「ヒトラー最期の12日間」みた
「戦争」についてよく考える今日この頃。
それはアニメの「機動戦士ガンダム(SEED)」だったり、「スターウォーズ」だったり、「ローレライ」「亡国のイージス」のような邦画(小説)だったり・・・・・ひと口に「戦争」と言っても、「ガンダム」はアニメでありMS(モビルスーツ)戦という未来のSF的な話。「スター・ウォーズ」もまたしかり。「ローレライ」は第2次世界大戦の終戦間近の日本海軍であり、「亡国のイージス」は今、現在に起こるテロ(→戦争の可能性を示唆)を現しているものであり・・・・それぞれに「戦争」が始まったわけ、終わらないわけ、そして終わる理由が描かれている。
また最近の戦争映画は昔とはかなり変化しているように思う。簡単に言えば「勧善懲悪」ではなくなったということ。”敵・味方”どちらにもそれぞれ人間模様があり、そうなった理由があり、それ相当の言い分がある(ように思われる)。善・悪では一概に括れなくなっているということなのだろう。
この「ヒトラー最期の12日間」はそれらとはまた違った作品だった。
ドイツ側からのナチス崩壊・無条件降伏に至るまでをほとんどリアルに描いたようなもの。ヒトラーの秘書”ユンゲ”の目を通して・・とはなっているものの、”自身の語り”があるわけでもなく、決して彼女の主観から曲った表現になっているとは思えない、まさに事実だけで綴られているという印象だった。(実際、真実は知りようがないのであくまでも印象)
やはりヒトラーは狂気の人であり卑怯ものだった。
《降伏はしない、それは誰にも許さない。けれど自分はさっさと自決する。その後さらし者になるのはイヤだ(後始末は任せた)》 なにそれ?単なる責任逃れ?とんでもない暴君だ。
だけど、実はいちばん恐ろしいのはそんなモノに ”忠誠を誓う人々の心”ではないのだろうか。何故ヒトラーのような独裁者にそれだけの忠誠を誓えるのか?
「(国民の為といいながら)国民を見捨てるのか?救うことはできないのか?」
との進言にヒトラーは言い放つんですよ。
「自分は何も強制していない。国民が自分で選んだんだ。それは自業自得だ、同情はしない」
それでも(間違っていると心の中では思っていても)「自分の忠誠心は変わらない」と言う将校・士官たち。そして”市民軍”と化して戦う民間人。大人も子供も最後まで”盾”になると言う。そしてヒトラー亡き後、「これまでか・・」とばたばた自決する彼ら。
果てしなく愚かで、果てしなく哀れだ。
”忠誠を誓う人々の心”・・・あの暴君にどうしたらそこまで信じ、尽せるのか、まったく理解ができない。でも・・・もしかしたらその”忠誠を誓う人々の心”があの暴君を生み出してしまったのかもしれないなんて思ったりもした。
いちばん怖いのは”人の心”
ひとりで何かを叫んでみても、米粒ひとつ吹き飛ばすことすら容易ではないけれど、それが二人、三人と増え、いつの日かとてつもない広がりを見せたとき、良くも悪くも既にどうにもならないモノに成りかねない可能性を秘めている恐ろしいモノが”人の心の集まり”なのではないか・・・そんなことをつらつらと思ったりした。
何かを起こすのも、起こさないのも、始めるのも、終わらせるのもすべて”人の心”が握っている、あながち単なる夢想・空想ではないと思うのだけど・・・。
はっきり言って「ヒトラー最期の12日間」は面白い作品ではないと思う。
けれど戦後60年間という時間は色々なものを風化させている。だから尚更のこと色々な角度から戦争は語り継いでいかないければならないと思っている。
そう考えると、とても良い作品なのだと思う。
最後にユンゲ自身の告白、「自分は何も知らなかったのだ、無関係だと思っていたのだ」と。そして「何もみていなかった」・・・・これに尽きる。
”人”は容易に見たくないものを、見えなくする力(ある意味、自己防衛本能)を持っているということなのだろう。
”戦争”とは・・・・そうしたもののすべての具現化なのかもしれない。
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コメント
TBありがとうございます!
本当、人の心って怖いですよね。
確かに一人であの帝国を作れるはずがないわけですから・・・。
思い込みってなかなか消えないですからね。
投稿: YOKO | 2005/08/27 03:00
■YOKOさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
思い切り重い記事にしちゃったので、コメントをいただけるとは思ってもいませんでしたw
>思い込みってなかなか消えないですからね。
まったくです。特に自分自身のことって見えているようで見えていないことたくさんありますね。
人の話を聞く耳、見失わない目を持ち続けたいものです。
投稿: たいむ (管理人) | 2005/08/27 09:09
TBとコメントをありがとうございます! リンクまでしていただいて…。感激! 当方でもたいむさんへのリンクを早速行いますデス。本当にありがとうございます。
この映画、やっぱり観ておいてよかったと思います。ユンゲの原作(翻訳本)は、先に読みましたが、ヒトラーが「ちょっと変わった人」程度の、わりとありふれた人間であったことが、これまでの彼の評価(異常者)を根底から覆すものであったこと、その彼をしてあの「狂気の沙汰」へとアプローチさせたのは、いったい何だったのか…、と問いかけています。ユンゲは、映画の最後でも独白していますが、「気づけたはずではないか…」と。
正義のため、国民のため…、そういった大義名分の元に行われるなら、「戦争も是」なのか? そうした価値観の元に、ヒトラーという個人に国を預けてしまった国民・情勢・その状態に至るまでの国際情勢に「非」はないのか…。人間は、かくもお互いを制圧しないと気が済まない、闘争したい本能があるのかもしれないなぁ。
投稿: あかん隊 | 2005/08/27 12:35
■あかん隊さん♪♪♪
了承いただけて嬉しいです。・・が
>当方でもたいむさんへのリンク
えええ???こちらこそとても嬉しいことなのですが、よろしいのですか?こんなトコをリンク貼ってしまって!!
思い直すなら(^^;)・・・いえいえ、ありがとうございます。
>これまでの彼の評価(異常者)を根底から覆すものであったこと
あまりヒトラーやナチスに詳しくないのですが、確かにいままでとは一味二味も違うものでした。というか、ものになってますね。これには賛否両論ありそうですけど。
>ヒトラーという個人に国を預けてしまった国民・情勢・その状態に至るまでの国際情勢に「非」はないのか…。
みんな心から自分自身のこととは思わずに、どっか遠い世界の出来事のように捉えている、そういうことなのかもしれない。ユンゲ自身が語っていたように。
投稿: たいむ (管理人) | 2005/08/27 19:35
たいむさん、こちらにもTB感謝。そうですね、人の心、あの悪魔的な虚無へズルズルと引きずりこまれていく人間の心持ちとは何だろうなと考えます。ナチズムはある倒錯を組織したんだと思いますが、それは簡単に言えば誰にでもある侮蔑の感情、他者排斥の感情でしょうね。今この国を覆っている感情とも似ていますね。そういうことをどれだけの人が感じたでしょうか。
投稿: 國貞陽一 | 2005/09/04 09:37
■國貞陽一さん、いらっしゃいませ♪
コメントありがとうございます。
>誰にでもある侮蔑の感情、他者排斥の感情
人間である以上、持っていて当然(割り切りたくないけれど)そういうものなのでしょうね。
ごらんの通り、ここはガンダム一色のような状態でして・・・そんな人間がもっともらしいことを言うのも変でしょうが、映画であり、ドラマであり、小説であり、アニメも含め、そういったものを風化させない媒体は今後も必要で、多くの人に感じてもらいたいことだと私は思います。
投稿: たいむ (管理人) | 2005/09/04 10:40