと。そんなことは間違っていると。
役目をはたせなくなったら、囮として利用し、殺す。そんなことを正しいとする世界の一員になど、自分は絶対にならない!アススランはこのとき、かたく胸に誓った。
アスラン、泣きすぎ・・・と本編で思っていたけれど、ミーアの死が、”自分の黙認”により加速させてしまったことを悔いてのことなのが良くわかる。
”無理やり連れ出す”ことは、実際には不可能であり、今だから思う結果論。自分がたまたまキラたちに合流できたことはすっかり忘れてしまっているらしい(笑)
責任感の強い、アスランのご愛嬌ってことで許しちゃうけどねw
●全世界に対してデスティニープランの実施が宣言された時
アスランはあらためて気づく。議長のプランがもたらすもの。それは平穏ではなく”死”だ。
「すべての命は、未来を得るために戦うものです。---戦ってよいものです」
ラスクの言葉に迷っていたアスランの心が決まる。善悪両面の顔を併せ持つ夢=欲望。
人はおのおの戦って、何が正しいのかを選び取っていかなければならないのだ。誰かに与えられるのではなく。
自分たちは自分たちの生を確保するために戦う。すべての生に与えられた権利であり、義務であるから戦う。原初の生命の誕生から続くもっとも基本的な戦い。
迷ってもいい。間違っても。それでもそのとき自分が正しいと思うことを、自分の手で選び取っていくしかない。アスランはいま、あらためてそう思った。
時代に翻弄され、苦しみ、迷い、悩んだ日々。カガリとの、たくさんの人々との出会い。それが現在の自分を創ったものであり、間違い遠回りした道でさえその都度選び取ってきた己の軌跡。無駄でも不幸でもない人生の賜物だったということに改めて気がつくアスランがよーくわかる。
戦う理由、答えのない答えをようやく見つけたね。
●ミーティアを装着したジャスティスで戦場を駆り、戦いながらなおも自問するアスラン。
巨大な力で自分たちの意思を無理やりとおそうとしている。
争い続けることがヒトの宿命なのか?種としての限界なのか。
---いいや、違う!
人は断じてそんな存在ではない。
かつて憎しみにとらわれ、争った自分さえ、それを間違いだと悟った。人は自らそれに気づき、変わっていくことができるはずだ。
誰かに強要され、銃を取り上げられ、与えられた平和に甘んじる、そんなものではない。
だから今は戦わなければならない。
いつか自らの意思で剣を置く、その日の為に。
自問しつづけるアスラン。自らの答えは確信へと近づく。
●ネオジェネシスの出現
アスランの体を、焦燥と憤りの混じった激情が駆けめぐる。
なぜ、また、こんなモノを!
わき起こった、議長に対する感情は、かつて父に対して抱いたものと重なる。最後まで分かり合うことができなかった、もっとも近く、もっとも遠い存在。
---止めなければ!
あー、ここはちょっと残念に思う。”ジェネシス”という力には父を思い出すアスラン、というのはわかるけれど、最終的に力で屈服させようとする事、議長という立場的共通点はあれど、デュランダルに自分の父親という特別な存在に抱いた感情を重ねるだろうか?うーむ。
●デスティニー撃破、ミネルバ撃沈
かつての母艦の撃沈は、自分でも意外なほどの痛みをアスランに与えた。
現在は敵対するものと、頭では理解していても、心はそれに追いつかない。
結局自分は裏切り者にほかならないという忸怩たる思いにとらわれる。
焦りとわきあがる怒りのままにデスティニーを討った。
どうしようもないやましさが身のうちを満たすのを感じた。
これが人間の業だというのか?・・・激しく迷いつつ。それでも砲口へと機体を走らせる。
ミネルバはムラサメ隊によってトドメを刺されたことに変更。
我を忘れたシンに対して、「バカヤロウ」と言い撃ったアレが怒りだったとは・・・
とりあえず”小説として”はそういうことらしい。
撃ちたくない敵として存在、理不尽な戦いというものを強調する意味では、アスランのそのような心情もあるかもしれない。
けれど、私としてはこの解釈は残念に思う。
ここでの戦闘においては”迷いのないアスラン”ではないかと思っているから。
戦いの一つ一つに意味がある、大義ではない、真の戦う理由がある。そう思うから。
●議長室での銃声。レイの意外な行動、タリアの覚悟。
一瞬過去に見た光景が重なる。
結局分かりあうことができずに、その命を断たれたひとであり、やはり最高評議会議長であった人の死に様が、いま目の前に斃れた人と重なった。
アスランにはまだ、わけがわからなかった。レイがデュランダルを?なぜ?
この結末を招いたのは自分たちだ。それも自ら望んで。その事実を苦くかみ締める。
再びデュランダルにパトリックを見るアスラン。なるほど、ここはそうかもしれない。
本編(FINAL PLUS)ではどう見てもキラの為にメサイヤに進入したような感じではあったけれど、ここで少しでも議長との会話を望んでいてのことなら嬉しい。
デュランダルは下心があったにせよ、アスランの父に対する呪縛を軽くしてくれた人。
アスランならばきっとデュランダルに対して何かしらの想いがあったハズでしょう。
しかし、本編と同じくデュランダルと会話する機会が結局得られなかったのはやっぱり残念だなぁ。
ワケがわからないのは、デュランダルとキラと交わされた会話の内容を知らないのだから、当然のこと。それもちょっと残念。
●オーブ、慰霊碑前にて。
「・・・・それが、俺たちの戦い---だな」
いくら吹き飛ばされても、また花を植える。
「何と戦うのか」に対して、初めて明確に表現された言葉。
”花”という目に見える具体的な結果を示すことで、”戦い”という目に見えないものを表す。
花がいっぱい咲くこと、平和の象徴。
平和な世界を手に入れるまで戦い続けるのが、自分達の使命であり、権利であり、義務。
明日がある限り。
つづく・・・ 。。。。。。ゼィゼィ(息切れ...)
| 固定リンク | 0
コメント
こんばんは~。たいむさん。
アスランの視点での小説読み解きなんですね! うう~ん、お人よしで、激情家のアスランというものが、浮かんでくるようです。
>『俺が、彼女と彼女の国を守る』かなw
そうですよね!
夢が同じなら……再び、その手が取り合えることを、信じて。
いいですわ~(^v^)。
ではでは(^_^)/~
投稿: 農家の嫁 | 2006/04/15 00:25
■農家のお嫁さん、こんばんは♪
>アスランの視点での小説読み解きなんですね
えへへ♪
アスランのところだけ抜き出してみました。
とにかく自問自答ばかりしている5巻のアスランです(笑)
>夢が同じなら……再び、その手が取り合えることを、信じて。
いつか。。きっとね!
もうアスランフィルター全開っ!
投稿: たいむ(管理人) | 2006/04/15 18:02
小説は納得して全てのキャラを理解したつもりだけど、
こちらの記事を読むと、やっぱりアスランについては
たいむさんほどしっかり読んでなかったようです(笑)。
でもキャラの心情に対する説明に付いては以外に思うことも多くて
小説の面白さはそこにあるのかなぁ。
SEEDから全巻一気読みしてみたいものです。
投稿: 千羽鶴 | 2006/04/24 15:38
■千鶴さん、どもどもども♪
今やアスランは私にとって特別な存在ですからwww
萌えというよりは、やっぱり応援団に近いけど。
小説版は本当に色々内面が見えて面白いですよね。
それでも、あくまでも補完的媒体であり本編でどれだけ汲み取れるか、なのですけどね。
投稿: たいむ(管理人) | 2006/04/24 19:53
こんにちは。お久しぶりです。(^^)
なんとか自分の感想書き終わったので、お邪魔しにきました。
(TBが相も変わらず不調なので、コメントのみでございます)
アスラン語り、お疲れ様です。(^^)
毎度ながら、みっしり細かく書かれてるあたりがたいむさんらしいな~と
思いました♪
こうして見返すと、アスランの真面目さ、人の良さがよくわかりますよね。
ミーアのことは、ああなればアスランが苦しむのはわかりきったことなので、
イヤだったんですよね。
悪いのは彼女を担ぎ出した奴らなのに、いくらかは自分のせいにしちゃうトコが‥。
こういう責任逃れしないトコが好きだな~と思ったりしてvv
それと、自分は脱走時に生きてるのが不思議なくらい、容赦なく討たれたのに。
逆の立場で、シンを退け(それでもちゃんと手加減してる)、ミネルバの
撃沈を間近に目撃して、少々後ろめたさに囚われるあたりとか、
本当にどこまでも割り切れない損な性格よね。絶対アンタは軍人向きじゃないとか
思いつつ、やっぱり真面目ちゃんらしい反応でかわいい~♪と思った私は
変態でしょうか?(苦笑)
投稿: 風海 | 2006/04/30 11:22
■風海さん、お久しぶりです♪
忘れないでいてくださったことに深く感謝!
みっしりになってしまう書き方しかできない私(汗)
本当は風海さんのような感想を書ければよいのですが、ここはどちらかというと、小説を買ってない人へのサービス的記事になってます。
アスランはとにかく一貫して描かれているので、こうして並べ立てると本当に良くわかりますよね。
ミーアの件は私もイヤでした。彼の苦悩は目に見えてましたね。
メイリンにもしものことがあっても同じだったでしょう。
なんでもないのにどうしてそうなるのか、巷でメイリンに対して「責任を取るべきだ」と言われていたのはもっとイヤだったけど(笑)
アスランは人に言われなくたって、取るべき責任を心得ているひと。ただ、アスランの正義感はきっと宇宙より大きいからその守備範囲が広いのが難点。
でも・・・私もそんなアスランが可愛くて仕方がありません。
決して私たちを裏切らないアスランの反応(笑)
その痛々しさに、また彼に心酔させられてしまう。
ああ、もはや私も変態ですか??(爆)
投稿: たいむ(管理人) | 2006/04/30 14:28