「クラッシュ」やっとみた。
2月半ば、新聞で評を見た時から「観たい」と思っていたけれど、地元では上映される気配もなく残念に思っていたところに、アカデミー賞の受賞。そのおかけで地元で見ることが叶った。(以下ネタバレあり)
結果から始まり、”昨日”に遡って事の発端を見せ、経緯が明らかになり、その顛末に至り(最初に戻る)、その後が描かれるという流れ。2重3重の出来事が複雑に絡み合って、数組の無関係な者達が微妙に係わり合いを持ってくる。そこに常に付きまとっているのが「人種差別」という問題。いともやすやすと発せられる暴言であり悪態。全てにおいて”まず人種ありき”でことが運ぶ。
「人種差別」というカタチのない凶器。
判断基準はただ見た目。そこには真実さえもない。互いが互いの言葉を聞かず、ただ「違うから」というだけで恐れ、最終的にはどちらも”力”で相手を制圧しようとする。
偏見と被害妄想の連鎖。
結局、何故、何が原因で、どうしてそうなのか、どうすべきなのか。結論が語られることはない。
『むなしい・・・』中盤までずっとそんな思いで観ていた。
3度涙が溢れた。
横転した車の中に取り残され”助けて”と思いながら「あなただけはイヤ」と、前夜受けた屈辱から、救出を拒絶する女性の痛々しさに。
「透明マント」を手放した父親を守るために銃口の前に飛び出す少女。逆恨みから、空砲だったとはいえ、父親を、少女を撃ち立ち竦むペルシア人の老父に。
そして、たった2日間に起こった様々な出来事から彼ら当事者たちのちょっとした、それぞれの心の変化に。
その変化は”希望の光”だろうか?
そうあって欲しいとは思うけれど、当事者以外には極些細な日常的な出来事であることには変わりなく、それすらも希望でしかないような気がする。
映画の最後でまた始まる別の小競り合い。やはり答えはどこにもない。
”戦争”意識がそうであるように、”人種”意識も薄い平和国日本。
島国であったが故に”一億総日本人”という姿がそのまま続いている。
しかしどうだろう。北朝鮮による拉致問題。不法外国人労働者の増加。それに伴ったかのような外国人による犯罪の急増。
逆に”総日本人的意識”がそれらに対する恐怖を感じ始めているのではないだろうか?「自分たちとチガウモノタチ」を排除しようとする心が知らず知らずに出来ていないと言えるだろうか?
一体ヒトはいつもヒトの何を見ているのだろう?
目を曇らせなければ、自分を自分で貶めていかなければ、きっとそこに天使は見える。
そう信じたい。
と言いつつも、やはりどこか”映画”という観点から抜け出せていない純日本人な私。
”映画として”、最初に書いた作品の流れ、見せ方がとても良かったと思い、面白かったと言ったら不謹慎だろうか?
重苦しく、やりきれない気持ちにさせる作品で有りながら、打ちひしがれて見終わったという感覚が少なかったのは私だけだろうか?
”甘い”と言われるかもしれないけれど、きっと誰にでも「天使」はいる、そう思っているからかな。
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コメント
たいむさん、今晩は☆
>きっと誰にでも「天使」はいる
私もそう思うし、そう思いたいです。
ラストでの小競り合いのように、また同じ事を繰り返してしまうかもしれないけれど。
それでも僅かな希望の光があると信じたい。
そんなことを思わせる作品でした。
良い映画だったと思います。^^
投稿: ルーピーQ | 2006/04/07 22:21
すみません~
TBが反映されないようなので、時間を置いてまた窺いますね(汗)
投稿: ルーピーQ | 2006/04/07 22:25
こんばんは。TBとコメントをありがとうございます!
たいむさんのレビュー、イイ感じです。いろいろなシーンを思い出しました。この映画、何度も観る方もいらっしゃるようですが、自分は、辛すぎて。
日本にも人種差別は、ありましたけど、大きく取り沙汰されないできましたね。>関東大震災の時、原爆投下時などには、在日朝鮮の方は、ひどい目に遭った方が、たくさんいらした。
欧米にはへつらい、英語を話せるだけで「人格者」のような扱いがある一方で、中国や朝鮮、アジアに対する意識はどうでしょうか。戦時中の「日本民族は秀でている」的意識で、見ていることはないだろうか、と自問してみたりしました。
人は、人種の前に、ホモサピエンス。ネアンデルタール(純朴で、より自然体だったとか)を虐殺したという話も聞きます。DNAには、弱肉強食が刷り込まれていて、抗いようもないのかもしれません。同族の中でも、優生を選別する、無意識の意識が働くのかもしれないですね。<まっさきに「絶滅」させられそうなタイプの私(爆)
投稿: あかん隊 | 2006/04/07 22:45
こんにちは♪
相変わらずTBが反映されないみたいですね、困ったわ~(泣)
こういう映画を見ると「映画として」作りが上手いな~とか見せ方が上手だな~とか「鑑賞」してしまいます。
いろいろ考えるべき事もあるのに、やっぱりどことなく自分の身近な問題としては捉えていないんです。
そんな自分をイヤだと思いつつ、この映画に希望と絶望を交互に見つつ、複雑な気持ちでいます。
投稿: ミチ | 2006/04/07 23:08
おじゃまします、辛口のラフです(笑)。
私がこの映画を秀作と思えど、傑作と言えないのは、やっぱり「人種問題」が、大変申し訳ないけど、自分のこととして考えられない、から、なのかもしれない。と、たいむさんの記事を読んで感じました。
あと、どうしても『ミリオンダラー・ベイビー』と比較すると、辛口になります。あちらは傑作でしたから。
でも一番の理由は、たぶん、この作品を観た3日後に観た作品の、アカデミー賞の恨みかな。(^^
投稿: ラフマニノフ | 2006/04/07 23:39
こんにちは!
TBが張れませ~ん ごめんなさい。何度かこれからも挑戦しますね。
コメントだけですがお許しを…
ところで、私も甘いです。^_^;
見終った印象、後味は悪くなかったですもの。
天使のマントのエピソードはいい意味で期待を裏切られました。どこかファンタスティックな雰囲気がありましたよね。
それでも美しいだけでない心の闇や葛藤もきちんと見せているところをやはり評価したいです。
投稿: charlotte | 2006/04/07 23:54
■ルーピーQさん、こんばんは♪
コメントありがとうございます。
TBの件は、不調が続くニフ(ココログ)のせいです。
未解決課題に”gooブログなど、TBがしがたい”などの報告が載っていました。
もうしばらくお待ちください。(といっても復旧の予定は不明ですけど)
>繰り返し
ちょっとしたことで、やっぱり元に戻ってしまうかも知れない。
それでも・・・と信じたいですね。
「日本人に何がわかる」って言われそうですけど。。。
作品的にも良かったし、観て良かった作品でした。
■あかん隊さん、こんばんは♪
毎度ありがとうございます。
久々に真面目に書いてみたら、お褒めに預かっちゃったしw
>この映画、何度も観る方もいらっしゃるようですが、自分は、辛すぎて。
良い作品なのだけど、キツイことはキツイから私も2度目はいいかなぁ。
日本人の場合は、逆に同じ人種の中で差別をしたがり、特に中国・韓国よりも優れている、と思いたがっている傾向がありますね。
それは戦時中からの流れなのか、なんなのか。
オリンピックでもなんでも、(中国はともかく)「韓国だけには負けられない」・・どうしてそうなのかな?と思ってみたり。
人間は誰しも愚かであると言うことを自覚すべきなんだろうなぁ。
「違う」=「恐い」この公式は一体なんだろう?
これもDNAに刷り込まれているのかもしれませんね。
投稿: たいむ(管理人) | 2006/04/08 00:22
■ミチさん、こんばんは♪
TBの件、すみません。
↑↑のルーピーQさんへのコメント返しで説明したとおりです。
コメント頂けるだけで感謝です。
(TBで無理しないでくださいね。)
>「映画として」作りが上手いな~とか見せ方が上手だな~とか「鑑賞」してしまいます。
私にもどこかそんなところがありました。
「アカデミー賞受賞」という先入観念がそうさせたのもありそうですけど。
>希望と絶望を交互に見つつ、複雑な気持ちでいます
結果的に逆になってしまったヤングポリスマンには切なさも感じつつ、作品としての上手さを感じてしまったり・・・
私もなんだかしばらくグルグルしそうです。
■ラフさん、こんばんは♪
早速のお返事どーもです。
>「人種問題」が、大変申し訳ないけど、自分のこととして考えられない
本当の意味で理解するには純粋な日本人には難しいのかもしれませんね。
>アカデミー賞の恨みかな
「クラッシュ」の世界で暮らしている、アカデミー賞を選んだ方々は「クラッシュ」を選んだ。ということが真実であり、すべてではないでしょうか?と思う次第。
日本でどのくらい評価されるか、では決してない作品なのではないかしらね。
■charlotte さん、こんばんは♪
ルーピーQさん、ミチさん、と同じく、TBの件、申し訳有りません。
全てココログの不調のせい。
TB、頑張りすぎないでくださいね。
ちゃんと”その2”があるのも知ってますから(笑)
>後味
そうなんですよね。あまり悪くないんです。
「解決にはなっていない」とは百も承知なんですけどね。不思議な感覚でした。
きっと、心の闇や葛藤、そして美しさ。
それぞれ順を追って、その両方がきちんと描かれていたことにありそうです。
特に単純な人間には、ほんの一分でも希望を見出せそうな気持ちにさせてしまうからでしょうねw
事実を突きつけ、訴え、深く考えさせる作品ばかりが良い作品というわけではない、と思う次第です。(救いが欲しいときもありますし)
投稿: たいむ(管理人) | 2006/04/08 00:54
たいむさん、たびたびおじゃまします。
アカデミー賞云々は、冗談とはいえ、ちょっとそぐわない発言でしたね。撤回させていただきます。
絶望感、でいえば、『ミリオンダラー・ベイビー』のほうがはるかに絶望的なのに、あの状況下でも確かな「希望」「光」を、観るものに与えてくれたポール・ハギスが、この作品では、「希望」「光」を与えてくれなかったのが、私には不満でした。
*が降って、それで全て解決。ではないだろうと。ドン・チードル扮する刑事は、弟を****犯人を見つけ出し、そして逮捕するのか?
一番罪がないと思われる若き刑事と、その刑事の車に乗り合わせた若者。そして罪を犯してはいない優秀な刑事。この3人が一番不幸になってしまう、という結末が、私にとって消化不良の原因かも。
投稿: ラフマニノフ | 2006/04/08 01:23
■ラフさん、再びこんにちは♪
上京中のたいむです。
妙なコメントになってしまってゴメンさない。
久しぶりに真面目路線のままで(冗談が通じてないw)お答えしてしまいましたw
そして、残念ながら、ミリオン・・を見ていないので、比較が出来ない私です。
この映画、感情移入仕切れない部分にからくりがあるような気がしています。
私は善人3人の不幸については、
どんなに善に見えても、本能的に持つ恐怖心やぬぐい切れない先入観念、己の保身の為に何かを犠牲にしてしまうというような、誰しも持つ人に巣食う闇の深さを表現するためのものだったのかな?と理解しています。
>*が降って
これで解決・・とも違った解釈でして
結局何も解決されることはなく、全てを覆い隠してしまう”白い”もの。
という捉え方をしました。
賛否ではなく、解釈ですよね。
ミリオン、見たほうがいいかしら?
実は喰わず嫌い(笑)
投稿: たいむ(管理人) | 2006/04/08 15:59
>ミリオン、見たほうがいいかしら?
え? 観てないのですか?
これは絶対観た方がいいと思いますよ~。
「人生」について深く考えさせてくれた…と自分は思っています。
投稿: あかん隊 | 2006/04/09 05:39
■あかん隊さん、おはよーございす♪
>え? 観てないのですか?
なんとなく見損ねて、そのまま観ていないんです。
皆さん絶賛のようですし、帰ったらDVD借りようかな?
投稿: たいむ(管理人) | 2006/04/09 10:27
たいむさん、こんばんわ。土・日は物件探しで
忙しくて、ネット接続ができず、返信が遅れました。m(__)m
>ミリオン、見たほうがいいかしら?
あかん隊さんに一票。って、前に『パルプフィクション』でもこんなやりとりがあった気が…(笑)。
『クラッシュ』は、人それぞれの解釈ができる、という意味で、秀作なのかもしれません。こうして他の方の意見を聞くと、自分が気がつかなかった部分が見えて、助かります。(^.^)
投稿: ラフマニノフ | 2006/04/10 00:24
■ラフさん、こんばんは♪
>返信
いえいえ、私も出かけてましたから。
ミリオンは是非鑑賞してみようと思います。
確かボクシング関係でしたよね?
実は生身の格闘系、好きじゃないんです。
それだけで観ないという感じでしたから。
>前に『パルプフィクション』でもこんなやりとりがあった気が…
ああ、ほんと。ありましたねぇ(笑)
人それぞれ、と言うのはガンダムはじめ様々なレビューを書いて、TBなどから他のレビューを拝見して痛感しています。
ハっとする時あり、オイオイと思うこと有り。いろいろですねw
投稿: たいむ(管理人) | 2006/04/10 19:32
ブレンダンファンの私としては見たかった映画。
でも内容が重そうだったので、DVDにする予定でした。
泣けるのか。少しほっとしました。
重すぎて頭が痛くなるようなのだと辛いから。
見るの楽しみにします。
投稿: 千羽鶴 | 2006/04/24 15:42
■千鶴さん、たくさんのコメントありがとう♪
>重すぎて頭が痛くなるようなのだと辛いから。
受け取り方次第なのでしょうが、重いテーマの割には、観やすい、といえます。
とても良い作品だと思います。
是非ご覧になってみてください。
投稿: たいむ(管理人) | 2006/04/24 19:55
たいむさんこんばんわ♪TB&コメント有難うございました♪
こういう人種差別問題は日本じゃあまり馴染みの薄い問題だけに、自分も第三者的な視点で観てしまいました。
色々考えさせられたり、余韻も残るイイ作品なんですが、個人的にはこういう群像劇を描いた映画は明るい映画として観たかったというのもあるんですよね~。
投稿: メビウス | 2006/06/04 01:09
■メビウスさん、こんにちは~♪
久々のTBだぁ=。調子がもどったかな?w
>個人的にはこういう群像劇を描いた映画は明るい映画として観たかったと
重くて、暗っぽいけど、精一杯明るい作品だったかなぁーと思ってます。
見た直後は、もう一回はいいかなぁーと思ったけれど、メビウスさんの記事を読んで、思い出して(美化されてるかも?)もう一回みてみようかな?そんな気分になりましたよ。
投稿: たいむ(管理人) | 2006/06/04 11:41