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2005/10/13

「陰陽師・瀧夜叉姫」(上・下)著:夢枕獏

1 先月末、2年半ぶりに夢枕獏の”陰陽師”シリーズから「陰陽師・瀧夜叉姫(上・下)」が単行本として発売された。映画化以前から好きだったこのシリーズ。「生成り姫」以来の長編だ。

序章、安倍清明の幼少時の有名な話、
「百鬼夜行」をいち早く察知し、師匠である”賀茂忠行”にその旨伝え、難を逃れる、というエピソードからはじまる。


この時点では「また?」という思いがあった。”初めて読む人”の為の”安倍清明”の説明から入るのか?そんな気がして少し辟易した感じだった。でもちょっと違った。コレはコレで伏線だった。
この話は普通に有名な話、実際この「瀧夜叉姫」のエピソードとは無関係かもしれない。でもそれをうまく利用したものだ、と脱帽。

この”陰陽師”シリーズ。
会話が多く、文字数は多くない。
難しい言葉もあまり出てこない。
伏線に当たる部分は、必ず事細かに丁寧に書かれていてる。
その分場面転換は多いけれど、まず無駄なエピソードはどこにもなく必ず絡んでくる。
また、人物の描写、風景の描写がすごくいい。読みながら光景が目に浮かんでくる。

”陰陽師”シリーズ短編集(だろうか?)はすでに7作。そして長編2作に番外3作。
ややマンネリの感はある、けれど、やっぱり好きだ。
”清明と博雅”の深いつながりにいつも心が和む。
シリーズ初期からだんだんと、そのつながりは強くなっているように思う。なんだかとても嬉しい。
それもこれも”博雅”の天然のなせる業なのだろうが、”清明”もつられて(彼の前だけ)どんどんと素直になっていくのが微笑ましい。(今回もしっかりやってくれているw)

「清明よ、今のおれにとってありがたいことがひとつはある」
「何だ」
「おまえさ」
「おれ?」
「都には、おまえがいるということさ、清明―」


あまりにも愚直に言われたことであっけにとられる清明。だけど心の底から嬉しかったに違いない。照れ隠しに”そんなことは直接的に言うものではない、返答に困る”と言いながらも

「おれも、実は、都はそれほど悪いところではないと思うてはいるさ」
「ほう」
「おまえがいるからな、博雅」
「おれが―」
「ああ。博雅がいれば、少なくとも退屈せずには済むからな」


と、やり返すが、今回は博雅に軍配かな(笑)
おちょくるのはいつも清明だけど、こういう話では博雅がぐゎしっ!っと清明の心を鷲摑み。清明も(おそらく嬉しさのあまり)おちょくりきれなくなってしまうから。
それにしてもこの素直なやり取りは本当に気持ちが良い。
”陰陽師”シリーズはこの二人のやり取りがいいスパイスなのだよ。これが見たくて辞められないのかもしれない。

2 この「瀧夜叉姫」。もし映画第3弾があったら使われていたかもしれないくらいにスケールの大きいものに仕上がっている。読み応えあり。
(上・下巻)ということで、1500円×2=3000円は少し痛いが、おそらく”文庫本”になるには4年くらいの歳月がかかりそうなので、買っても読むべし・・だな。

追記:この色使いは”あの二人”に準えたものですw。ちょっとそんな感じなんだなぁww
(こんなオチを書くような本じゃないんだけど、本当は)

追記2:陰陽師・・といえば「呪(しゅ)」の話。私の好きな「京極堂」ほど深く難しくないけれど、「”呪”とはどういうことか?」というものは十分に感じられると思う。興味はあるけれど「京極堂」シリーズは分厚いし、難しいし・・・という方には手慣らしに丁度いいかもしれないな。

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コメント

この著者の作品は「キマイラ」シリーズしかしらないの。
古過ぎるだろうか。でも途中でやめちゃったから、あの後どうなったのかな?
陰陽師は映画が面白そうだなーって思ってますが、DVD借りるかな…。

投稿: 千羽鶴 | 2005/10/13 21:02

■千鶴さん♪
映画もまあ及第点だけど、”本”が良いし、面白い。文庫なら古本屋で100円くらいで買えますよ、きっと。(もう20年ですし)
短編で読みやすいし、暇つぶしにもこれはオススメできます。

DVD見てから気に入れば・・って言うのもありですけどね。

投稿: たいむ | 2005/10/13 21:08

たいむさんってタイムリーに話題を出されますね(いえ、冗談ではなく)。
シンクロニシティーだ~!!

昨日の朝日新聞の文化欄に岡野玲子さん「陰陽師」完結って記事が載っていましたね。
今年は清明没後千年だそうで…知りませんでした。
インタビューには岡野さんの不思議体験が書いてあったけど、
私も不思議少女(爆)なのでほぉぉ~っと感心。

昔から興味はあったのに陰陽師は読んでいないんです。
でもこれを機会に読んでみようと思います。
天啓のような気がしてきた(笑)
ダヴィンチコード借りてきたけど、後回しかな(^^;)

投稿: maroko | 2005/10/13 21:52

■maroko さん、こんばんは♪

>岡野玲子さん「陰陽師」完結
一応(原作;夢枕獏)になってますけど、途中から完全に岡野ワールドになってますからねぇ。さすがにアノ世界はスゴ過ぎて、同時に別の学問も学ばないとついていけそうにありません(笑)

>清明没後千年
実は1001年だったりします(笑)

>天啓
ははは(笑)
本人が”天啓”だと思えば、それは”天啓”ですw 思うように行動したらよいでしょうw

>ダヴィンチコード
来年、初夏に映画も公開ですね。

この夢枕陰陽師はとても読みやすいです。
できれば・・順番どおりに読むことをお奨めします。

投稿: たいむ | 2005/10/14 00:33

購入されましたか! 自分、悩んで、売り場をうろうろしています>ここ数日。
でも、これで購入する決心がついたので、出費は痛いが、購入して読むことにします。シリーズは、だいたい全部読破していて「文字数」少ないのに「ページを食う」ため、速読が可能ですが、単行本は少し大事に読もうと思います。ちなみに岡野ワールド完結編は、読みました(見たと言う方が、適切かもしれない)。今回は、エジプトの太陽神までお出ましでした。無学の自分には、計り知れないワールドワイドでした。

投稿: あかん隊 | 2005/10/14 02:33

■あかん隊さん、いらっしゃいませ♪
店頭をうろうろですか、わかる気がします(笑)
まず値段が高いうえに、2冊ですからね。
”京極”なら間違いなく1冊でしょうに(笑)

岡野ワールドは半分お手上げです。
スケールが大きすぎ。私もさすがに世界中の古代文明や考古学までは守備範囲にありませんね。

投稿: たいむ | 2005/10/14 17:53

買ってきました! 今夜は眠れない…かも!(爆) この本、買いに「行こう」「ならば、行こう」…そういうことになった。

投稿: あかん隊 | 2005/10/15 00:02

■あかん隊さん♪
早速購入ですね。一晩で読破しちゃったのかな?決意をさせてしまった分、気になったりして・・
いや、”決断”したのはあかん隊さんですから(爆)

投稿: たいむ | 2005/10/15 13:00

こんばんは☆

このシリーズ、大好きです〜☆
文体も詩的だし、主人公二人の会話も素敵だし、「呪」の定義も面白いというか、共感もあるというか。
一時期猛烈に同僚とはまって、映画も見ました。
いつも文庫版が出てから買うのですが…揺らぎました。笑

投稿: くりっぷ | 2005/10/15 19:51

■くりっぷさん、こんばんは♪

>このシリーズ、大好きです〜☆
意外というか、納得のような共通嗜好ですね。
おっしゃるように文章そのものに惹かれるものがありますし、内容はもちろんのこと。好きですねぇ。
その映画化のあたりではものすごいブームになっていましたよね。一緒に語れるお友達がいて羨ましいです。私はひとりで観に行きました(って映画はいつもかw)
未だ「大極の巻」も文庫化されていないし、時間がかかると思います。
近くならお貸しするんですけどねぇ(笑)

投稿: たいむ | 2005/10/16 00:33

こんにちは。
約2日で読み終わりました。これから、再読します。(いつもこうなのです)
今回は、めずらしく(メンタルの調子がそうだったのか?)泣きたくなるくらい感動してしまいました。「辛かっただろう」と涙する博雅。その対象が「将門」であったりしたことが、とても印象的でした。ちょっと、映像でも観たいなーなんて思ったお話でした。

投稿: あかん隊 | 2005/10/16 12:35

■あかん隊さん、こんばんは♪
ご報告ありがとうございます。

>これから、再読します。(いつもこうなのです)
同じです。私も何度も再読しますから。

>「辛かっただろう」と涙する博雅。その対象が「将門」
そうそう、まずそこですよね。
博雅だなぁ~~って。いい漢ですよ。
最後の最後は笛を吹いて弔って欲しかったなぁ。(きっと吹いてるよね?)

>映像
一作目は「鉄輪(生成り姫)」で二作目は「アマテラスとスサノオ」でしたね。
もう少し世間のブームが続けばあったかもしれませんねぇ。もったいないかも。

投稿: たいむ | 2005/10/16 19:42

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   今まで夢枕獏さんの陰陽師シリーズは採り上げてこなかったが、実は今回この作品『陰陽師 瀧夜叉姫(上・下)』を読んだことで、現時点でのこのシリーズの作品は全て読んだことになると思う。  今回の作品は、夢枕さんんも書いているが、このシリーズ2度目の長編だ。今まででは「生成り姫」の本が一番長い作品だったが、今度はそれより長い作品で、一番の長編になるらしい。  またいつものように粗筋を少し紹介したい。  夜ともなると百鬼夜行がまだ徘徊していた平安時代、承平・天慶の乱がおさまってから、もうす... [続きを読む]

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